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【声明】岐阜地裁「車いす国賠訴訟」判決に強く抗議――合理的配慮を否定する不当判決にNOを

2025年03月25日 要望・声明バリアフリー権利擁護

裁判所
2024年10月30日、岐阜刑務所の受刑者であるAさんが、車いすの貸し出しを認められなかったのは合理的配慮の不提供であり障害者差別にあたるなどとして国に賠償を求めた裁判で、岐阜地方裁判所は「医療的に見て車いすが必要な状態ではなかった」などとして。原告敗訴判決を出しました。

この判決は不当判決であり、許されるものではありません。DPI日本会議は、本日この判決に対する声明文を出しました。

また4月22日は名古屋高等裁判所で控訴審が開かれます。DPI日本会議は、すべての必要な障害者に合理的配慮が提供される社会を目ざして闘ってまいります。名古屋高裁控訴審に向けて4月5日はオンラインの緊急集会を開きます。ふるってご参加ください。

4月5日(土)岐阜合理的配慮訴訟オンライン集会「障害のある受刑者と車いすを利用する権利」

声明文全文は下記。


2025年3月25日

車いす国賠訴訟岐阜地方裁判所判決に対する声明文

特定非営利活動法人DPI(障害者インターナショナル)日本会議
議長 平野みどり

2024年10月30日、岐阜刑務所の受刑者が、車いすの貸し出しを認められなかったのは障害者差別にあたるなどとして国に賠償を求めた裁判で、岐阜地方裁判所は「医療的に見て車いすが必要な状態ではなかった」などとして訴えを退けました。

この訴訟は、岐阜刑務所に服役する73歳の受刑者Aさんが、自力歩行が困難であるとして、複数回にわたって車いすを貸すよう刑務所側に求めましたが、3年前まで認められませんでした。それに対して、刑務所の判断は障害者権利条約などに規定されている障害者差別にあたるなどとして国に150万円余りの賠償を求めていた裁判です。

しかし、判決では「原告は刑務所の日常生活で壁などを支えにしながら両足で立つことができていた。継続的に医師の診察を受け、『車いすの使用を認めるのが相当』との所見が示されることはなかった」とし、「医療的にみて車いすが必要な身体状態ではなく、歩行器を用いるなどして移動することも可能だった。車いすを貸与しなかったことが障害者差別に該当するとは言えない」として原告敗訴としたものです。

しかし、この判決には重大な誤りがあり、到底承服できるものではありません。Aさんは床を這って入浴等に出ていた事情からすれば、車椅子を含む歩行補助具が必要であったことは明らかであり、車椅子を必要とする身体状態になかったとする原判決は根本的に認識が誤っています。

そのような状態であったAさんが繰り返し車いす貸与を求めたにもかかわらず岐阜刑務所長はそれを拒否しており、その判断過程に障害者の権利保障ための適正な手続きがとられた形跡はまったく認められません。Aさんの意向を考慮することなく車椅子の貸与を不許可としており、建設的対話を実施していないという意味でも、同所長が合理的配慮を提供したと認めることは全くできません。

また、障害者差別解消法上の合理的配慮は、過重な負担がない限りそれを必要とするすべての障害者に提供されなければなりませんが、刑務所側に過重な負担があったとは到底言えません。障害者差別解消法の法務省対応要領に照らしても、合理的配慮が提供されていたとは到底言えません。

さらに付け加えれば、裁判で提出された書証から、歩行訓練を実施するために車椅子の使用を禁止しており、歩行訓練を目的とした車いすの禁止が医療上の措置に該当するとは明白であり、岐阜刑務所長の措置は、意思に反した医療上の措置として刑事被収容者処遇法62条1項に違反します。しかも現在では、さらに障害の重度化が進む結果をもたらしています。

Aさんは犯した罪を償っています。罪を償うのも障害のない人と平等に償うべきで、障害があることで障害者のみが障害のない人と比べて不利になることは、刑務所であろうがどこであろうが許されるものではありません。

この岐阜地裁の判決の内容を認めてしまえば、合理的配慮の提供の義務というものが全くの絵にかいたもちになってしまいます。DPI日本会議は強く抗議するとともに、名古屋高等裁判所での控訴審においては、岐阜刑務所の合理的配慮の不提供の事実を認め、Aさんに対して責任を取らせる判決を望みます。そしてそのような判決が出るまで、今後、連帯して闘っていきます。

▽車いす国賠訴訟岐阜地裁判決に対する声明文(ワード)


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