「明石市の合理的配慮に関する助成制度」について学ぶ勉強会報告
2018年02月13日 権利擁護
DPI日本会議加盟団体のCILいろはに所属をしている八木郷太(やぎきょうた)さんが、先日開催した兵庫県明石市の取り組みから学ぶ勉強会の報告を書いてくれました。
兵庫県明石市では、泉房穂市長を筆頭に、障害者に関する様々な政策、合理的配慮の提供、条例の制定など全国に先駆けて行っております。私も何度か明石市長のお話を伺ったことがありますが、明石市で障害を持っていて、住みづらい、生きづらいということがあるならば、その責任は私たち明石市にある;障害があっても、障害がない人と同じように暮らせるように、私たちが積極的に取り組みを進めていかなければならない;障害がある人にとって住みやすい街は障害のない人にとっても住みよい街なんですとはっきりと口にされます。私は毎回、その気迫・迫力に圧倒されてしまいます。明石市はこうした取り組みの結果、隣県から「明石市に住みたい!」という人が増えて、税収も増えたそうです。
今回記事を書いてくれた八木さんは、まだ21歳と大変若く、昨年実施したADAツアーにユースメンバーとして参加した仲間でもあります。いつかの飲み会で、「依頼された仕事は断らない」と言っていて、その言葉通り、今回の報告執筆も快く書いてくれた成長著しい若手のホープです。今後の八木くんの活躍にもご期待下さい!
(DPI日本会議事務局)
「明石市の合理的配慮に関する助成制度」について学ぶ勉強会報告
八木 郷太(CILいろは)
茨城県水戸市で「茨城に障害のある人の権利条例をつくる会」主催による勉強会が開催されました。この勉強会は「明石市の合理的配慮の助成制度について学ぼう」ということで、兵庫県明石市から障害施策担当課長の山田賢さま、福祉局福祉政策室 障害者・高齢者支援担当課長の青木志帆さまにお越しいただいてお話をして頂きました。昨年、茨城県の水戸市、つくば市議会で「合理的配慮の提供に関する助成制度」の請願が可決されました。明石市ではすでに2016年から「合理的配慮の提供に関する助成制度」が施行されているということで制度について詳しくお話を伺いました。
2016年に施行された障害者差別解消法では行政機関等へは合理的配慮の提供が義務付けられていますが、民間事業者に対しては合理的配慮の提供は努力義務にとどまっているため、まだまだ障害のない人と同じようにサービスを受けられなかったり、諦めなければいけない場面があります。ご飯を食べに行くときは「なにが食べたいか」ではなく「どの店なら入れるか」、お店には入れても多目的トイレがないということや、電車に乗るときは改札に出発の10分前までに行って降車駅を駅員さんに伝えなければならない。無人駅などを利用したいときは数日前に連絡をする。こんなことが都市部でない田舎ではとくに日常茶飯事です。2020年の東京オリンピック・パラリンピックでは多くの外国人や様々な障害を持った人が日本に来ます。ホテルや飲食店、商業施設、交通機関など多くの民間事業者の現状を見ると合理的配慮の提供はとても大きな課題になっています。
この合理的配慮に関する助成制度は民間の商業者や地域の団体が障害のある人に必要な合理的配慮を提供するためにかかる費用を市が助成するという制度です。明石市では点字メニューや筆談ボードなどコミュニケーションツールの作成では上限5万円、折りたたみ式スロープなどの物品購入では上限10万円、簡易スロープや手すり設置などの工事の施工では上限20万円とし、この上限以内ならかかる費用は全額明石市が負担します。水戸市、つくば市でも同様の制度になるかはまだわかりませんが、市が費用を全額負担してくれれば事業者としても非常に合理的配慮を提供しやすくなります。また、明石市では筆談コミュニケーションのポイントと具体例が書かれた筆談入門ガイドを作成しています。障害などに対する知識などがあまりない民間事業者でも合理的配慮を提供しやすいようにするためにこういった事もとてもいい取り組みだと思いました。今回の勉強会には県内のいくつかの市町村の職員さんも参加してくださいました。水戸市とつくば市からも職員の方が参加してくださっていたので、明石市の制度を参考にいい制度にしていってほしいと思います。また、明石市の山田さんがおっしゃっていたように制度施行がゴールではなく、制度施行はスタートというふうに考え、条例の周知活動にも力をいれていきたいと考えています。