全ての人が希望と尊厳をもって
暮らせる社会へ

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2021年度の活動方針

0.DPIビジョン2030

(1)DPIビジョン2030
(2)各部会のビジョン

1.障害者権利条約の完全実施

(1)国内法整備等
(2)障害者権利条約の完全実施等

2.地域生活

(1)脱施設への取り組み
(2)障害者総合支援法の改正に向けた取り組み

3.交通・まちづくり

(1)最重要4課題の取り組み
(2)その他の課題

4. 権利擁護

(1)差別解消法改正に向けた取り組み
(2)施設入所・社会的入院を解消する
(3)障害者基本法改正に向けて
(4)精神障害者の人権と地域生活の確立
(5)DPI障害者差別解消ピアサポートとの連携

5. 教育

(1)法令の改善等に向けた取り組み
(2)障害者権利条約と連動した取り組み
(3)地域での取り組みと関係団体との連携

6. 雇用・労働・所得保障

(1)雇用・労働
(2)障害者の所得保障の確立

7. 障害女性

8. 国際協力

(1)DPI発展による誰一人取り残さない体制の構築
(2)JICAの委託による国際協力活動

9. 尊厳生

10. 優生保護法と優生思想

11. 欠格条項をなくす

12. コロナ禍への対応

13. 文化芸術

14. 次世代育成


各事業、組織について

◯広報・啓発

◯普及・参画

1. 加盟団体への支援、ネットワーク強化に向けて
2. 講師派遣、点字印刷
3. DPI 障害者政策討論集会

◯権利擁護に関する事業

1. DPI障害者差別解消ピアサポートの体制強化
2. 権利擁護部会との連携の強化
3. 差別や虐待実態の把握と新たな施策の基礎資料づくり

◯組織体制整備

1. 会員および支援者の増大にむけて
2. 事務局の体制整備について
3. 財政および予算執行について

◯部会とプロジェクト

1.部会について
2.プロジェクトについて

2021年度活動方針全文

DPIビジョン2030

(1)DPI ビジョン2030

DPIは、2030年までの行動計画「DPIビジョン2030」を策定した。これは全体ビジョンと共に、地域生活、アクセシビリティ、権利擁護、教育、雇用労働、所得保障、障害女性、国際協力、優生思想、尊厳生の10のテーマでビジョンを策定し、部会ごとに2030年までの行動計画をまとめたものである。

2021年から2030年までの10年間は、政治・経済状況の変化、テクノロジーの進化、「生活様式」の変化など、私たちを取り巻く環境がより早く、大きく変化していくことが予想される。どんな時代になろうとも、権利条約の完全実施を旗印に全ての人が尊厳と希望をもって暮らせるインクルーシブな社会を創っていこう、長年の障害者運動の懸案課題である脱施設やインクルーシブ教育などを含めた取り組みを進めよう、そういう強い想いと決意が、このビジョンには込められている。

優生思想をむき出しにした2016年の相模原障害者殺傷事件では、重度障害のある仲間たちが殺戮された。そして、2020年のコロナ禍において、命の選別が実際に行われようとしてきた。

私たちは2020年の総会アピールで「行動制限、社会的隔離の苦しさが社会全体の共通体験となった今、そして、命と健康と暮らしと自由の尊さが確認された今こそ、障害を理由として地域社会から排除されたり隔離されたり様々な制限と制約を受けることのないインクルーシブな社会への転換を果たすべく、脱施設、社会的入院解消及びインクルーシブ教育等を実現しなければならない。」と訴えた。差別を許すことなく、コロナ禍をくぐり抜けた世界がインクルーシブな社会へと転換することを展望して、私たちはさらに連帯を強めて、活動を継続していかなければならない。

ビジョンは作成自体が目的ではなく、それに基づいた実践を行い具体化していくための行動指針である。2021年度においては、各部会での活動を元に、実践的な提言や資料作成、テーマ別のオンラインミーティングなどを展開していく。
ビジョンを達成するためには、加盟団体と一体となった運動が不可欠であり、連携した活動を進めていこう。

DPIビジョン2030はこちら

Ⅰ.活動方針

1.障害者権利条約の完全実施

(1)国内法整備等

2020年に引き続き、DPIとして三法と位置付けている「障害者基本法」、「差別解消法」、「障害者虐待防止法」の改正、インクルーシブ教育の実現のための法整備、脱施設・地域生活の確立のための総合支援法等の法制度の見直し、成年後見制度の見直しなど障害者関連法制度全般について、権利条約に 則した見直しに向けた活動を行う。

まず、差別解消法の改正については関係団体と協力しながら、三法プロジェクトや差別解消法プロジェクトを中心に、今第204回国会での改正に向けた全国的な運動を展開する。改正法案の内容についても、施行時期や障害女性などの複合差別問題、附帯決議など基本法改正への手がかりづくりなど差別解消法の改正の課題に取り組む。そして、法改正後の基本方針の改定について、法の対象や差別類型、ワンストップ窓口の設置など相談体制の充実など重要課題を整理し、提言するための体制を強化する。それに続く対応要領、対応指針の改定についても同様に取り組んでいく。

障害者虐待防止法の改正については、厚労省との意見交換や研究者や団体関係者を交えた学習会の開催などを通して、改正の実現に向けて引き続き取り組んでいく。

そのほか、脱施設・地域移行の推進やインクルーシブ教育の実現などの重要課題も、「DPIビジョン2030」に則した形でそれぞれ取り組んでいく。

(2)権利条約の完全実施等

コロナ禍が原因で国連の日程も大きな変更が求められている中、最新の情報を収集しながら、権利委員会による日本政府の最初の国家報告書に対する建設的対話(審査)の開催に向けた取り組みを粛々と行う。日本政府に対する事前質問事項の回答について、外務省と連携しながら、政府との意見交換を特別委員会を中心に進めていく。

権利委員会が進めている脱施設に関するガイドライン作りにもコンサルテーションやその他の機会に積極的に参加し、これを契機に脱施設運動の国内外の連帯を強化する。

権利委員会の委員とも積極的に交流していく。たとえば、日本の担当者であり権利委員会の副委員長でもあるキム・ミヨン氏(韓国)やジョナス・ラスカス氏(リトアニア)、DPIーAP前事務局長であったサオワラック・トンクァイ氏(タイ)との意見交換の場を作っていく。

2.地域生活

(1)脱施設への取り組み

①日本財団助成事業

2021年1月から2022年3月までの期間で、日本財団の「新型コロナウイルス感染症に伴う社会活動支援」という新しい助成事業として「withコロナ時代のオンライン地域移行支援制度モデル構築事業」を実施する。本事業を通じ、コロナ禍においてもオンラインを活用し地域移行の取り組みが継続・促進されるとともに、本事業の成果を踏まえ、自治体や国に地域移行支援を促進するための具体的な制度案を提言することを目的としている。

京都府と大分県にある自立生活センターに協力いただき、地域移行を希望する長期入院中の障害者を対象に「オンライン地域移行支援制度のモデル的事業」を2021年12月まで行い、「withコロナ時代の地域移行国際セミナー」を2022年3月までに開催する。このセミナーでは、①世界各国の地域移行制度紹介(米・スウェーデン・カナダ・韓国等)、②本事業の成果報告、③地域移行制度モデルの提言を行う予定である。

②地域移行戦略会議

「DPIビジョン2030」で掲げた「脱施設及び社会的入院の解消」(権利擁護&地域生活部会)の実現に向けて、2020年末にDPI地域移行戦略会議という内部検討チームを立ち上げた。2021年度は、このチーム主催で勉強会等を行う。

また、様々な関係者と繋がり合って脱施設の法制化の機運づくりが盛り上がるような働きかけを行なっていく。もしも、権利委員会による日本政府への勧告が出されれば、それを最大限に活用する。

(2)障害者総合支援法の改正に向けた取り組み

①社会保障審議会(以下、社保審)障害者部会への対応

社保審障害者部会では、新しい部会長の下で総合支援法の改正に向けた議論が始まり、2021年12月までに取りまとめるというスケジュールが公表された。これに合わせて、これまでも積み残し課題として挙げていた「法の対象拡大」、「地域移行策」、「基盤整備策」、「重度訪問見直し」、「国庫負担基準」、「市町村の非定型支給決定ガイドライン問題」、「65歳問題」、「財源確保」等の意見を取りまとめてヒアリングに臨む。また、全国大行動をはじめ他団体とも連携し、社保審障害者部会構成委員及び国会議員等へのロビー活動を、タイミングを逸しないよう注意して行う。

②重度障害者の通勤・就労中の介助に関する新制度について

雇用・労働・所得保障部会とも連携し、通勤・就労中の介助利用等、重度訪問の積み残し課題の解消に向けて、「障害者雇用・福祉施策の連携強化に関する検討会」を傍聴し議論の動向を注視するとともに、事例収集やシンポジウム等を開催する予定である。

3.交通まちづくり

(1)最重要4課題の取り組み

オリパラをきっかけとしたここ数年間のバリアフリー施策の進展は目覚ましいものがあるが、2021年はこれまで進展のなかった分野に力を注いでいきたい。バリアフリー部会では、下記4点を最重要課題と位置づけ、2021年2月に赤羽国交大臣に面会し、取り組みを始めた。

①オリパラを契機としたバリアフリーのレガシー化

オリパラを契機としたバリアフリー化の成果は、世界のバリアフリー整備基準が導入されたこと(Tokyo2020アクセシビリティ・ガイドライン)、新国立競技場等の当事者参画の意見反映の2つである。この成果で会場となるスタジアムの整備は、世界最高水準のバリアフリー整備が実現した。

しかし、残念なことに現在地方で取り組まれているビックプロジェクトには、このいずれも反映されていない。バリアフリー法の義務基準になっていないために、全国に広がっていないのである。オリパラの成果を全国に広め、次世代につないでいくためにも、Tokyo2020アクセシビリティ・ガイドラインを義務基準に反映させることと、大規模な施設整備には必ず当事者参画を実現するように当事者参画のシステム化を求めていく。

②駅無人化問題への取り組み

駅の無人化は全国で広がり、ある日突然無人化されて、利用できる時間帯が制限される、長時間待たされるなど著しく利便性が低下するという事態が起きている。国交省は2020年度からDPIを含む障害者4団体とJR6社と大手民鉄16社を構成員とした検討会を立ち上げ、視覚障害者、聴覚障害者、車いす使用者等の利便性の改善を議論している。一部の鉄道事業者は車両に携帯スロープを積んで乗務員が乗降介助することによって事前連絡なくどの列車にも乗れるようにしている。こういった取り組みを全国の鉄道事業者に広め、事業者が取り組むべき事項を制度化していく。

③特急車両のバリアフリー基準の引き上げ

ハンドル型電動車いすが乗車できる特急車両は2018年に見直され、「N700系と同程度以上の車いす留置スペース、車椅子対応トイレ、通路幅を有する車両」となったが、この基準を満たしている特急車両は全国で20%にも満たない。さらに、車いすスペースが少ない、あるいは無いために著しく利便性が損なわれている。車両、予約、待ち時間等を2020年策定した新幹線の基準並みへの引き上げとともに、駅舎のバリアフリー化、予約システムの迅速化も求めていく。

④共同住宅のバリアフリー化

共同住宅のバリアフリー整備基準は、2001年に策定された高齢者住まい法に基づく基本方針「高齢者が居住する住宅の設計に係る指針」がある。しかし、対象が高齢者に限定されているため、常時車いすを使う人、視覚障害者、聴覚障害者等を想定しておらず、浴室入口の段差が許容されているなど非常に不十分な内容である。障害者を対象に含めた基準に改め、細部を見直すように働きかけていく。

(2)その他の課題

UDタクシーの乗車拒否の撲滅と大型の車いすもスムーズに乗降できる新型車両開発への働きかけ、導入が始まる空港アクセスバスのチェック、車いす使用者用駐車施設等のあり方の見直し、駅ホームの段差と隙間の解消の推進、建て替えが予定されている明治神宮野球場と秩父宮ラグビー場のバリアフリー整備、大阪万博を契機とした関西地区のバリアフリー整備、関西国際空港リニューアルへの働きかけ、全国各地でのマスタープラン&基本構想の策定への支援などに取り組んでいく。

4.権利擁護

DPIビジョン2030「脱施設及び社会的入院解消を進め、障害を理由とする差別や虐待がない社会を創る」ことを目標に、差別解消法改正に関する活動を中心に取り組む。

(1)差別解消法改正に向けた取り組み

2016年に施行され3年後見直しの規定があるにも関わらず、2020年12月まで改正法案が作成されるかどうか不明な状態が続いた。しかし、我々の粘り強い活動が実を結び、今第204回国会に法案が上程され、成立する見込みである。だが、予断を許さない状況は続いており、例えば公布後3年以内の施行となっており、無意味に先延ばしされる可能性があることから、地元国会議員へのロビー活動を精力的に行っていく。

また、政府の基本方針、各省庁の対応要領及び対応指針の見直しにも着手することから、プロジェクトチームを立ち上げ、事例収集、分析を行い、指針等に盛り込ませる取り組みを行う。さらに、助成金を活用し、タウンミーティングを開催、差別事例収集を行う。

(2)施設入所・社会的入院を解消する

施設入所・社会的入院は重大な人権侵害であることを改めて認識し、地域生活部会等との連携による日本財団プロジェクトを進め、権利条約と日本の障害者施策との大きな乖離を明らかにし、関係法律整備の足掛かりとする。

(3)障害者基本法改正に向けて

2011年改正以来、3年後見直し規定があるにもかかわらず、放置され続けている。差別解消法改正時に、附帯決議に基本法改正を盛り込ませ、機運を高めていく。

(4)精神障害者の人権と地域生活の確立

神出病院事件(2020年)は、入院患者である精神障害者の人権や生きる希望を踏みにじった。さらに、この事件の被害者たちの多くは今なお神出病院に拘束隔離されている。

このことは、これまでDPIが主張してきた、障害者虐待防止法における通報義務規定に病院等の医療機関が除外されていること、日本の精神医療の根幹にある隔離収容主義が根強く残っていることに他ならない。

そこで、DPI日本会議全国集会において「虐待防止法の改正に向けて~神出病院の虐待事件から考える~」と題し、事件の概要と虐待防止法改正の必要性を共有し、今後の法改正の足掛かりとする。

大阪精神医療人権センターの病院訪問およびアンケート調査の取り組み等を参考にし、精神科病院における社会的入院解消に向けた取り組みを行う。

(5)DPI障害者差別解消ピアサポートとの連携

差別解消ピアサポートと連携し、相談事例を共有し、事例の集積・分析を行い、関係法令の改正のための基礎データとして活用していく。

5.教育

障害のある子どももない子どもも地域の幼稚園・保育園、小・中学校の通常学級、高校で共に学び育つインクルーシブ教育の仕組みを作り、実践を推し進めるための活動を行う。2020年改正されたバリアフリー法による小中学校のバリアフリー化実現に向けた取り組みを進める。また引き続き、地域の学校を原則就学先とする就学決定の在り方、教育の場における差別解消法上の不当な差別的取り扱いの禁止や合理的配慮の獲得の推進、障害に基づくハラスメントの防止といった課題に対する、政府や国政レベルでの活動とともに、地域の活動についても積極的に支援を行う。

(1)法令の改善等に向けた取り組み

文科省の初等中等教育局関連については、いまだ分離選別を促進する特別支援教育の問題点を集約していく。「新しい時代の特別支援教育の在り方に関する有識者会議」報告には、特別支援学校の基準化に加え、就学にかかる都道府県教委・特別支援学校の積極的関与、特別支援学級在籍者の通常学級で学ぶ時間の制限などと読み取れるところもあり、今後文科省から出される「教育支援資料」なども注視していく。またそれらへの問題提起を含めて、文科省担当者等との意見交換を行っていきたい。

東京高裁に場を移した就学にかかる裁判については、本人・保護者の意向を最大限尊重した小学校就学決定の実現に向けて、主体的な参加を進めていくとともに、就学にかかる法令改正への働きかけについても模索していく。

これらの取り組みについて、引き続き組合・公教育計画学会等との連携を図っていく。

(2)障害者権利条約と連動した取り組み

権利条約第24条が求めるインクルーシブ教育について、政府報告・事前質問事項等含め教育分野の学習会、また建設的対話が行われた際は、勧告を含めた学習会等を行う。いずれの場合も、教育分野の法令をどのように変えていくか、また現場の教育実態をどう変えていくかという視点のもとに取り組みを進める。

(3)地域での取り組みと関係団体との連携

各地の就学指導のあり方や学校における合理的配慮の実態、差別発言等への対応、高校入学における定員内の不合格問題等、加盟団体・教育合宿参加者等を通じて把握し、制度を変更する取り組みに結びつける。教職員への障害者の採用・人事配置については、「障害のある教職員ネットワーク」と引き続き連携をとりながら運動を展開していく。

2016年度から開始した「インクルーシブ教育推進フォーラム」を、2021年度は秋に開催し各地のインクルーシブ教育の拡充・啓発を進める。

バリアフリー法が改正され、地域の小中学校を向こう5年間に「緊急かつ集中的に」整備することとなった。これをインクルーシブ教育を実現する環境整備の機会と捉え、要望書のひな型等を作成し、各地で要請行動を呼びかけるとともに、地域の団体とともに取り組みを進める。

学校のバリアフリー施設について、ユニバーサルデザインの観点から災害時も含めいつでも誰もが利用できるような整備・運用を求めていく。さらにこのような取り組みを通じて、教育行政でまだまだ根付いていない「社会モデル」の意識を持てるようにしていきたい。

また若い障害者がインクルーシブ教育への理解を深め、運動の主体となるための取り組みとして教育合宿を、2021年度もオンライン形式で行う。これについては参加者が各地における教育課題に継続的な関わりを持ち、深められるようなものにもなるよう、内容を検討する。

さらに2020年度に引き続き、地域でともに生きともに学ぶ取り組みを進める団体との交流を深めていきたい。

6.雇用・労働・所得保障

(1)雇用・労働

DPIは、障害者雇用における権利条約に基づく平等性と労働者性を確保し、障害の有無や種別及び程度等に関わりなく共働できる職場・雇用及び労働環境を実現することを目的とする。

そのために厚労省が設置している「障害者雇用・福祉施策の連携強化に関する検討会」及び検討会の下に設置された3つのワーキンググループの検討状況と労働政策審議会障害者雇用分科会の動向に留意しつつ必要な対策を講じる。

そして、一般就労については、募集、採用試験、採用後、退職および退職後等、障害者があらゆる場面において障害のない人と同等の機会、処遇を確保するとともに、障害に基づく差別の禁止と合理的配慮を確保し、働き続けることができるための労働条件と労働環境を整備すること及び除外率制度と除外職員制度を撤廃するために取り組む。併せて、2019年に改正された障害者雇用促進法の附帯決議を実現するために日本労働組合総連合会(連合)、全日本自治団体労働組合(自治労)等との連携を深めて取り組む。

福祉的就労及び第三の働き方とされる社会的企業及び社会的雇用などの課題については、「障害者の安定雇用・安心就労の促進をめざす議員連盟(インクルーシブ雇用議連)市民側」と連携して就労支援・継続事業の課題の改善と社会的企業及び社会的雇用・就労等、多様な働き方の制度化に向けて取り組む。

国際的には、国連が定めた「ビジネスと人権に関する指導原則」を受けて日本政府が「行動計画(NAP)」を策定し、その実施と充実を求める「ビジネスと人権NAP市民社会プラットフォーム」の幹事団体として参画し、障害当事者の視点から取り組む。

なお、総会分科会テーマ「重度障害者の雇用に必要な通勤及び勤務中の支援制度を考る」と障害者雇用・労働フォーラム2021については、地域生活部会との共同主催により開催する。

(2)障害者の所得保障の確立

権利条約第19条の「自立した生活および地域社会への包容」に基づき、障害者の地域生活の保障や施設や病院での長期入所・入院を余儀なくされてきた障害者の地域移行を促進するために、以下の取り組みを関係団体と連携して継続的に進める。

①「1型糖尿病 障害基礎年金訴訟」への支援行動と年金制度の見直しを求める。
② 障害基礎年金を障害者の生活維持が可能な水準への引き上げを求める。
③すべての無年金状態にある障害者の解消を年金制度改正により求める。また、当面は、「特定障害者特別給付金制度」の改善を求める。
④ 特別障害者手当の支給要件等の見直しと「(仮称)地域生活支援手当」の創設を求める。
⑤ 生活保護基準引き下げ訴訟(いのちのとりで裁判)の傍聴行動等を行う。

7.障害女性

森元首相の女性差別発言に端を発して、日本でいかにジェンダ―平等が遅れているかが世界的にも指摘され、日本国内にも波及している。これは障害女性の課題が可視化されるチャンスと捉えることもできる。DPIとしても内部での議論や学習を積み重ね、常任委員や加盟団体の複合差別問題に対する理解を深めていく。
まずは2021年度の差別解消法の改正に伴う基本方針の改定で複合差別の課題が書き込まれるよう、年度当初から時機を逸すことなく取り組んでいく。コロナ禍が早々終息するとは考えにくい中、引き続き障害女性の困難について情報を把握し、適切な医療やサービスにアクセスできるよう必要な要望行動を行う。障害者基本法をはじめとする国内の法制度における複合差別解消の課題記述や方針計画の策定実施に向けて、政策委員会等に継続して働きかける。障害者が性被害を受けた場合、加害者への厳罰化を規定する刑法改正を実現させるため、学習会を開催し、提言を行うなどする。また、権利委員会での建設的対話に向けて、JDFパラレルレポート作成メンバーとして、障害女性の課題の可視化と解決に引き続き取り組んでいく。いずれも、DPI女性ネットと連携して取り組んでいく。

8.国際協力

コロナ禍の影響が大きい分野の一つである国際協力活動が、今後もその影響を最小限にとどめるため方法を模索しながら継続、発展ができるようにしていきたい。国際的な約束事である2030年までのSDGs(持続可能な開発目標)の達成においては、「誰も取り残さない社会」に基づいて一人ひとりの存在が大切にされているSDGsの精神に沿って、国際協力活動でも、出会える場、顔の見える関係の構築に努めていく。

(1)DPI発展による誰一人取り残さない体制の構築

世界レベルのDPIが、体制構築の推進役となるDPI統合調整委員会(DPI‐United)の活動を通して再び一つの「われら自身の声」となるように、運営形態、規約の改正、メンバー構成などの討議を支援していく。ニューヨークで開催される国連障害者権利条約締約国会議サイドイベントやその他の場で、再び一つのDPIとして発言し、取り残されている障害者に焦点をあて意見を表明できるよう協力していきたい。

DPIアジア太平洋ブロック評議会では、世界レベルの発展に合わせ、DPIが引き続き業務委託したディーディー・コンサルティング社を通して、事業を継続していく。また、アジア太平洋障害者の10年(2013年-2022年)の次を見越し、フォーカルポイントであるESCAP(国連アジア太平洋経済社会委員会)に協力し、SDGsや権利条約への関心を高め、促進していく。

北東アジア小ブロックの枠組みへは、韓国、中国、モンゴルとの3国での対面会議が可能となれば参加していく。

(2)JICAの委託による国際協力活動

①アフリカ地域の自立生活運動推進の強化

2020年4月から2024年3月まで実施予定であった南アフリカでのJICA草の根事業の第3フェーズとなる「自立生活センターのガバナンス・運営能力強化支援」は、コロナ禍の影響を受けて、計画の変更を行う。具体的には、自立生活センターを直接対象とするのではなく、行政の能力構築への目標達成の変更を検討し、DPI事務局、現地ハウテン州行政当局、現地2か所のILセンター、JICAなどと調整しながら、実施していく。

②ブラジル・たんぽぽプロジェクトのフォローアップ

2008年10月~2013年3月まで実施された同事業の、2021年度JICA草の根技術協力事業への新規申請を行う。その前段として、「コロナ対策緊急支援活動+事後調査」を実施し、たんぽぽ・メンバーのろう者のコロナの感染対策研修の準備を進める。

③国内でのSDGs取り組みの強化

SDGs市民社会ネットワークを通して、政府のSDGs年間行動計画やコロナ禍の諸声明、ビジネスと人権での活動などに障害に関する視点を引き続き盛り込んでいく。合わせてDPIの国際活動はSDGsと関連していくことが明らかになるように努める。

9.尊厳生

2021年度の活動として、引き続き尊厳死法制化の動きについては常に注視し、動きが見られた場合に反対の意を表明する。また法制化によらず実態的に広がりつつある終末期医療におけるACP(事前ケア計画)を根拠とした「延命」治療の制限拡大の動向に注意を払うとともに、生きるための患者の権利法の制定を求めていく。

2020年度よりのコロナ禍に伴いトリアージや人工呼吸器等の配分に関するルール策定を進める動きに関しては、2021年度も引き続き、取り組む必要が認められるため、障害者の医療を受ける権利に関するオンライン学習会の他、諸外国の動きにも着目しながら、状況にあわせて学習会を行う。生命に価値基準や優劣をつけようとする動きにストップをかける活動を続け、ステークホルダーを巻き込みながら、尊厳死法制化に反対する世論の醸成にもつながる新たな動きを形成していきたい。

10. 優生保護法と優生思想

優生保護法裁判においては、2021年度も、兵庫など各地裁や高裁で結審・判決がなされる予定であるが、除斥期間という高い壁を打ち破って勝訴を勝ち取れるよう、各地の支援団体の活動に参画し、他団体と連携しながら大きな社会運動として展開していく。また、生殖医療に関する法律や検討会などの審議において、障害者が排除されるような動きがないかを注視し、警鐘を鳴らし、社会に訴えていく。

11.欠格条項をなくす

引き続き、現状の把握および欠格条項の根本的な見直しのための働きかけを、なくす会と協力して進めていく。日本が権利条約締約国として、第4条で求められている法制度の差別撤廃に向けた取り組みを進めるよう、求めていく。

欠格条項をめぐる動きにより多くの市民が関心を持ち、また運動に参加できるような場の提供を行う。また定期的なオンライン会議を、DPI事務局と、なくす会事務局の合同で開催し、有機的に連携が取れるようにする。DPIオンラインミニ講座や欠格条項に関する取り組み報告などDPIホームページで欠格条項に関する情報や取り組みなどの情報提供をし、ホームページ、メーリングリストなどの情報共有・交換のプラットフォームとしての役割も継続する。

12.コロナ禍への対応

2020年度DPI総会で採択された、「新型コロナウイルス禍におけるインクルーシブ社会の実現に向けた総会アピール」の考え方をもとに、障害福祉サービスの継続及び障害に基づく差別、排除、分断のない感染予防対策や検査体制、ワクチン接種、コロナに感染した場合の医療へのアクセス等が保障されるよう、引き続き取り組んでいく。

また、DPIの理事会、役員会も感染予防や感染拡大防止の観点から、従来の対面による開催からオンライン形式で開催していく。その他、DPI事務局として、職場内や集会開催時における感染予防対策についても、マスクの着用、こまめな消毒、三密の回避、オンラインツールの活用などを通じて、引き続き取り組んでいく。

13.文化芸術

コロナ禍の情勢を注視しつつ、「どんな障害があってもみなで同じ時間と空間を共有して楽しむ」というコンセプトのもと、「みんなで楽しもう!映画上映文化祭」の実現を目標とする。その際、どのような工夫や合理的配慮が必要なのかを整理して現場で実践できるようにする。また、社会に「新たな生活様式」が求められる中で、そこからはみ出る人たちが取り残されることのないよう、文化芸術分野の発信や享受においてもどのようなあり方が求められるのかを引き続き希求していく。

「東京2020大会・日本博を契機とした障害者の文化芸術フェスティバル」実行委員会に引き続き参加し、東北(10月)、関東・甲信越(10月)、近畿(2022年2月)ブロックでの開催に協力するとともに、動画コンテンツを活用した全国キャラバン事業の開催を加盟団体、協力団体に呼びかけていく。これらの活動を通じて、文化・芸術分野における合理的配慮をレガシーとして残すとともに、差別解消法改正による事業者の合理的配慮の義務づけも活用して、映画、演劇などのバリアフリーの機運を高めていく。

14.次世代育成

若手メンバーの実践の場として「差別解消法プロジェクト」を2021年度も継続して取り組む。今第204回国会で差別解消法の改正が予定されており、実現すれば基本方針や対応要領・対応指針の見直しに進んでいく。2019年度に収集した差別事例を基に、基本方針等に盛り込むべき事項をまとめ、働きかけを行う。また、若手メンバーのフォローアップとして、少人数での勉強会や意見交換なども実施する。


Ⅱ広報・啓発事業

情報発信のツールがほぼ一本化されたことで、WEBでの発信をより一層強化する。ホームページは不特定多数の人の目に触れるという観点から、私たちの主張や運動の意義がより広く社会に伝わるよう、コンテンツの充実を図る。どんな媒体からも読んでもらいやすいようレイアウト等の工夫に注力する。「オンラインミニ講座」は、そのときどきの旬なトピックについて集中的に発信をしていく。

「ここに注目!メールマガジン」は毎月初めの定例として、また各部会の活発化のためにも継続して発行をする。
活動内容の紙媒体での発信については、賛助会員をはじめとした対象へ、ホームページの内容を凝縮させた「DPI通信」を発行し、紙媒体での情報発信にも力を入れる。

普及・参画

1. 加盟団体への支援、ネットワーク強化に向けて

2021年度はオンラインを活用したタウンミーティングを実施する。部会ごとの企画等も積極的に展開する。最新の情勢を報告し、DPIビジョン2030と取り組みについて討議する。タウンミーティングを通じて、DPI加盟団体との関係をより一層強化し、一体となった運動展開を目指す。さらに、差別解消法の改正の次は、障害者基本法と障害者虐待防止法の改正を目指し、DPI加盟団体と連携した運動を展開する。また、各地で取り組まれている条例づくりへの支援、各種講師の派遣も実施し、ネットワークを強化し、さらなる運動の展開を図る。

2. 講師派遣、点字印刷

引き続き、各地の障害者団体が主催する学習会や集会に対し、権利条約や障害者制度改革および差別解消法・差別禁止条例、総合支援法等をテーマとした講師派遣を積極的に行う。
また、点字印刷物の作成については、依頼に対し柔軟に応じ、視覚障害者への情報保障を担い、関係団体・個人への広報活動も積極的に行う。

3. DPI障害者政策討論集会

第10回政策論は、11月27日(土)、28 日(日)にオンライン形式で開催する。本集会はDPIとしての政策方針と活動の検証を行う場として、重要な機会となっている。今後予定されている権利条約に基づく建設的対話を見据え、地域での自立生活、インクルーシブ教育、成年後見制度、精神医療のあり方など現状の問題を検証し、今後より一層の取り組みを進めていかなければならない。

権利擁護に関する事業

今後目指すべき「障害者権利条約の完全実施」に向けて、国内法の一つ、差別解消法の改正に貢献できる体制でありたいと考え、2020年度より体制を一新した。テレワーク環境が整ってきた状況から2021年度の方針として下記の諸点をあげる。

(1)DPI障害者差別解消ピアサポートの体制強化

名称をDPI障害者差別解消ピアサポートとして改め、障害者差別や虐待に関すること、及び、合理的配慮に関することに集中して対応する。相談員相互の情報共有を密に図るため、組織内研修を定期的に行う。相談体制の安定化を図るために、総務、労務管理を可視化する。

(2)権利擁護部会との連携の強化

権利擁護部会長である辻直哉理事を所長に迎え、常任委員会への報告等を充実するとともに、全国各地の障害当事者が運営する各種センターや運動団体との連携を深める。

(3)差別や虐待実態の把握と新たな施策の基礎資料づくり

障害者差別や虐待に関わる内容の分析を、障害者差別解消法プロジェクトチームと連携して行う。また、既存の福祉サービスでは対象にならず、社会的に排除されている障害者への相談強化に取り組み、構造的な差別を明らかにし、新たな制度・政策の資料を作成する。

組織体制整備

1.会員および支援者の増大にむけて

多くの方にDPIの活動について興味を持っていただけるよう、各情報発信媒体(Facebook、メールマガジン等)を使って具体的にわかりやすく発信を続け、徐々に定着してきたクレジットカード決済をさらに活用し、寄付のしやすい環境になるよう整備をすすめる。

2021年度も引き続き、DPIの活動への理解と周知を得て、加盟団体のない地域における正会員、賛助会員、寄付や支援を獲得できるよう努める。

2.事務局の体制整備について

感染拡大防止対策のため、在宅勤務と事務所勤務を併用していく。特に、事務局員内での情報共有やコミュニケーションをこれまで以上に丁寧に行うことが大切であると考えている。DPIの役割、ならびに求められる業務内容の複雑・多岐化に対応すべく、事務局内の体制を見直し、引き続き事務局体制および環境整備等を行う。

3.財政および予算執行について

DPIの運動の周知および安定的な財源確保のため、加盟団体や関係団体を中心に財政支援の呼びかけ、会員の確保を積極的に行う。また、各部会・プロジェクト内での予算執行状況の管理など、担当部会及び担当者と事務局との共有を図ることで、スムーズな運営に繋げていく。

4. 部会とプロジェクト

(1)部会について

2014年度からテーマ別に8つの部会(地域生活、バリアフリー、権利擁護、教育、雇用労働・所得保障・生活保護、障害女性、国際協力、尊厳生)を設けて運動を展開してきた。2020年度は、コロナ禍で集会等が全く開催できなくなったが、オンラインを活用し、DPIビジョンミーティング、インクルーシブ教育推進フォーラム、タイムリーな課題を解説するオンラインミニ講座等を実施し、部会の積極的な活動に繋がったため、2021年度は部会メンバーを拡充し、部会単位でオンラインを活用したセミナー等を企画・開催するなど、さらなる活性化をめざす。

(2)プロジェクトについて

重点的な課題についてはプロジェクトを立ち上げて取り組む。
① 障害者差別解消法プロジェクト
2018年度から実施しているこのプロジェクトは、2021年度は研究会、実態調査、シンポジウム等を実施し、権利条約が求める子ども時代から一緒に育ち、学び、文化芸術活動を享受するインクルーシブな環境づくりに向けたモデル提案をしたい。

② インクルーシブ丸ごと実現プロジェクト(公益財団法人キリン福祉財団助成事業)
2018年度から実施しているこのプロジェクトは、2021年度は研究会、実態調査、シンポジウム等を実施し、権利条約が求める子ども時代から一緒に育ち、学び、文化芸術活動を享受するインクルーシブな環境づくりに向けたモデル提案をしたい。

③オンライン地域移行支援モデル構築プロジェクト(公益財団法人日本財団助成事業)
コロナ禍においても病院や施設からの地域移行を進めていけるよう、オンラインツールを活用した地域移行の実践を通じて、脱施設・地域移行支援のモデルづくりに取り組む。

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