生きている!殺すな―やまゆり園事件の起きる時代に生きる障害者たち
2017年10月30日 書籍紹介
- 販売価格:1,800円(税別)
- ページ/サイズ:208p/A5
- 編者:「生きている!殺すな」編集委員会
- 出版社名:山吹書店
- 発行年月日:2017年10月20日
- テキストデータ引換券付き
- ご購入はこちら(Amazon)
紹介文
今の日本社会に蔓延する優生思想は、障害者のみならず多くの人々に生きづらさをもたらしています。やまゆり園事件の犯人の語った、「障害者はいなくなればいい」といった旨の発言は決して特異なものではなく、実はこの閉塞感に満ちた相互監視社会(=空気の読みあい)に暮らす人々の意識に根付いてしまった思想なのです。
やまゆり園事件の犯人がなにも特殊だったわけではないことは、事件直後にインターネット上に溢れた、犠牲者や関係者への誹謗中傷からも証明されてしまっています。同じように「障害者はいなくなればいい」と本気で考えている人々は、残念ながら多く存在するのです。
この本は、そんな事件が起きる時代に生きる障害当事者と支援者によって執筆されました。「他人ごとではない」、事件に対するそんな思いが通底しているように感じられます。「殺されていたのは自分かもしれない」という当事者の叫び、あるいは支援者の立場で「加害者になるかもしれない自分と常に向き合うこと」の重要性、遺された自分たちに課せられたことは優生思想に警鐘を鳴らし続け、克服することであること、などを今一度認識させられる一冊です。
障害当事者の人生の語りから始まる本書ですが、様々な立場の人々が歩んできた歴史を振り返ると、それらは常に優生思想との闘いでした。差別され、傷つけられ、時に虐待され、それでも「生きて」きたのです。
「差別がなぜいけないのか」というストレートな問いに対しては、「あなたが差別されたらどう思うか」という問いかけをし続けなければならなりません。「他人ごとではない」という認識を、社会で共有していく必要があります。優生思想とは、人間から「人間らしさ」を奪う思想ではないでしょうか。人間には本能レベルで差別感情を持つ構造が脳にあるそうです。しかし、本能のままに差別感情を剥き出しにしていいわけがありません。文明社会に生きる私たち一人ひとりが、相互に人権と尊厳を尊重される社会でなければ、社会はどんどん矮小化していくことでしょう。そういう意味での「警鐘」も、鳴らし続けていく使命を、遺された私たち当事者は担っているといえます。
この本は、やまゆり園事件から私たちが何を教訓とすべきか、今後の運動の展開をどうすべきか、といった羅針盤の一つともいえます。「歩笑夢」(ぽえむ)の「19の軌跡」、「ラブ・エロ・ピース」の「死んでない 殺すな」のメッセージソングCD付きです。ぜひご一読ください。
(事務局 鷺原由佳)