旧優生保護法訴訟の大阪控訴審判決に関するDPI日本会議声明
2月22日、旧優生保護法の控訴審判決で、大阪高裁は一審の判決を変更し、国に損害賠償を命じる初めての判決を言い渡しました。除斥期間を適用しない画期的な判決です。DPIはこの判決を受けて、声明を出しました。
国は、上告をせずに速やかに本判決を確定させ、控訴人らすべての優生保護法被害者に謝罪と賠償をすることを強く求めます。
2022年2月24日
旧優生保護法訴訟の大阪控訴審判決に関する
DPI日本会議声明
特定非営利活動法人DPI(障害者インターナショナル)日本会議
議長 平野みどり
DPI(障害者インターナショナル)日本会議は全国93の障害当事者団体から構成され、障害の種別を越えて障害のある人もない人も共に生きるインクルーシブな社会(共生社会)の実現に向けて運動を行っている。私たちは障害当事者の立場から、「優生手術は障害者の生殖の権利に対する人権侵害であり、国は被害者への謝罪と賠償等を早急に実施すべきである」と20年以上前から訴えてきた。
2022年2月22日、大阪高等裁判所第5民事部(太田晃詳裁判長)は大阪地裁判決を変更し、国に対し優生保護法被害者である控訴人らに対する損害賠償を命じる判決を言い渡した。2018年1月に宮城県の知的障害女性が、国家賠償請求したことを皮切りに起こった一連の裁判で、本判決が初の勝訴判決となった。判決では、差別や偏見を助長した国の責任を明確に指摘し、除斥期間を適用しなかったことを強く支持したい。
太田晃詳裁判長は「旧優生保護法は子を産み育てるかどうか意思決定する自由などを侵害し明らかに憲法に反する。特定の障害などのある人を一方的に『不良』と扱い生殖機能を喪失させる優生手術を推進しようという非人道的で差別的な法律で人権侵害の程度は強い」と指摘した。優生保護法が憲法違反であると明確に判断している。
また、これまで各地で争われていた一審の判決では、旧優生保護法を憲法違反とする判決は4件あったが、いずれも除斥期間を適用し原告の訴えを退けてきた。しかし、大阪高裁は「除斥期間」の起算点について一審判決と同じく旧優生保護法が改正された1996年としているが、「人権侵害が強度であり、憲法を踏まえた施策を推進していくべき国が障害者に対する差別や偏見を助長し、原告は訴訟の前提となる情報や相談機会へのアクセスが著しく困難な環境だった。除斥期間の適用をそのまま認めることは著しく正義・公平の理念に反する」として除斥期間を適用しなかった。
不妊手術をされたことを知らされず、2018年の仙台裁判の報道に接して初めて自分も被害者だと気づいた人も多い。今回の大阪判決では訴えを起こすことが出来ない状況が長年続いていたことを認め除斥期間を適用しなかった大阪高裁の判断を支持したい。
一連の旧優生保護法訴訟では、原告はいずれも高齢となっており、全国25名の原告のうちすでに4名の方が亡くなられている。今回の控訴人の80代の夫は「高齢なので、国が上告すれば判決まで待てるか不安なので、上告しないでほしい」と求めている。
国に対しては、上告をせずに速やかに本判決を確定させること、控訴人らすべての優生保護法被害者に謝罪と賠償をすることを強く求めたい。そして、未だ声を上げることのできない被害者への更なる調査、二度と同じ過ちを繰り返さないための検証と一時金支給法の抜本改正を行い、優生思想のない社会にするための施策を講ずることに取り組むべきである。
私たちDPIは全国の仲間に、国へ上告しないように各地から声を上げることを呼びかけたい。同時に、全国で争われている裁判へも引き続き傍聴を始めとする支援を行い、2016年に起きた津久井やまゆり園・障害者殺傷事件に至る、社会に広く存在する優生思想の克服に向けて、今後も粘り強く取り組む決意である。