伊藤特別常任委員が記者会見に登壇、国連ビジネスと人権作業部会による訪日調査最終報告書に関する DPI日本会議声明を出しました
(写真:左から、伊藤芳浩DPI特別常任委員、甄凱 岐阜一般労働組合 第二外国人支部支部長、伊藤和子 HRN副理事長・弁護士、小川隆太郎 HRN事務局長・弁護士)
国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ(以降、HRN)は、2024年5月28日(火)、国連ビジネスと人権作業部会が、2023年7月24日~8月4日に実施した訪日調査の結果を踏まえた最終報告書を国連人権理事会のWebサイトで公表したことを受け、2024年5月30日(木)に記者会見を行い、伊藤芳浩DPI特別常任委員(NPO法人インフォメーションギャップバスター理事長)も登壇しました。
最終報告書は、本年6月18日からスイス・ジュネーヴで開催される第56回通常会期中に国連人権理事会に対して報告される予定です。
本記者会見で登壇したステークホルダーは以下の通りです。
- 伊藤和子|認定NPO法人 ヒューマンライツ・ナウ 副理事長・弁護士
- 小川隆太郎|認定NPO法人 ヒューマンライツ・ナウ 事務局長・弁護士
- 村木真紀|認定NPO法人 虹色ダイバーシティ 代表・理事長
- 伊藤芳浩|認定NPO法人 DPI日本会議 特別常任委員(NPO法人インフォメーションギャップバスター理事長)
- 岩附由香|認定NPO法人ACE(エース)代表
- 福井智子|一般社団法人 日本アニメフィルム文化連盟(NAFCA)理事・アニメーター
- 福宮あやの|一般社団法人 日本アニメフィルム文化連盟(NAFCA)事務局長・声優
- 甄凱(けんかい)|岐阜一般労働組合 第二外国人支部支部長
写真:会見の様子、多数のプレス
伊藤特別常任委員は、障害者当事者の立場から、最終報告書と政府のコメントに対する所見を述べました。
内容は下記の通りです。
2023年7月26日に国連ビジネスと人権作業部会から受けたヒアリングにおいて、DPI日本会議では、主に以下の5点を問題点として指摘しました。
- 雇用を促進する障害者の範囲の改善
- 障害者の働く権利と機会保障に必要な合理的配慮である支援制度の改善
- 障害者雇用の基本理念と共生社会の実現に反する障害者雇用形態の禁止
- 除外率制度の速やかな完全廃止
- 障害女性の複合差別と不利益対応の改善
国連ビジネスと人権作業部会は、このうち、4を除いた4点を最終報告書に掲載していただいたことに対し、敬意を表します。
しかし、最終報告書に対する日本政府のコメントは以下の通りであり、的を射ていません。
- 差別を禁止することにより、障害者雇用率の適用を受けない障害者の雇用を促進する
- 合理的配慮を必要とし、公共職業安定所で専門的なサポートを提供する
これらのコメントは、具体的な行動計画や具体策を欠いており、現実的な問題解決には不十分です。例えば、差別の禁止だけでは障害者雇用の促進には不十分であり、具体的な雇用支援やインセンティブが必要です。また、公共職業安定所のサポートだけでは、実際の職場での合理的配慮が適切に行われるかどうかは保証されません。
DPI日本会議としては、現状を改善するために、日本政府に対して以下を求める声明を本日出しました。これにより、障害者が社会で公平に働ける環境が整うことを期待します。
2024年5月31日
国連ビジネスと人権作業部会による訪日調査最終報告書に関する
DPI日本会議声明
特定非営利活動法人DPI(障害者インターナショナル)日本会議
議長 平野みどり
DPI(障害者インターナショナル)日本会議は全国93の障害当事者団体から構成され、障害の種別を越えて障害のある人もない人も共に生きるインクルーシブな社会(共生社会)の実現に向けて運動を行っている。
国連では「ビジネスと人権に関する指導原則」(*1)を定めており、日本でもそれに沿って「ビジネスと人権に関する行動計画(NAP)」(*2)を定めている。
2023年7月24日から8月4日まで、「国連ビジネスと人権の作業部会」のメンバーが来日し、「ビジネスと人権に関する指導原則」の下で、日本政府と企業がそれぞれの人権に関する義務と責任を履行するための取り組みを検証することを目的とし、政治、地方自治体、民間団体(DPI日本会議を含む)関係者にヒアリングを実施した。
2024年5月28日に国連ビジネスと人権作業部会が、2023年7月24日~8月4日に実施した訪日調査の結果を踏まえた最終報告書を国連人権理事会のWebサイト(*3)で公表した。
最終報告書の中で、記載されている障害者分野のポイントは下記の4点になる。
- 職場差別、低賃金、偽装雇用、代理雇用などの問題が懸念
- 障害者雇用促進法は民間企業2.5%、国の事業体2.8%の雇用枠を定めているが、基準の拡大が必要
- 介助制度は通勤や勤務時間中の障害者を十分に支援しておらず、制度の複雑さが問題
- 2022年に4,138人の障害者が虐待を受け、旅行や不動産での差別も問題となり、特に女性は深刻な差別に直面している
DPI日本会議は、2023年7月26日に国連ビジネスと人権作業部会から受けたヒアリングにおいて、提言した内容が最終報告書にほとんど含まれていることに敬意を表し、指摘ポイントを改善するために、日本政府に対して、障害者分野を含めたNAP上のKPIの設定、独立機関としての国内人権機関の設置を求める。
国内人権機関は、企業による侵害事例や救済のためのモニタリングの実施、および、人権教育の実施を担うことを求める。
(*1) https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100116940.pdf
(*2) https://www.mofa.go.jp/files/100104121.pdf
(*3) https://undocs.org/en/A/HRC/56/55/Add.1
2024年5月国連ビジネスと人権作業部会による訪日調査最終報告書を受けてのDPI声明文
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