「旧優生保護法訴訟東京控訴審判決」に関するDPI日本会議声明
2月22日(火)の大阪高裁判決に続いて、3月11日(金)の旧優生保護法東京高裁判決でも、一審の判決を変更し、国に損害賠償を命じる判決を言い渡しました。
特に、一時金支給法の施行日である2019年4月24日から5年間が経過するまでは除斥期間は適用しないとしたことは画期的です。
国は、上告をせずに速やかに本判決を確定させ、3月7日(月)に行った大阪高裁判決の上告を取り下げること、原告らすべての優生保護法被害者に謝罪すること、国会においては、すべての被害者への謝罪と補償を行なう早期全面解決を行なうこと、その一環として一時金支給法の抜本改正を求めます。
2022年3月14日
旧優生保護法訴訟東京控訴審判決に関する
DPI日本会議声明
特定非営利活動法人DPI(障害者インターナショナル)日本会議
議長 平野みどり
DPI(障害者インターナショナル)日本会議は全国94の障害当事者団体から構成され、障害の種別を越えて障害のある人もない人も共に生きるインクルーシブな社会(共生社会)の実現に向けて運動を行っている。私たちは障害当事者の立場から、「優生手術は障害者の『性と生殖の健康と権利』に対する人権侵害であり、国は被害者への謝罪と賠償等を早急に実施すべきである」と20年以上前から訴えてきた。
2022年3月11日、東京高等裁判所(平田豊裁判長)は、請求を棄却した一審判決を変更し、旧優生保護法を違憲とし、国に損害賠償を命じた。2018年1月に宮城県の知的障害女性が、国家賠償請求したことを皮切りに起こった一連の裁判で、2月22日の大阪高裁判決に続き本裁判が2件目の勝訴判決となったもので、判決を全面的に支持する。
判決では、優生思想に基づき特定の障害や疾患等を有する者に強制不妊手術を認める優生保護法上のいわゆる優生条項は、その立法目的が差別的思想にもとづくものであって正当性を欠く上、目的達成の手段も極めて非人道的なものであり、憲法13条及び14条1項に違反することは明らかであるとして違憲性を認めた。
また、国が積極的に優生施策を推進し、偏見差別を社会に浸透させ、強制や欺罔の手段等を用いて、被害者が優生手術の被害に気付くことができない構造的な仕組みを構築したこと等の特段の事情があることを理由に、著しく正義・公平の理念に反するとして除斥期間を適用しなかった。
特に、優生手術の損害賠償請求は、一時金支給法の施行日である2019年4月24日から5年間が経過するまでは除斥期間は適用しない、と判断したことは画期的である。これに基づけば、現在各地で争われている一連の旧優生保護法の被害者は、すべて救済されることになる。
一連の旧優生保護法訴訟では、原告はいずれも高齢となっており、全国25名の原告のうちすでに4名の方が亡くなられており、一刻の猶予もない。
国に対しては東京高裁の判断を真摯に受け止め、上告をせずに速やかに本判決を確定させること、3月7日に行った大阪高裁判決の上告を取り下げること、原告らすべての優生保護法被害者に謝罪することを強く求める。さらに、国会においては、すべての被害者への謝罪と補償を行なう早期全面解決を行なうこと、その一環として一時金支給法の抜本改正を求める。そして、未だ声を上げることのできない被害者への更なる調査、二度と同じ過ちを繰り返さないための検証を行い、優生思想のない社会にするための施策を講ずることに取り組むべきである。
私たちDPIは全国の仲間に、再度、国へ上告しないこと、早期全面解決を求める声を各地から上げることを呼びかけたい。同時に、全国で争われている裁判へも引き続き傍聴を始めとする支援を行い、2016年に起きた津久井やまゆり園・障害者殺傷事件に至る、社会に広く存在する優生思想の克服に向けて、今後も粘り強く取り組む決意である。