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【ポイントまとめました】「総括所見を活用し、障害者権利条約の国内実施を進めよう!」(DPI政策論「全体会」報告(前半))

2022年12月26日 イベント障害者権利条約の完全実施

12月3日(土)全体会の第1部「日本の総括所見、国内実施で良い事例、脱施設ガイドライン等について」、キム・ミヨン(国連障害者権利委員会副委員長)さんからの報告について書きました。長くなるので、第2部は明日掲載します。


こんなことが報告されました(ポイントまとめ)

第1部「日本の総括所見、国内実施で良い事例、脱施設ガイドライン等について」
キム・ミヨン(国連障害者権利委員会副委員長)

(敬称略)

詳細は下記「報告全文」をご覧ください。


報告全文

◎全体会開催の経緯

2022年8月22~23日にスイスのジュネーブで、障害者権利条約批准後初となる日本の建設的対話(審査)が開かれ、日本から約100名もの障害当事者、関係者が現地に赴き、傍聴及びロビー活動を行いました。

こうした日本の障害当事者や関係者の積極的な取り組みにより、9月9日に権利委員会から日本政府へ提出された総括所見(勧告)には、分離教育の中止や精神科病院への強制入院を可能にしている法律の廃止を求めるなど、日本の課題を的確に指摘した内容となっています。

本全体会は、現地でどのようなロビー活動等をしてきたのか、出された総括所見のポイントについて広く共有するとともに、総括所見を活用した今後の運動展開についても議論を深め、権利条約の完全実施に向けた取り組みにつなげていくことを目的として開催しました。

◎全体会で報告・議論したこと

■全体会「総括所見を活用し、障害者権利条約の国内実施を進めよう!」
第1部「日本の総括所見、国内実施で良い事例、脱施設ガイドライン等について」
報告:キム・ミヨン(国連障害者権利委員会副委員長)

キム・ミヨンさん

まず第1部では実際にジュネーブで日本の建設的対話の国別担当者の一人としてご尽力いただいたキム・ミヨン氏に総括所見を作るにあたって、特に力を入れた条文について、総括所見を実施させるための戦略、脱施設化ガイドラインの内容等について、以下の通りお話しいただきました。

・第1条-4条〔目的、定義、一般原則、一般的義務〕

委員会が各国政府に対して強調する最初の部分はこの1~4条の部分です。特に第4条、締約国の義務については、行政機関に対する義務を課しているところで、事実上一番強い条項と言えます。

・第5条 平等及び非差別〔無差別〕

第5条について、障害者差別解消法を見ると障害者権利条約と照らし合わせて、まだまだ不足している点があります。障害者差別解消法の強化・見直しにつながるために総括所見に強く勧告を書きました。特に司法、行政機関、全ての手続きについて例えば、法的能力の手続きについても必ず必要となります。法的手続きは、すべての障害者がアクセス可能な制度でなくてはならないということです。

・第6条 障害のある女性

第6条は障害女性の条項です。総括所見では、各関連条項と6条をリンクさせました。障害者権利条約とSDGsのターゲットを連結して、義務化を進めるという総括所見、勧告を作りました。SDGsの目標と連動することで、国家の全ての機関が障害者権利条約を一緒に実施しないとならないという枠を作りました。

1条から9条までが日本でいうと法律の総則部分にあたりますので、10条以降の各権利全てに影響していく。そうしたツイントラックの構造になっています。

・第10条 生命に対する権利

10条はパラレルレポートでも一番強調されたものの1つになっていますが、障害をもちながら生きていく権利というのは生命工学や尊厳死といった問題が絡み合っています。障害を持つ人が生きていく上で、根深い差別や偏見がある部分になると思います。これは国が実施して解決できるものではありません。社会を構成する全てのメンバーが、障害者に対する認識を変えないといけません。

一番大切な生命に対する権利について、尊厳を持ちながら生きていくということについて、総括所見を実施するよう政府に対して働きかけ、政府がその基盤を作る努力をしていただきたいと思います。

・第11条 危険のある状況及び人道上の緊急事態

次は11条。パラレルレポートには実際に災害を経験された障害者の体験をもとに、国がすべき全てのことが書いてあったので、それを総括所見に盛り込みました。総括所見の意義は国が実施していく義務を負ったという点にありますので、総括所見の勧告をもとに、政府と具体的な協議に入ってください。

具体的に災害がおきたときに、法律の改正をしながら、何を政府がしなければならないかが理解できるようにまとめています。そこには障害を持っている人、年齢やジェンダーへの考慮もされないとなりません。そして、最終的には社会に対するメインストリーム化が必要です。

実際、コロナ禍になり、障害者がどれだけ悲惨な形で亡くなったのか、障害者だけが置いてけぼりをくったかを実際に見てきました。11条については、全ての障害者が生きていく、具体的な義務が課せられますが、その中には災害だけでなく、ウクライナとか、内戦も関係していきます。

障害の問題だけでなく、必ず社会全体の仕組みの中に、障害の問題をきちんとメインストリーム化することが大切で、戦争においても、障害者だけが置いてきぼりをくわないようにしないといけません。

実際に災害などのご経験から、様々な取り組みをしてきた日本の障害者の皆さんには、災害や気候変動、災害や危険な状況がありますが、それについて、世界に向かって自分たちの取り組んで来た方向性について積極的に発信をしていただきたい。

第27会期障害者権利委員会の最後の日に、第11条に関する一般意見の作成のワーキンググループをつくりました。第11条に関する一般的意見の草案を作る際も日本のNGOからいただいた、パラレルレポートの内容が非常に参考になると思います。一般的意見を作るには2年ぐらいかかりますが、この2年間、作成の上で皆さんの積極的な参画を期待しています。

・第33条 国内的な実施及び監視〔モニタリング〕

皆さんからいただいたパラレルレポートにはたくさん重要な点がありますが、その中でも特に33条の部分に関して総括所見に反映するために委員は多くの努力をしました。

国内の人権救済、政策の実施について、国内人権機関、例えば韓国にあるような国内人権機関のようなものが、とても重要です。障害者権利条約以外にも、国連人権条約は10個ほどあります。人権条約の国内実施の上で、とても強力な監視機関となるのが、この国内人権機関です。国内人権機関があったとしても、そこに障害当事者があって干渉する仕組みが、障害者の権利を守る上で一番大切なことです。

33条の総括所見には国内人権機関以外にも、内閣府の障害者政策委員会についても、一緒に勧告に載せたわけです。ジェンダーバランスや障害の種別でも、多様な障害者を確保することも勧告に盛り込みました。

個人的には国内人権機関を設置することと障害者政策委員会の強化は、とても難しいことだと思っています。全体の人権をきちっと監視する機関を作ることと、障害当事者を中心にして監視機関を作るのは、どこの国でも好んですることではないからです。

国内人権委員会の設置と、障害当事者が参画している障害者政策委員会の強化は難しいですが、必ず実現するために皆さんは努力をしていただきたいと心から願っています。

・総括所見を実施させるための戦略

次に簡単に、総括所見を実施させるための戦略を皆さんにお示しします。まず、法律を作ったり、法律を改正してください。そして、国のレベル、地方自治体、市町村、全てのレベルに応じて障害者当事者がきちんと参加することを期待します。

一つは障害者の問題をメインストリーム化することはお伝えしていますが、それ以外に障害者だけが受ける権利侵害、そのための様々な取り組みが必要になります。ですので、メインストリーム化と同時に障害者当事者がきちんと参加して自分たちが受ける問題をきちんと解決していくという、この2つを同時に行うツイントラックのアプローチを必ず覚えていただきたいと思います。

今、私たちが作った総括所見が出ましたが、これで終わりではなく、これからが始まりです。勧告がどのように守られるかをモニタリングすることとモニタリングのためのシステムが必要です。各国は障害者権利条約と関係なしに、障害者に関するいろんな政策の計画などを立てています。日本も長い歴史を持つ国なので、今までのいろんな政策の方向性や計画があると思いますが、それらを障害者権利条約の総括所見の方向へと転換する時期にきていると思います。

国の計画は計画、総括所見は総括所見の実施と、分けてしまうことは絶対に避けて頂きたい。国家の計画にきちんと総括所見の方向へ向けて、計画をあらためて作り直すといったことが大切になってきます。

総括所見の話をしてきましたが、この元になるのは、障害者権利条約の各条文です。障害者権利条約の条文が基礎となるので、総括所見には無い部分についても、条約の条文をきちんと、これを実施してくことを政府に促すことをお願いしたいと思います。

総括所見が出たからといって、これをすればいいというのではなく、最終的には条約の条文を実施していくことで、同時に2つの義務を負った形になります。もし総括所見に皆さんが求めたこと、なかったことでも、条約の本文に立ち返って、政府に要求をしていってください。

・脱施設ガイドラインについて

脱施設ガイドラインについて、少しお話したいと思います。このガイドライン作りには、日本の皆さんも積極的に参画してくださいました。これは7大陸地域、500人以上の障害当事者、団体が参加して作られたものです。条項は143になります。入所施設はどういうものか、どうしたら脱施設できるかの過程についても書かれています。障害種別ごとにどういったものが地域社会に必要であるかとか、国家・政府に対してどのような支援が必要か、予算配分をどうすべきかなども書いてあります。

施設を出て行くことに、地域でどのように支援するかをたくさん書いている。施設を無くすことと、新規の入所を禁止することも盛り込まれています。脱施設化ガイドラインは福祉政策のものではありません。

私たち委員会は、施設収容は、障害者への暴力であり、施設に監禁されている障害者、と考えています。拘禁されていた施設から地域へでた障害者へは国がきちんと謝罪し補償する内容も盛り込まれています。なぜ施設に入ったのかとか、施設内で何が起きたかといった真相究明委員会などを設置する内容も含まれています。

施設収容というのは、保護という名目の元で障害者を施設というある場所に拘禁するものなので、これを再び起こさないように、こうした構造的な犯罪、構造的権利侵害を起こさないような、ひとつの行程を示したものが、脱施設化ガイドラインだと言えます。

個人的には障害者権利条約の全ての権利はこの19条の実現、地域で障害の無い人と平等に暮らすという地域生活の実現が目的だと考えています。19条の実現というのは、まさに障害者の権利の実現のための革命といえるものだと思います。これを日本語に訳して、熟読してください。

皆さんが望む内容はすべて入っていると思いますので、このガイドラインを脱施設の政策の実現に是非役立てていただきたいと思います。

(「全体会」報告は後半へ続きます)

白井誠一朗(DPI事務局次長)


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