DPI 世界規約
前文
世界的かつ恒久的な平和は、社会正義に基づいてのみ確立することができるのであり、
身体、感覚、及び精神に損傷を負った数多くの人々の不公正、苦難、窮乏におとしいれるような、諸条件が現に存在しているので、
そうした人々は、完全参加と平等の権利、すなわち社会、経済の発展による生活水準の向上の配分を平等に分かち合うことを含め、すべての障害者がそれぞれの住む社会での生活を共有し、他の市民と平等な生活条件を享受する権利を持つものであり、障害は、長い間、個人の問題とみなされ、個人とそれを取り巻く環境との関係としてとらえられていなかったが、次の諸点を区別することが必要であり、
- a. 障害(Disability)……身体、精神、または感覚の損傷によって引き起こされる個人の機能の制約
- b. ハンディキャップ(Handicap)……物理的、社会的障壁により他の人々と平等なレベルでコミュニティの通常の生活に参加する機会が失われるかまたは制約されていること
リハビリテーションは、各個人が自らの人生を管理する手段を提供するために、身体的、精神的、かつまた社会的に最も適した機能水準の達成を可能にすることを目指すプロセスであるが、自立生活とコミュニティーサービスは、そのプロセスの一部ではないし、またあるべきではないので社会のすべての体系が障害のある人に開放されなければならないという観点から、次の諸点が明らかであり、
- 障害者の完全参加には多くの障壁が存在すること
- それらの障壁を取り除くために、われわれの社会構造を変革する必要があること
- 物理的環境、住宅と交通、社会的サービスと保健サービス、教育や労働の機会、スポーツやレ クリエーションの施設を含む社会的文化的生活を、すべての人々が十分に利用できるようにする義務があること
- 政府はあらゆる分野において、改革と開発のプログラムがもたらす利益が障害を持つ市民にも及ぶよう保障する責務があること
- このことを実行するための特別な方策を政府の計画立案過程及び行政機構の中に組み込むべきであること
国際連合は、世界人権宣言、国際人権規約、精神薄弱者権利宣言、障害者権利宣言の諸決議で、障害者の権利を認識したのであり、
低開発および開発途上諸国の障害者のおかれた社会的、経済的諸条件に対して、特別かつ緊急な配慮が必要なことが認識されるので、正義、人道、平和を願う心に動かされ、また、この前文に掲げた目標を達成するという観点から、以下の障害者インターナショナル規約に関係者一同合意するものである。
第1条 名称・目的・場所
1 名称
この団体の名称は、障害者インターナショナル(DPI)という。
2 目的
DPIの目的は、すべての障害者の機会均等と、障害者組織の発展とそれらへの支援を通して、正義を獲得することにある。
3 場所
DPIの拠点をカナダに置くが、DPI世界評議会の決定によって変更されるものとする。
第2条 会員・オブザーバー
DPIには、正会員・暫定会員・団体会員・準会員がある。
1 正会員
DPIの会員資格は、本条の規定に基づく国の国内会議にある。「障害者団体」とは、その構成員やその組織の執行機関の過半数が障害者で占められた団体を指す。知的なハンディキャップを持つ人々や障害児の団体の場合には、国内会議がその代表権の形態について考慮することができる。国内会議は、その構成員の中に最大限多様な(性別、宗教、人種、言語、地理的条件なども考慮して)障害者代表を参加させるよう努力しなければならない。
正会員は、投票権を行使し、DPI組織に代表を送り、DPIの役職に人物を推薦することができる。
2 暫定会員
暫定会員の権利は、次のブロック会議までか、あるいは向こう12ヶ月以内に国内会議が招集されるようになっているという条件で、まだ国内会議を組織していない国の障害者団体に与えられる。
オブザーバーには投票権はなく、また、DPIの役職に人物を推薦することもできない。オブザーバーは、世界評議会か各々のブロック評議会の決定に基づいて、DPIの活動に招待される。
暫定会員には、投票権だけでなく、役職に推薦される権利もないが、発言権はある。
3 団体会員
団体会員の権利は、DPIの目的を支持し、また第2条1項に定める、構成員やその執行機関の過半数が障害者である団体であり、単一の障害を代表する国際団体に与えられる。
各々の団体会員からの代表は、世界会議、世界大会、ブロック会議での発言権を有する。第11条に定められた人数が、団体会員を代表して、あらゆる投票権を有する世界評議会メンバーに選ばれる。
4 準会員
準会員の権利は、DPIの目的を支持するが、正会員・暫定会員のいずれの条件も満たしていない、地域的な障害者団体に与えられる。準会員には、投票権だけでなく、役職に推薦される権利もする権利もないが、発言権はある。
第3条 申請
会員申請(正会員・暫定会員・準会員)と再加入申請は、各々のブロック評議会あるいはブロック会議の検討と承認を経た後に、世界評議会によって決定される。1カ国につき1会員とする。団体会員申請は、世界評議会によって決定される。
第4条 オブザーバーの地位
オブザーバーの地位は、障害者問題の分野で活躍しており、DPIの目的を支持する国際的もしくはブロックレベルの組織に与えられる。国際組織のオブザーバー資格は世界評議会への申請とその承認によって、ブロックレベルの組織の場合は該当するブロック評議会への申請とその承認によって与えられる。
第5条 会費
世界評議会は、会費やその他の課金を課す権利を有する。規定の会費を払えない会員には、世界評議会から一部、もしくは全額を免除される場合がある。
第6条 退会
世界評議会は会員権の継続決定の権限を持つ。
退会を希望する会員は、議長に対し、その旨を予告しなければならない。その時点で、DPIに対する財政的な義務をすべて果たしていることを条件に、この予告は、受理された日から6ヶ月間有効である。
DPIに対する支払いが著しく滞っている場合は、強制的に退会させられることもある。世界評議会による強制退会の決定の際には、その所属するブロック評議会の意見を必要とし、また、有効投票数の5分の4以上の承認を決議することで、世界評議会は、会員権の剥奪を決定することができる。
当該会員は、その旨の通知を受け、反論する機会を与えられ、決定を不服として世界会議に告訴することができる。
組織構成
第7条 組織
DPIは国内会議、ブロック会議、ブロック評議会、世界評議会、役員会、世界会議、そして世界大会からなる。
すべてのDPI組織の会合の定足数はその半数である。DPIのすべての選挙は、秘密投票で行われる。
第8条 国内会議
国内会議は、第2条に基づき、この規約条文に従うことを承認し、その目的を支持する障害者組織の代表によって構成される。
各々の国内会議は各々の地域事情に対応する組織形態と、運用方法を定める。
ブロック会議や世界会議への代表は、国内会議で選ばれる。代表を構成するにあたっては、その国におけるさまざまな障害者団体を代表すること。また、可能な限り、宗教、人種、言語、地理的条件、その他その国特有の要素を考慮した形で代表させること。そして両性が等しく代表されるべきである。
第9条 ブロック会議
ブロック単位におけるDPIの目的の達成とブロック内のメンバーの活動の調整のために、一定数のブロック会議をおく。
ブロック会議は少なくとも2年に1度行われるものとする。また、ブロック内の国内会議の過半数の同意をもって、臨時会議開催を準備するよう、ブロック評議会に対し要求できる。国内会議と世界評議会に対し、少なくとも4ヶ月前に会議の開催について通知されなければならない。
ブロック会議への代表は、各々の国内会議につき10名を限度とし、代表団の中では性別を均等にすること。
各々のブロック会議が、独自の運用方法を決定し、執行部を選出する。ブロック評議会がDPI世界評議会とDPI各委員会への代表を決定し、この規約にも規約に付されている細則にも規定されていない規則に関するすべての事柄を決定する。公式な投票者登録はブロック会議の開始時に受理される。
第10条 ブロック評議会
1つのブロック会議につき、1つのブロック評議会が設置される。ブロック評議会は、各暦年ごとに最低1回開催される。ブロック評議会は、ブロック会議の議事日程の準備と運営について責任を負う。
ブロック評議会は、ブロック会議の決めた人数により組織される。ただし、1国内会議からは1名を限度とする。メンバーの選出の際には、ブロック会議は、障害種別と性別に考慮すること。
第11条 世界評議会
世界評議会は、最低2年に1回開催される。
世界評議会は、各ブロックから5名ずつ選ばれた代表者によって構成される。任期は世界会議の終了時から4年とする。ブロックから選ばれた5名の評議員は、そのブロックからもう1名、評議員を追加することができる。
いかなる場合においても、世界評議会においてはブロックから選ばれる評議員は1国1名である。世界評議会への代表を選出する際、ブロック会議もしくはブロック評議会は、世界評議会にあらゆる障害種別が等しく、また両性も等しく代表するように事情に応じて努力すること。各々のブロックから、世界評議会へ6名を限度として補欠を選ぶこともできる。
団体会員は4名を限度とする世界評議員と、その補欠を選ぶ権利を有する。任期は世界会議の終了時から4年とする。
世界評議会によって認定されたオブザーバーは、自費で世界評議会に出席する権利を有する。オブザーバーは会議の決定に対し、意見を述べる権利を有する。
世界評議会は、第1に、議長と1名以上の副議長、書記、会計、そして他の必要な役員を、世界会議の終了時を始点とする4年を任期として選ぶ。
世界評議会の責務は以下のとおり。
- 世界会議や世界大会の運営を行い、日時・場所について少なくとも1年前には通知をすること。
- 次の世界会議までの間の期間中、DPIの最高権威として活動すること。
- 組織の財源を、世界会議が採択した行動計画を実行するにあたり、世界評議会が決定するDPIの目的を達成する上で最も有効である方法で世界会議の指導に基づいて分配すること。
- DPIの財源を管理すること。
- 暦年ごとに1度、DPIの業務、財政双方に渡る報告書をまとめ、監査役とDPIのすべての国内会議に提出すること。
- ブロックの数と範囲を決めること。
- 会員の問題とオブザーバーの問題を扱うこと。
- あらゆる種類の障害者の最大限のDPI活動への参加を保障すること。
- 国連、ILO、その他関係機関に、DPI活動に関連する問題について助言すること。
- 世界評議会の施行規則を決定すること。
- DPIの任務を遂行するのに必要であるとされるすべての委員会、特別担当官を任ずること。
- 事務局長を任命し、その報酬と任務条件を決定すること。
- DPIの事務局の所在地を決定すること。
- DPI長期行動計画を採択すること。
- 世界評議会と監査役が作成した、前回の世界会議以降の会計年の、組織の活動と財政に関するレポートを審査すること。
- 遅くとも世界会議の8ヶ月前までに提出された各国内会議からの提案を、執行部役員のコメントをつけて、審議すること。
- 世界評議会からの提案を審議すること。
- 4年を任期とする選挙委員会を、各ブロックから1名と団体会員から1名選ぶこと。選挙委員会は、議長、副議長、書記、会計といったDPI役員を選ぶ準備を世界評議会とともに行う。
- 規約改定の問題を処理すること。
- 会員の権利や義務に関するすべての問題に関する訴えの最終法廷としての役割を果たすこと。
第12条 役員会
世界評議会が行われていない期間に生じたDPIの諸問題は、議長、副議長(複数も可)、書記、会計、必要に応じて置かれる役員、そして世界評議員メンバー1名とその代理人によって、各々のブロックを代表するように構成される役員会によって取り扱われる。役員会の責務は、世界評議会での決議を要する問題の整理と世界評議会で定められた任務の遂行である。
世界評議会が、役員の手続き規則を決定する。
第13条 世界会議
少なくとも4年に1度世界会議が行われる。正会員となっている各国内会議は、正式な投票権と発言権を有する代表団を世界会議に送ることができる。1国内会議につき1票とする。世界評議会のメンバーは、国内会議を代表する世界会議への代表者として任命できない。世界評議会のメンバーは世界会議に発言権と提案権を有して参加するが、投票権は有さない。
暫定会員、準会員となっている国内会議や団体会員は世界会議事務局の指導の下で発言権を行使できる代表を世界会議に送ることができる。世界会議に出席しているオブザーバーは、会議の間、発言権を与えられる。
世界会議の責務は以下のとおり。
世界会議は、その会議の運営担当者と書記を選び、投票用紙を数える検査官を指名し、また、その会議の運営担当者と協議して、議事録を採択するために、代表の中から2名を指名する。
公式の投票者名簿は、会議の開始時に世界会議によって採択される。
第14条 世界大会
DPI世界大会は、障害者にとって重要な関心事であるテーマについて討議をするために、諮問機関として世界フォーラムを開催する。世界評議会が、世界大会の日程、場所、プログラム、財政、組織を決定すること。
第15条 他の国際的組織との連携
DPIは、この規約に基づいて、DPIの利益にかなうすべての国際的組織と協力することができる。
この規約に基づいて、団体会員資格やオブザーバー資格によって、より強い協力関係が築かれる。国際的政府組織やその他の国際的NGOがDPIの会合や活動に参加したり、DPIが他の組織の活動に参加するのに必要な準備は世界評議会によって行われる。
第16条 財政ならびに予算に関する規定
DPIは、必要と判断したときは、国連と財政ならびに予算に関する取り決めをすることができる。取り決めが成立していなかったり、実行されていないときは、国内会議は、ブロック会議、ブロック評議会、世界評議会、世界会議、世界大会のいずれかに出席するその国の代表と顧問の旅費と必要経費を払うものとする。
各々の国内会議とブロック会議は、独自で、内部組織や任務に関する財政ならびに予算に関する規定を策定する。
各々の会員団体は、独自で、DPIの活動に参加するときの財政に関する取り決めを行う。
世界会議は、予算と一般的な行動計画の枠組みを決め、世界評議会と監査役のまとめた組織の財政と活動に関する年次報告を審査する責務を有する。
世界評議会は世界会議の決定を実行し、詳細な予算を編成し、会費とその他の費用の額を決め徴収し、DPIが領収または支出した金額を把握し、かつ審査役と世界会議に対し年次報告を提出する責務を有する。
世界評議会は、特定の目的のために受け取った資金のために、特別に信託基金を創設することができる。この場合、基金の使用に関するレポートを、監査役の承認を受けて、世界会議に提出すること。
DPIの支出については、DPIの一般会計から、執行部役員の許可を得たものによって支払われること。
DPIへの支払を滞納している国内会議は、滞納額が2年分以上になった場合は、ブロック会議での投票権がなく、ブロック評議会の代表として選出される資格を失う。例外として、ブロック会議での有効投票の3分の2以上が、その滞納を不可抗力によるものだと認めた場合、その国内会議は投票権ならびにブロック評議会への代表として選出される資格を得る。
第17条 細則
より細かな規則や、手続き規定を定めるものとして、細則集を策定する。世界評議会は細則を採択し、また改定することが責務である。
第18条 規約改定
国内会議、ブロック会議もしくは会員団体による規約改定の提案は、世界評議会に提出される。世界評議会は提案を検討するために規約委員会を組織しなければならない。世界評議会は、ブロックと会員団体に意見を求め、その意見を規約委員会に反映させなければならない。規約委員会は、最終的には勧告を行い、世界評議会に対し、それを提出しなければならない。世界評議会は規約改定に関する提案を、規約委員会の勧告と世界評議会の勧告を付した形で、次回の世界会議の議題の中に組み入れることが責務である。
規約改定の成立には、世界会議の有効投票の3分の2を要する。
第19条 組織の解散
障害者インターナショナルの解散の決定は、少なくとも全国内会議のうち、3分の2以上の賛成を要する。DPIの解散が決定されたときには、世界評議会がその整理に関して責任を持つ。残余の資金は、障害者の利益にかなうと世界評議会の過半数が同意した国際組織に引き渡される。
第20条 新規約の施行
この規約は、1993年4月より効力を発し、1981年にシンガポールで採択された規約にかわる。
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