中央各省庁における障害者雇用の応募資格に対する抗議と要望
2018年10月22日 要望・声明雇用労働、所得保障欠格条項をなくす
中央省庁による障害者雇用数の水増し問題で、政府は4,000人の障害者を雇用して法定雇用率を達成するという方針を打ち出しました。しかし、財務省の障害者採用の告知ページには、応募資格として「③自力により通勤ができ、かつ、介護者なしで業務の遂行が可能であること」という条件を設けています。
これに対して、DPI日本会議としての意見をまとめ、財務省に提出しましたので、以下に掲示します。
2018年10月22日
財務大臣 麻生太郎 殿
特定非営利活動法人DPI(障害者インターナショナル)日本会議
議長 平野みどり
中央各省庁における障害者雇用の応募資格に対する抗議と要望
私たちDPI(障害者インターナショナル)日本会議は全国97の障害当事者団体から構成され、雇用・労働分野も含めて、社会のあらゆる場面で障害の種別や程度に関わりなく障害のある人もない人も共に生きることができるインクルーシブな社会(共生社会)の実現に向けて活動している。
さて、財務省が10月15日付で告知した「事務補助員の募集(障害者雇用・財務総合政策研究所)」において、応募資格に「自力により通勤ができ、かつ、介護者なしで業務の遂行が可能であること」と定めている。同様の制限規定が、各省庁の募集要項にも見られる。これは特定の障害者を排除する欠格条項であり、障害者差別である。強く抗議するとともに、速やかに削除を求める。
我が国が批准している障害者権利条約では、27条であらゆる形態の雇用に関わる障害に基づく差別を禁止している。また、障害者差別解消法では第4条で国及び地方公共団体の責務として「障害を理由とする差別の解消の推進に関して必要な施策を策定し、及びこれを実施しなければならない」としている。さらに、障害者雇用促進法では、雇用の分野における障害を理由とする差別的取扱いを禁止しており、第3条で「障害者であることを理由として、障害者を募集又は採用の対象から排除すること」を障害者であることを理由とする差別に該当すると明記している。国家公務員に関しては、差別禁止に関して国家公務員法で対応するとされているところであり、いずれにせよ、障害者雇用促進法の趣旨は守られなければならない。
このたびの財務省の応募資格の「③自力により通勤でき、かつ、介護者なしで業務の遂行が可能であること」は、ヘルパー等を利用すれば通勤ができ、職場介助者の活用等で業務が遂行できる障害者を一律に排除する欠格条項であり、明らかに障害者差別である。こうした事態に陥らないためにも、私たちは検証委員会への障害当事者の参画を求めたが受け入れられなかった。当事者を締め出した検証・検討の問題を如実に表していると言わなければならない。
おりしも、8月に中央省庁や地方自治体による障害者雇用水増し問題が発覚し、障害者の雇用の再点検と、職場環境の整備が求められている。募集要件を見直し、欠格条項を削除し、合理的配慮を提供した職場環境の整備を推進することが、障害者の雇用の機会を広げるために不可欠である。
DPI日本会議は、障害者の雇用と障害者が安心して働き続けることができる職場環境と労働条件の整備を促進するために、以下の対応を財務省に強く求める。
要望事項
1. 各省庁の障害者職員の応募資格から、「③自力により通勤ができ、かつ、介護者なしで業務の遂行が可能であること」をすみやかに削除すること。併せて、採用後に移動サービスや介助等を必要とする障害者が不利益を被らないための措置を講じること。
2. 障害者の募集、採用試験、採用後、退職及び退職後に関して、厚生労働省が定めた障害者差別禁止指針と合理的配慮指針をふまえて、再点検を行い、必要に応じて見直すこと。
3. 障害者が働くために必要な介助や情報保障等に関する職場環境を、採用した障害者の意向を尊重し、建設的対話に基づいて整備すること。
4. 現在確認できる募集(別表)では、期間業務職員、非常勤職員などの雇用形態に限られていることから、正規職員も含めた今後の雇用計画と応募資格を明らかにすること。