東京都大島発!「インクルーシブ・アイランド・プロジェクト」報告(DPIと東大とのフルインクルーシブ教育連携事業 )
2025年03月10日 インクルーシブ教育
2024年12月17日にインクルーシブ・アイランド・プロジェクトとして伊豆大島で「みんながハッピー、みんなでエンジョイ、インクルーシブ社会」シンポジウムを開催しました。
本シンポジウムは2023年8月に東京大学大学院教育学研究科の「バリアフリー教育開発研究センター」との連携協定にもとづくフルインクルーシブ教育事業の一環として実施したものです。
大島において入学試験で合理的配慮を受けて通常高校に入学した知的障害を持つ生徒が、現在も必要なサポートを受けながら通常の学級で学生生活を送っていることから、そのインクルーシブな教育の在り方について、大島の島民を対象に広く共有し、中長期的には教育だけにとどまらない、障害のある人もない人もすべての人が過ごしやすいインクルーシブ・アイランドとして大島が全国のモデルとなることも視野に入れたプロジェクトとして今年度は上記のシンポジウムの開催と大島の視察も行いました。
シンポジウムの概要
シンポジウムは「インクルーシブ社会」をキーワードに、関連する障害者施策の最新の動向についてDPI日本会議の崔から報告しました。とりわけ障害者差別解消法における合理的配慮の考え方について、わかりやすく説明をした他、成年後見制度や障害者虐待防止法などについても報告されました。
また、インクルーシブ社会の実現に欠かせない障害者の地域生活について、知的障害のある人の自立生活についてとりあげた映画「道草」のダイジェスト版を上映した他、DPI日本会議の白井から地域移行に関する最新の施策の状況についても報告されました。
参加者からは地域生活の重要性は理解しつつも、島の実態として在宅支援の事業所が少ない、ヘルパーの人手不足から24時間介助の体制を作るのは難しいという意見もありました。
DPI日本会議の佐藤からはバリアフリーなまちづくりをテーマに公共交通機関(バス、船など)や店舗、温泉、国立公園などのアクセシビリティに関する最新の動向を中心に報告されました。大島の関連ではバス会社に事前連絡をしたら船の投薬時間に合わせてノンステップバスを手配してもらえたこと、シンポジウム当日にトラブルで大島に向かう船が遅れても対応してくれてシンポジウムに無事に間に合ったという直前に起きていたエピソードなども合理的配慮の好事例として紹介されました。
最後にイベント全体のメインテーマでもあるインクルーシブ教育について、DPI日本会議の西尾、東東京大学バリアフリー教育開発研究センターの森和宏特任助教からそれぞれ話題提供がされました。
DPI日本会議の西尾からは大阪のインクルーシブ教育に関する取り組みが報告されました。小学校の事例として豊中市立南桜塚小学校の実践について、映像も交えながらどのようにインクルーシブな学校どのように作られているのかということについて紹介されました。また、就学通知の制度については、大阪府内には障害の有無にかかわらずすべての子どもに就学通知が出されている自治体があること、知的障害のある子どもの高校進学について、大阪では定員内不合格を出さない方針により、知的障害のある子どもの高校進学の可能性を保障してきたことなどが報告されました。
東京大学バリアフリー教育開発研究センターの森和宏特任助教からはシンポジウムのテーマでもある「みんなが楽しく行ける学校」とはどんな学校なのかということについて、「みんなが行ける」、「楽しく行ける」という2つの視点から報告されました。インクルーシブな学校を考える上で、逆説的に学校でどうやって排除が生まれているのかということを見ていくことが重要だと指摘しました。また、既存の学校に多様な子どもを入れていくだけではインクルーシブ教育にはならず、多様な子どもたちがいることを前提に既存の学校を変えていく視点の必要性について話されました。
シンポジウム全体を通した感想として、参加者から「地域住民として何かやれることがあると感じる会だった」、「全体通してすごくいい話を聞けた」など好意的な声が多く寄せられました。参加人数も平日の午後から夜にかけて長時間のイベントであったにもかかわらず会場一杯に40名程度ご参加いただきました。
視察など
大島の2日目はイベントに協賛いただいた大島椿株式会社、椿花ガーデンへの訪問、大島町の副町との面談もしました。副町長にはイベントの開催報告をした他、大島の実情についてもお話を伺い、今後の取り組みについて引き続きのご協力をお願いしました。
今後の展望
今回の大島訪問では肝心の大島高校への視察が実現できませんでしたが、インクルーシブ教育という点で1つのモデルになり得る実践をされているように思われることから、今後、大島高校への視察を含めてプロジェクトの進め方について検討していきたいと考えています。
報告:白井(事務局次長)
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