読書バリアフリー法成立における関係4団体声明
日本は2018年、「マラケシュ条約」を批准しました。この条約は、障害者が発行された著作物を利用する機会を促進することを目的としています。
障害者の定義には、本を持ち続けられない、またはページがめくれない身体障害者も含まれています。マラケシュ条約批准に併せて、著作権法の一部も改正されました。
これまで著作権法では、視覚障害者や文字の読み書きに困難のある発達障害者だけが著作権の制限対象となっていましたが、ここに読書に困難のある身体障害者が加えられました。
つまり、一定の要件をクリアすれば、著作権者の許諾を得なくても、読書に困難のある身体障害者のために通常の活字図書を電子データ化したり、拡大したり、音訳したりし提供することが可能になったということです。
2019年6月21日(金)に「読書バリアフリー法」が衆院本会議で可決、成立しました。日本盲人会連合、全国盲ろう者協会、弱視者問題研究会、DPI日本会議の4団体で声明を出しましたのでここに掲載します。
2019年6月21日
「読書バリアフリー法成立における関係4団体声明」
日本盲人会連合
DPI日本会議
全国盲ろう者協会
弱視者問題研究会
これまで読書バリアフリー法の制定を求めてきた私たち4団体は、本日6月21日、衆議院本会議において、「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律」が全会一致で可決成立したことを心より歓迎します。制定にご尽力いただいた障害児者の情報コミュニケーション推進に関する議員連盟の先生方、参議院文教科学委員会及び衆議院文部科学委員会の先生方、読書バリアフリー法にご賛同いただいたすべての国会議員の先生方、出版社や図書館等の障害者の読書に関わる関係機関、ご支援いただいた障害当事者やボランティア団体等、関係の皆々様に心より感謝申し上げます。
この度制定された読書バリアフリー法は、マラケシュ条約批准を機に改正された著作権法と並び、車の両輪として私たち読書に困難のある障害者の読書環境整備に大きく寄与する試金石を与えていただいたと考えております。条文にある図書館の利用に係る体制整備、インターネットを利用したサービスの提供体制強化、特定書籍及び特定電子書籍等の製作支援、利用しやすい電子書籍等の販売促進、外国からの電子書籍の入手のための環境整備、端末機器等に関する情報入手支援、情報通信技術の習得支援、研究開発推進、人材育成、関係者の協議の場の設置等、今後私たちが本を「買う自由」や「借りる権利」を確立する上で、大きな礎をつくっていただいたと認識しております。
他方、障害の有無に関わらず、本をいつでも、どこでも、それぞれのニーズに応じた方法で読書できるようにするには、読書バリアフリー法の理念を推進し、具体的に実現していく必要があります。そのためには、第七条と第八条にあるように、国・地方自治体における基本計画策定を進めていくことや、十八条にあるように、障害当事者だけでなく、関係府省庁、出版社、図書館、ボランティア団体等が一丸となって連携協力していくことが求められます。
この読書バリアフリー法制定を新たなスタート地点と捉え、真に障害者の読書バリアフリーが実現する日まで、引き続き関係の方々のご支援を賜れれば幸いです。
▽「読書バリアフリー法成立における関係4団体声明」はこちらからダウンロードできます(ワード)
▽7月14日(日)開催【DPI後援イベント】語り合おう!読書バリアフリーのこれから~障害のある子どもと本をつなぐ~のご案内
読書バリアフリー法成立に向けたこれまでの取組み等(すべてDPIホームページ内)
▽読書バリアフリー法(仮称)の制定を求める院内集会「私たちももっと本を読みたい!」を開催しました(2018年7月18日記事)
▽「マラケシュ条約」批准と「読書バリアフリー法」制定を目指して(2015年3月10日記事)
ウェブニュースにも載っています(すべて外部リンク)
▽「読書バリアフリー法」成立 超党派の議員立法(毎日新聞 2019年6月21日)
▽読書バリアフリー法が成立(日本経済新聞 2019年6月21日)