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「相模原障害者殺傷事件」から4年 コロナ禍の中で迎える7.26声明

2020年07月26日 地域生活要望・声明権利擁護

晴れ渡った空

 4年前の今日、2016年7月26日、神奈川県相模原市にある津久井やまゆり園に入所していた方々が襲われ、19人もの尊い生命が奪われ、26人が重軽傷を負わされた「相模原障害者殺傷事件」が起きた。

事件から4年を迎える今年3月31日、事件の犯人である植松被告に対して死刑が確定した。

私たち障害当事者や家族、支援者らは、事件直後からこの事件の背景や原因は、死刑囚となった植松個人だけの問題ではなく、差別や偏見を払拭できず優生思想を生み出している社会(過去の過ちからの教訓を活かしきれず人権意識の低い福祉・教育等の制度・施策・環境・報道の歪み等)の側にこそあると考え、裁判を通じてそれが究明されることを期待した。

判決文では、「犯行動機の中核である被告人の重度障害者に関する考えは、被告人自身の本件施設での勤務経験を基礎」として、津久井やまゆり園における入所者への対応状況が背景にあったことは明言されたものの、裁判では植松個人の責任能力の有無に焦点が当たり、彼の「重度障害者は不幸しか作れない」、「殺した方が社会の役に立つ」という主張の背景や原因を深く掘り下げることはできずに結審した。

 他方、本件とは別に津久井やまゆり園での他の職員による利用者への虐待案件、不適切対応等があったことが明らかになった。量刑が確定したとはいえ、史上最悪となった障害者殺傷事件の舞台となった津久井やまゆり園における虐待事例の検証を曖昧にしたままでは、本事件の本質的な解明にはつながらない。

判決で明らかになったとはいいがたい植松死刑囚の直接的犯行動機の形成過程が、職場での環境等と関係があったのかなかったのか、今後丁寧に検証される必要があることは明らかである。

 裁判の行方はそれなりに世間に注目はされたが、全世界的な新型コロナウィルス感染症のパンデミックの中、死刑確定と共に急速に世間の関心度が低下している。

事件を風化させず「共に生きる社会とは何か」を考え続けるために毎年開催してきた追悼集会は、コロナ禍で今年の開催は見送らざるを得なかった。

いま、過去の事例から植松死刑囚の早期執行を予測する報道も出始めているが、刑の執行では事件の本当の解決は望めない。

世界中のコロナ禍で、人権意識の高いと思われていた国々でも障害や高齢を理由とした命の選別が行われたり、検討されはじめている。いわば生産性の有無や高低を基準としたものであり、「優生思想の復活あるいは容認」が再び広がりかねない。

他方、ロックダウンにより自由な行動や判断を他人に制限される不自由を世界中の人々が経験し、そうした自由を剥奪された環境では、虐待事例が増えることも実証された。また障害のある人の感染リスクは、在宅より入所施設の方が高いことも国内外の事例から判明しつつある。

第二、第三の植松の誕生を招くことなく、優生思想を根絶し、差別や虐待を防ぐための方策の必要性を、このコロナ禍は指し示している。「新しい日常生活」という、「これまでの日常生活」の中での権利性を奪う時代状況の中で、事件を風化させてはならない。

 また、神奈川県は、これまでの「津久井やまゆり園利用者支援検証委員会」を発展改組した「障害者支援施設における利用者目線の支援推進検討部会」(以下、検討部会)を設置し、津久井やまゆり園を含む6つの施設における支援の在り方などの検証を行うとしている。

ここでは津久井やまゆり園事件の背景やその一つとされる虐待についてもきちんと検証されなければならない。私たちはこの検討部会の動きに注視していく。

 さらに、直前の7月23日に京都でALS患者の安楽死事件が発覚し、2人の医師が逮捕された。7月24日の京都新聞の報道によれば、『医師2人のうち大久保容疑者は「高齢者は見るからにゾンビ」などとネットに仮名で投稿し、高齢者への医療は社会資源の無駄、寝たきり高齢者はどこかに棄てるべきと優生思想的な主張を繰り返し、安楽死法制化にたびたび言及していた。』という。

今後より詳しい真相の解明がなされると思うが、植松死刑囚の考え方との共通性に強い危機感を抱く。

この事件を契機に「尊厳死の法制化」を議論する必要性に言及する声も出始めているようだが、私たちは、かねてから現状での尊厳死法制化に反対しており、今回の事件においても、ご自身がALSの当事者である舩後参議院議員が発信された『「死ぬ権利」よりも、「生きる権利」を守る社会にしていくことが、何よりも大切です。

どんなに障害が重くても、重篤な病でも、自らの人生を生きたいと思える社会をつくること』をはじめ、他の「生きる」選択をされた多くの当事者の方々が発信されている声を重く受け止めるべきと考える。

 事件から満4年の今日、私たちは、改めて事件の風化を阻止し、障害によって分け隔てられないインクルーシブ社会の実現を目指して行動していくこと事を誓う。そして、社会のあらゆる人々に、ともに考え行動していくことを強く期待する。

2020年7月26日

認定NPO法人DPI日本会議
全国自立生活センター協議会(JIL)
「ともに生きる社会」を考える神奈川集会・実行委員会
(順不同)

▽PDF版はこちら「相模原障害者殺傷事件」から4年 コロナ禍の中で迎える7.26声明

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