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2024年のバリアフリーの動き 〜国交省等の主なバリアフリー関係の検討会をまとめて報告します〜

2024年11月06日 バリアフリー

REPORT

東京2020オリパラを契機として、国交省では多くの検討会が開かれるようになりました。障害当事者参画の重要性が認識され、ほとんどの検討会で多様な障害者団体が構成員となっています。

本年度も多くの検討会が開かれておりますが、夏以降に開かれた主なものをご報告します。

大注目!バリアフリー法及び関連施策のあり方に関する検討会(5/30(木)、10/16(水))

バリアフリー分野における今年度一番注目すべき検討会です。話し合うことは、バリアフリー法の改正と第4次基本方針の2つです。バリアフリー法は2020年に改正され、来年で施行後5年を迎えますが、法改正の必要があるか議論します。

2000年の交通バリアフリー法の施行から、基本方針というバリアフリー整備目標を定めて、整備を進めてきました。従来は10年計画でしたが、2020年の第3次から5年計画となりました。2025年で第3次基本方針は終わるため、2026年以降の計画を議論しています。

10/16(水)の今年度2回目の検討会では、主要課題の検討状況、新たな整備目標の設定の方向性が議論されました。

バリアフリー法は改正のたびにバージョンアップして、充実が計られてきましたので、DPIとしては是非とも改正を目指しています。また、基本方針は、項目自体が古くなり、利用のしやすさという観点が反映されていない分野があります。

例えば、航空はほとんどの項目が100%近く達成されていますが、車椅子ユーザーは搭乗手続きに非常に時間がかかったり、機内の移動やトイレが非常に使いにくいままです。

旅客船も船の一部分しかバリアフリー化されていなくてもいい、という不十分な基準です。

建築物はバリアフリー整備義務がある床面積2,000平米以上の特別特定建築物でも、店舗内のバリアフリー整備義務がないため、車椅子では入れないお店が沢山つくられています。

高速バスはバリアフリー整備を免除する「基準適用除外」の制度があるため、リフト付き車両がほとんどありません。

鉄道に関しては3,000人以上の駅のバリアフリー化は95%程度と進みましたが、3,000人未満で見ると25%程度しかなく、地方のバリアフリー整備が遅れています。

こういった課題を改善すべく、項目の見直しや数値目標の引き上げを求めて働きかけています。2025年5月には取りまとめの予定です。

▽バリアフリー法及び関連施策のあり方に関する検討会(外部リンク:国土交通省)

大注目!サイトラインの確保等に係る検討WG (6/27(木)、10/4(金))

昨年度の検討会で、バリアフリートイレ、車椅子使用者駐車スペース、客席の基準が見直されました。劇場やスタジアム等の客席に関しては総席数の0.5%以上を設けることになり、来年6月から施行されます。

ただ、席数だけでなく、前の人が立ち上がっても視界が遮られないように高低差を設けて車椅子席を作るサイトラインの確保と、同伴者席は隣席にする、会場全体に車椅子席を垂直水平分散することも併せて不可欠だと考えています。

こういった車椅子用客席の基準について議論しています。

ポイントとなっているのは、建築確認申請でサイトラインが確保できているか判断できるか、ということです。コンサートやスポーツで一番盛り上がるシーンが車椅子では何も見えないという現状の問題をなんとしても改善してほしいと働きかけております。

▽サイトラインの確保等に係る検討WG(外部リンク:国土交通省)

③鉄軌道のバリアフリー化の整備推進に関する検討会 (7/24(水)、10/9(水))

この検討会は、①のあり方検討会の鉄道分野を議論するものです。鉄道に関しては丁寧な議論が進められており、10/9(水)の検討会では障害者団体と事業者団体のヒアリングが行われました。年度内にあと2回開かれて取りまとめの予定です。

▽鉄軌道のバリアフリー化の整備推進に関する検討会(外部リンク:国土交通省)

④鉄道における利用環境改善の意見交換会 (10/23(水))

こちらは2020年に新幹線のバリアフリー基準の見直しを契機として立ち上がったもので、鉄道事業者と障害者団体が意見交換できるものです。

従来は、事業者に個別に要望し、働きかけてきましたが、なかなか取り入れてもらうことが難しかったのです。しかし、この意見交換会が出来てからは、ここで要請したことを各社が取り組んでくださるなど、効果が大きいと感じています。整備や接遇で感じている問題を提起していきます。

⑤線路と平面交差する旅客用構内通路(いわゆる「構内踏切」)の移動等円滑化に関するワーキング(11月開催予定)

数年前に奈良県内の踏切で、視覚障害者が踏切内にいるのがわからずに列車に轢かれて亡くなるという痛ましい事故がありました。それをきっかけに、踏切内も誘導ブロックを設置すべきという声が上がり、基準が見直されました。

この検討会は今年度新たに立ち上がるのですが、地方に行くと駅の中に上りと下りを移動する構内踏切が設けられているところがあります。この在り方について基準を設けるべく、議論するようです。

注目!障害者等の航空機非常脱出に関する意見交換会 (10/9(水))

1月2日(火)に羽田空港で起きた日航機事故では、全員が緊急脱出して無事でした。この中に、車椅子ユーザーが2名いらっしゃったそうです。どうやって避難したのか関心が高まっており、国会でも質問があったそうです。

それらを受けて、初めて航空事業者と障害者団体の意見交換会が行われました。障害者団体からは具体的な脱出方法について質問が相次ぎましたが、残念ながら十分な回答ではありませんでした。

一般的には歩行困難な人は、客室乗務員か介助者が前に座り、障害者を背中におんぶするような姿勢で滑り降りるそうです。客室乗務員は年に1回以上の訓練を義務付けられているということですが、障害当事者が参加した訓練は行なっていないそうです。

多くの障害者団体から実際の訓練に参加したいという要請があり、航空局が対応を検討することになりました。今年度中にもう1回開かれる予定です。

⑦2027国際園芸博覧会アクセシビリティ・ガイドライン検討会(横浜市)( 9/12(木)、10/8(火))

2027年に横浜市内で国際園芸博覧会が開催されるそうです。会場内の施設整備の基準を定めたアクセシビリティ・ガイドラインを策定することとなり、9月に検討会が立ち上がりました。

東京オリパラのTokyo2020アクセシビリティガイドラインと来年の大阪・関西万博のユニバーサルデザインガイドラインをベースに策定するということです。

10月にはワーキングが開かれ、移動・誘導、コミュニケーション、展示の楽しみ方、心のバリアフリー・情報提供について議論されました。

年度内に3回の検討会と2回のワーキングを開き、年度末にまとめるそうです。

▽アクセシビリティ・ガイドライン検討会について(外部リンク:公益社団法人2027年国際園芸博覧会協会)

⑧移動等円滑化評価会議(毎年開催)(9/6(金))

2018年のバリアフリー法改正で出来た当事者評価の仕組みです。年に2回開かれ、様々な課題について提起できるものです。

全国10ヶ所で開かれている移動等円滑化評価会議地域分科会の報告と国交省の取り組みの報告とともに、民間事業者で取り組まれているICT活用の事例が紹介されました。

▽移動等円滑化評価会議(外部リンク:国土交通省)

⑨高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準フォローアップ会議(毎年開催)(10/18(金))

小規模店舗のガイドライン策定を契機に出来た検討会で、建物関係のバリアフリー課題を話し合うものです。建築設計標準とは建物のバリアフリー整備のガイドラインで、来年改正する予定です。

今回、新たに「当事者参画のガイドライン」を策定することが発表されました。東京オリパラで進められた基本設計の段階から、多様な障害当事者の意見を反映する仕組みを、是非とも全国に広げていってほしいと思います。

▽高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準に関するフォローアップ会議(外部リンク:国土交通省)


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