「1型糖尿病障害年金訴訟」東京地裁判決の確定を受けたDPI日本会議声明
2022年08月22日 地域生活要望・声明雇用労働、所得保障
2022年7月26日(火)、東京地方裁判所(岡田幸人裁判長)が言い渡した障害基礎年金の不支給決定を取り消す原告勝訴判決が、国の控訴断念により確定しました。この東京地裁判決の確定を受けて、判決内容の評価と今後の課題についてDPI日本会議としての以下の声明をまとめました。
DPIは障害年金制度における制度の谷間の解消に向けて、当事者の生活実態を十分反映できるような社会モデル/人権モデルに即した認定基準への見直しを図るべきだと考え、引き続き取り組みを進めてまいります。
また、この判決確定を受けて原告からコメントをいただきましたので、ご紹介いたします。
■原告のコメント
裁判官は、私の生活の支障、障害に真正面から向き合ってくれました。
みなさまが関心をよせてくださり、応援してくださったおかげです。本当にありがとうございました。
しかし、大阪では今も控訴審での争いが続いているように、私も安心はできません。1型糖尿病をもつ人の社会保障の確立に向けて一歩ずつ進んでまいります。今後ともよろしくお願いいたします。
1型糖尿病障害年金訴訟東京地裁判決の確定を受けたDPI日本会議声明
特定非営利活動法人DPI(障害者インターナショナル)日本会議
議長 平野みどり
DPI(障害者インターナショナル)日本会議は全国92の障害当事者団体から構成され、障害の種別を越えて障害のある人もない人も共に生きるインクルーシブな社会(共生社会)の実現に向けて運動を行っている。
私たちは障害当事者の立場から、機能障害の種類や軽重にかかわらず、社会的障壁との相互作用によって生じる生活のしづらさに対する必要な支援を制度の谷間なく受けられる法制度の整備を訴えてきた。
2022年7月26日、東京地方裁判所(岡田幸人裁判長)が言い渡した障害基礎年金の不支給決定を取り消す原告勝訴判決が、国の控訴断念により確定した。
原告が主張していた認定基準の不合理性については認定されず、内容としては不十分であったものの、原告の状態が障害年金2級相当であることが認められ、原告に障害基礎年金が支給されることになったという点において、判決を支持したい。
判決では、認定基準の不合理性について、具体的な指標を設けるまでの研究結果の蓄積が無いこと等を理由に現行の認定基準が不合理とはいえないとして、原告の訴えは退けた。
また、社会的障壁への支援を考慮していないことについても、疾病や負傷という概念が第一義的には医療的観点から判断すべきもの、社会的障壁は具体的な基準や指標を定めて評価・判断することになじまないものであるとして合理性を欠くとはいえないなどとしている。
一方で、判決では具体的な指標を用いて1級、2級など上位等級該当性の判断ができるのであれば望ましいと指摘している。
加えて、2級該当性の判断に当たっては原告が1型糖尿病であることによって就労や日常生活の中で具体的にどのような支障が生じているのか、という点を詳細に検証し、事実認定をしており、実質的には社会的障壁による影響を踏まえた判決であったといえる。
日本も批准している障害者権利条約では障害認定について、明確に医学モデルから社会モデル/人権モデルへの転換を求めている。本条約の初回審査を直前に控えた今、国はあらためて障害年金を含めた障害認定の在り方について、医学モデルから社会モデル/人権モデルへ転換すべきである。
原告のように裁判提訴による多大な負担を負わなければ、本来支給されるべき障害年金が支給されないような事態を起こさないためにも、国は早急に当事者の生活実態を十分反映できるような社会モデルに即した認定基準への見直しを図るべきである。また、その検討に当たっては障害当事者が参画した検討の場を設けるべきである。
私たちDPIは引き続き必要な人に障害年金が支給されるよう、社会モデルに即した障害年金制度への見直しを訴え、障害年金制度における制度の谷間の解消に向けて取り組んでいく。
以上