【ポイントまとめました】DPI政策論 障害女性分科会報告・感想「恋愛してはいけないの -大切にしたい自己決定-」
12月3日(日)DPI政策論「障害女性分科会」について、報告を村田惠子(DPI常任委員・全国頸髄損傷者連絡会)が、感想を香田晴子さん(日本自立生活センター)が書いてくれましたので、ご紹介します!
こんなことが報告されました(ポイントまとめ)
(敬称略)
1.たにぐちまゆ(DPI常任委員・大阪精神障害者連絡会)
- 精神障害ゆえに自分は恋愛に向いていないのではないか、不適合者ではないかと悩んだ
- 施設への入所で女性であるがゆえに人間扱いされなかった経験がある
- 施設や病院で心ない言葉を受けた
- 結婚や出産が許されないのは社会的な問題である
- 出産や育児が社会全体で支えられるようになれば、障害者の結婚や出産へのハードルは下がるのではないか
2.野瀬時貞(JCIL 日本自立生活センター)
- 長期間の入院中に精巣の全摘を提案された経験から、一人の男性として見てもらえない怒りを感じてきた
- 障害を理由に恋愛経験のない中で、電動車いすになったことから価値観が変わった
- 生活保護を受給して生活して結婚することでパートナーへの経済的な負担を与えるのではないかと思ってしまう
- 社会的な制度づくりの必要性、国や自治体に対して救済制度をつくってほしい
3.藤原久美子(DPI常任委員・NPO法人神戸Beすけっと事務局長・DPI女性障害者ネットワーク代表)
- 社会的な障害者に対する恋愛観や結婚観は今も変わっていない
- DPI女性障害者ネットワークと出会い、障害者であり女性であることによる複合差別があることを知った
- 優生保護法下、「不良な子孫の出生防止」という法律の中で生きていたことを知った
- 母体保護法に変わっても同じように強制不妊手術を受けさせられた人がいる
- 障害者に対する人権意識を変えていかないといけない
4.瀬山紀子(埼玉大学ダイバーシティ推進センター・准教授)
- 今の社会は男性上位の、男女二元論の、性別に基づく規範が強くある
- さらにそのベースに、健常者中心、異性愛中心の考え方がある
- 障害がある人とない人が分け隔てられている健常者中心社会では、障害のある人は自尊心を奪われやすい
- 多様な関係のなかで、健常者中心の、性別規範を強いられる関係を超えた、多様な人との関係のありようが広がっていけばよい
詳細は下記報告をご覧ください。
分科会開催の経緯
どうしても私たちは恋愛はしてはいけないというメッセージを周りから受けがちで、そこには私たち自身の自己決定はあるのでしょうか。
それぞれ恋愛に関しての経験や困難、子どもを産む産まないだけでなく、多様な人間関係が社会に言いにくい状況にあり、障害をもつことで様々なプレッシャーを受けてしまいます。
恋愛以前に生き方は一人ひとり自分らしく生きることが尊重されることが大切であり、日常生活での経験、施設での体験、健常者中心に語られている恋愛観や結婚観、家族観など経験を通して、多様な家族のあり方、人との関係性、社会環境について問いかけるために、分科会を企画しました。
分科会で報告・議論されたこと
■たにぐちまゆ「息をするように自然と恋愛ができる社会に」
小学生で摂食障害、中学生で統合失調症になり、大学生から現在までの恋愛経験から自分は恋愛に向いていないのではないか、不適合者ではないかと悩んだり、施設への入所での非人間的で女性であるがゆえに人間扱いされなかった経験や病院から受けた心ない言葉、家族による無理解、体験を通じて感じたこととして、結婚や出産が許されないのは社会的な問題で出産や育児が社会全体で支えられるようになれば、障害者の結婚や出産へのハードルは下がるのではないかと思っています。法律や制度を整えることが必要と感じています。
■野瀬時貞「障害があっても一人の人間そして男性として変わりなく見て欲しい!」
17年間の入院生活中に停留精巣という病気から精巣の全摘を提案された経験から一人の男性として見てもらえない怒りを感じました。
障害を理由に恋愛経験のない中で電動車いすになったことから価値観が変わり、結婚についてできないと思ったことはなく願望はありますが、制度的な壁を感じており、生活保護を受給して生活して結婚することでパートナーへの経済的な負担を与えるのではないかと考えると、社会的な制度づくりの必要性、国や自治体に対して救済制度をつくってほしいと思っています。
そして一人暮らしを始めて仲間と過ごす日々から、彼女をつくって、より運動に力を注ぎたいと思うようになりました。彼女ができることがエネルギーになって運動への力にしたいと思っています。
■藤原久美子さん「恋愛や結婚、出産への背景にある差別」
社会的な障害者に対する恋愛観や結婚観は今も変わっていません。
自分も障害をもつことで健常者の恋愛対象として扱われない経験をしました。家族や親戚から「彼氏は?結婚は?子どもは?」と言われていましたが、障害をもってからは一切言われなくなり、パートナーができて子どもができたとき、障害があることから生まれる子どもへの影響や育児が困難と「産むな」と反対されました。
その背景に優生保護法など法律によるもので差別という認識がなく、障害があるから仕方ないと思う自分がいました。
DPI女性障害者ネットワークと出会って、障害者であり、女性であることによる複合差別であることを知り、「不良な子孫の出生防止」という法律の中で生きていたことを知らされました。
母体保護法に変わっても同じように強制不妊手術を受けさせられた人がいます。北海道江差にある施設の入所では現在も不妊手術を強要される状況があることがあります。障害者に対する人権意識が変えていかないといけません。
■瀬山紀子さん「介助者として関わる中で感じていること」
今の社会は、男性はこうあるべき、女性はこうあるべきといった、男性上位の、男女二元論の、性別に基づく規範が強くあり、さらにそのベースに、健常者中心、異性愛中心の考え方があります。人と親密な関係になることは、エネルギーになります。
ただ、人との関係をつくる際は、人に自分を認めてもらおうとする前に、自分で自分を認めることが大切です。自分の機嫌を自分で取れることが、人との関係をつくっていくときに大切なことだと思います。
障害がある人とない人が分け隔てられている健常者中心社会で、障害のある人は自尊心を奪われやすいです。
自分は、介助者として多様な障害のある人の生き方に接してきました。多様な関係のなかで、子育てをしたり、一人で生きていたりする人たちの存在が知られていくことで、健常者中心の、性別規範を強いられる関係を超えた、多様な人との関係のありようが、広がっていけばよいと思います。
村田惠子(DPI常任委員(全国頸髄損傷者連絡会))
参加者感想
発言者の皆様の恋愛についての話しを聞いて、今も昔もあまり変わってないんやと感じました。
近年、障害のある人の結婚は減っているように思います。昔は介護制度がないから自分で介助者を見つけるために、いろんなところに出かけ、出会いも多かったと思います。
今は、介護制度は充実しつつ時代になり、生きていく上では大丈夫な時代になりました。
私がずっと引っ掛かっていることがあります。施設、病院からの地域移行、自立生活を盛んに言われていますが、自立生活が最終目的ではなく、そこから自分の人生の始まりであり、いろんな人と出会って、恋をして、パートナーを見つけることも出来るかも?そんな話を出来る場所があればいいと思います。
私の自立生活のきっかけは恋愛をしたかったからです。
野瀬さんのお話しの中で、「彼女が出来たら、運動をもっと頑張れる」と言っていたのを聞いていて、その通りだと思いました。
恋愛は、人が生きていく上で大事な過程の一つでもあります。健常者中心、異性愛中心の優生思想が社会全体にまだまだ根強くあり、障害者は生きていければいいというような制度そのものを変えていく必要があり、瀬山さんが話されていた環境整備も必要であり、「社会モデル」が重要ではないでしょうか。
香田晴子(日本自立生活センター)
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