12/2(日)DPI政策論「障害女性分科会」報告
優生保護法への取り組み~全国各地の裁判の報告と立法措置基本方針案、今後に向けて
12月2日(日)DPI障害者政策討論集会で開催しました「障害女性分科会報告」を、村田惠子さん(京都頸髄損傷者連絡会、DPI特別常任委員)に書いていただきましたので、ご紹介します!
(敬称略)
強制不妊手術を受けた被害者が国に求めた裁判で訴えた失われた命と人権について、1994年カイロ国際人口開発会議で発言され、優生保護法を母体保護法へ改正する動きをつくった安積遊歩さんを始め、各地の裁判に取り組んでいる方々からの報告を聞き、現在の課題と今後の取り組みをともに考える機会となりました。
優生保護法から母体保護法に変わった今なお、その法律が残した根強い思想的な感情の危うさを感じるともに、優生保護法が犯した過ちが、今後起こらない社会をどうすればつくっていけるのか、参加者で考えました。
優生保護法とは
報告者:米津 知子(DPI女性障害者ネットワーク)
米津さんから優生保護法が障害をもつ女性(男性)にとって、どれほど人権を無視された法律であったか。
その根底にあった個人が子供をもつかもたないかを規制する人口政策、優生政策であったこと。
そして現在、被害者の人権の回復に向けた国家賠償訴訟の動向、補償、調査などへの課題について語らました。
今の思い
報告者:安積 遊歩(DPI女性障害者ネットワーク立ち上げメンバー・ピアカウンセラー)
安積さんから10代で優生保護法に傷つき、嫌悪感をもったことからカイロで開催された国際人口開発会議で優生保護法が私達にとって不都合な法律であること。
「一人ひとりの命は地球の重さより重い」と訴えた経緯、優生思想が常識の社会の中で生きていると、私達が責められている感じに追いつめられてしまうこと。
全ての人が一人ひとり大事な命だと思えない社会の状況が、いまだに優生保護法が機能している現実、それが出生前診断に繋がっていること。
そんな中で産む産まないは自己決定である、自分で考えることという思いが広がっているのは素晴らしく大事なことであり、同じ思いをもつ仲間が増えてきたのは大変嬉しいことだと話されました。
またニュージーランドで娘さんが、同じ志で活動されていることも報告されました。
各地の優生手術裁判状況
◆北海道 山崎 恵(DPI日本会議常任委員)
◆宮城 横川 ひかり(優生手術被害者とともに歩むみやぎの会)
◆兵庫 藤原 久美子(DPI日本会議常任委員・DPI女性障害者ネットワーク代表)
◆熊本 平野 みどり(DPI日本会議議長・DPI日本会議女性部会長)
◆東京+立法措置基本方針骨子について 大橋 由香子(優生手術に対する謝罪を求める会)
全国各地の裁判状況について、北海道(山崎さん)宮城(横川さん)兵庫(藤原さん)熊本(平野さん)東京(大橋さん)から報告を受けました。
北海道では2名の方が提訴しており、全国初の実名での提訴をされた小島喜久夫さんは第1回口頭弁論を9月28日に終えています。
もう1人はご夫婦で奥様が被害者としてこれから裁判が始まります。
各地で複数の被害者を一緒に審理する方法が取られていますが、北海道では担当部の違いにより別々の裁判となっています。
裁判の傍聴では全国に先駆けて障害者への合理的配慮を要望し、車いす席の拡大、聴覚障害者への手話通訳への配慮を認めさせました。これは全国各地の以後の裁判の傍聴へ合理的配慮を認めさせることとなりました。
宮城では、5名の方、佐藤由美さん(仮名)、飯塚淳子さん(仮名)、他は名前を明かさず提訴となっています。
全国で初めて提訴したことから、口頭弁論を重ねて審理も進んでおり、来年1月28日、2月8日、3月20日と審理日程も決まっています。
宮城の裁判では、仙台地裁の裁判長が憲法の違憲性についても判断するといっていることは注目すべき点です。
裁判の傍聴では北海道と同様に合理的配慮を認めさせていますが、手話通訳者の費用は自己負担であり傍聴の合理的配慮への課題は、まだ多いです。
兵庫では、全国初となる聴覚障害を持つ2組のご夫婦、小林宝二さん、喜美子さんご夫婦ともう1組のご夫婦が提訴されており12月26日に口頭弁論が開かれます。兵庫では「不良な子孫を産まない」運動を提唱した自治体であり、今後の審理への影響が懸念されているのではないかと思います。
大阪でも先日12月12日に聴覚障害をもつ空ひばりさん(仮名)の初口頭弁論が開かれます。来年2月6日、4月17日と審理日程が決まっており、被害者の高齢化への配慮として迅速な裁判の動きが見られる一方、慎重な審理が行われることへ注視していきたいです。
熊本では渡辺数美さんが提訴され9月28日に初口頭弁論が開かれたました。第1回口頭弁論では「国によって人生を台無しにされた」と訴えられました。
東京では、北三郎さん(仮名)が提訴され、口頭弁論が始まっており12月20日にも第3回口頭弁論が開かれます。北さんが父を恨み、施設を恨み、優生保護法という法律によって行われたことを知って国への怒りが生まれたと同時に、その法律によって抱えきれない苦しみを家族を含めて多くの人が背負ったことを思うと、この法律が犯した過ちの重さは計り知れません。
また救済法の施行が急がれる中で、現在与党ワーキングチームと超党派議員連盟にて検討されている立法措置基本方針骨子について報告があり、謝罪の主体が「国」ではなく「われわれ」というあいまいな表現になったことへの危惧、訴えづらい立場にある被害者からの申告での救済という配慮のない対応が検討されていることへ、更なる私達の結束ある行動であらためる動きをつくりたいとの呼びかけがありました。
グループワーク
登壇者の報告の後のグループワークでは、
女性障害者から過去に一度中絶したことへの自責の念が、その後出産して育児をしてもなお、自分を苦しめていること。
子どもが結婚して妊娠した際、義理の母親から言われた心ない言葉への憤り。
優生保護法がなくなってもなお優性思想に苦しめられる現社会への疑念を訴えた発言は登壇者を含めた参加者の胸に強く刻まれました。
また広島で「忘れてほしゅうない」と訴え続けて亡くなった佐々木千津子さんの思いと、思いを引き継いだ仲間の活動が報告されました。
報告:京都頸髄損傷者連絡会、DPI特別常任委員 村田惠子
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