第12回移動等円滑化評価会議 傍聴レポート~当事者目線に立ったさらなるバリアフリーの推進に向けて~
2024年09月09日 バリアフリー
9月6日(金)、国土交通省で第12回移動等円滑化評価会議が開かれました。この評価会議は2018年のバリアフリー法の改正で設けられたもので、高齢者、障害者等の当事者等が参画し、定期的にバリアフリー化の進展の状況を把握し、評価するものです。
障害者団体、事業者団体、学識経験者、地方公共団体等34人で構成されています。
今回は下記のテーマに沿って国交省からの取り組み報告があり、当事者団体や有識者の方から質問や要望等が挙げられていました。
- 第11回移動等円滑化評価会議における主なご意見と国土交通省等の対応状況について
- 当事者目線に立ったバリアフリー環境の課題等の取組状況について
- 国土交通省におけるバリアフリー関係の取組事例について
- バリアフリー分野における ICT 活用の取組事例の紹介
- その他
まず、前回までに出た意見に対しての取り組み状況について国交省から報告がありました。特にマスタープランの策定や地方空港の高速バス、空港での電動車いすバッテリーチェック等については当事者団体からの要望によって進展したと評価されていました。
DPI日本会議の佐藤事務局長は、航空機利用の際の電動車いすのバッテリーチェックが大幅に改善したことについて感謝を述べていました。
これまではバッテリーの種類を事前に伝えていても、チェックインカウンター、保安検査所、搭乗口とそれぞれの場所で何度も確認が必要で多くの時間を費やしていました。これについてDPIが改善を要望し、今年4月に目視確認を義務としない通知を国交省から出していただきました。
その結果、1時間以上かかっていた確認が10分程度で済むようになり、車いすユーザーの負担が軽減したとともに利便性が向上しました。
また、地方の長距離高速バスについて自動車局へ今後の展望を質問したところ、各事業者との意見交換の中でコロナ禍による経営難やドライバー不足等の課題を認識しているとのことで、そのような状況の中でも移動の足の確保やバリアフリー整備等、当事者の意見を聞きながら進めていきたいとの返答をいただきました。
その他、歩道が狭い、地面に埋め込まれたLEDが歩行の妨げになっていること、学校のバリアフリー化、小規模店舗のガイドラインに沿って作られた店舗はどのくらいあるのか調査していただきたいと要望しました。
他の委員からは主に下記の意見が出ていました。
航空
バッテリーチェックが改善されたとあるが、国交省からの通知後も地方の小規模な空港ではバッテリーを全部取り外されて車いすに不具合が生じた事例もある。空港の規模に関わらず全国で徹底していただきたい。
高速バス
高速バスの今後の取り組みについて課題点や事業者が困っている点などを公表し、適用除外を外す方向で取り組んでいただきたい。
電車
- 電車内の音声案内はありがたい。高齢者はICTより人の案内を必要としている。また駅が交差しているところの音声案内は聞こえないため、その手前で案内が欲しい。
- 今期の計画で一番変わったのは無人駅が増えたことで不便さを感じている、検証して対策を講じていただきたい。
- ホームドアが増えたが障害者に限らず命にかかわることなのでさらに整備を加速化させていただきたい。
- 交通系ICカードの障害者割引について、SuicaやPASMOでは実現できたが地域が変わると使えない。技術的に解決できるのではと思う。今後の見通しを教えていただきたい。
- 無人駅について地方分科会で出た意見も共有していただきたい。
- 無人駅のガイドラインが出ているがハード面の記載が少ない。一日の平均乗降客数が3000人未満の駅は整備が難しい。乗降客数にとらわれず、最低限のハード基準を早急に考えていただきたい。
情報アクセシビリティ
- バリアフリーは障害者が社会参加する壁をなくすことである。社会モデルの考えに沿って、ろう者がコミュニケーションを図れる環境が大切。
- 視覚的な情報としてICTの調査が行われているが、手話によるコミュニケーションについて調査していただきたい。
- 緊急時の情報提供が中長期的に取り組む課題とされているが、どのように進めるのか示していただきたい。
- 令和4年の調査では聴覚障害の手帳がない人でも日常生活の聞き取りに困っている人が半数以上いる。音声案内の聞き取りやすさ、音声の文字化、手話通訳についてどのように進めるのか示していただきたい。
- ディスレクシア(学習障害)の方は文字の読解が難しい。文字の読み取りの代替え手段としての音声を選択できる配慮も必要。例えば災害時等に文字案内を音声でも理解できるようにしていただきたい。
基本構想
基本構想等について一定の成果があったということだが、2021年に改訂されてから大きな動きが見えない。自治体の規模ではなく基本構想が必要かの理念をどう伝えるのかを検討していただきたい。人材不足や財源等の地域差はあると思うが、義務化に向けて取り組みが必要。
心のバリアフリー
- 新たな課題としてLGBTQへの対応も挙げていただきたい。関西空港のリノベーションは近畿分科会が全面協力し、トイレのピクトカラー等、当事者の声で改善している。
- 心のバリアフリー研修では当事者の意志の確認、必要性の確認をお願いしたい。
- バリアフリー教室の効果や方向性の検証が必要。
- 心のバリアフリーノートの配布先はどこか、義務か任意か、どのくらい配布されているのか知りたい。
歩道
- 寒冷地は積雪凍結で点字ブロックが機能しない、それをどう解決するか。
路線バス
- 交通系ICカードの読み取り機の設置位置が統一されていないため、視覚障害者はどこにあるのかわからない。函館の路面電車ではタッチ部分から音が出るようになっている。宇都宮LRTも当事者の声で実用化されている。参考にしていただきたい。
- パリ等、海外の路線バスはスロープが電動で出てきて運転手が降りてこなくていい。世界基準で電動スロープを普及させていただきたい。
新幹線、特急列車
- 車いす席のオンライン予約は、新幹線や特急などの列車でまだ使いづらい部分があり、結局駅に行かないといけないことが多い。一部の路線では進展が見られるが、車いすを利用する人がもっと自由に座席を予約して移動できるようにするには、まだ改善が必要。
- 一部の列車はWEBでの障害者割引ができるようになって使いやすくなった。みどりの窓口が減少し、混雑している中並ばなくていいのは負担軽減になるためありがたいが、使えるようになるにはマイナンバーの紐づけや専用クレジットカードの登録等が必要で、なかなかたどり着けない。電話でサポートできるようなサービスがあると良い。
- 車いすのフリースペースの空席情報が検索できるとさらに使いやすい。
タクシー
- 大型車いすが乗れるUDタクシーが増えることを望んでいる
- ストレッチャーが乗れる大型介護タクシーも必要、UDタクシーと介護タクシー両方の普及が必要。
バリアフリー整備目標
- 整備目標のところで100%だと目標達成ととらえがちだが、内容や質の満足度の視点も取り入れていただきたい。
さらに、企業の先進的な取り組み事例として、TOPPAN株式会社の「透明ディスプレイを活用した窓口のユニバーサルコミュニケーション」が紹介されました。
透明翻訳ディスプレイ「VoiceBiz」は駅窓口の透明ディスプレイに設置され、駅員や利用客双方の音声をマイクが認識し、リアルタイムで文字に変換できるICT技術です。
日本語の他に12か国語の言語を翻訳できるとのことで、大阪関西万博での実装を目指しているとのことでした。また、発声が難しい方でもキーボード入力による会話が可能で、外国人の他、聴覚障害者や言語障害、知的障害等様々な人に対応できるサービスだと感じました。
説明を聞いた委員からは、
- 手話言語も音声や文字に変えられるのか
- 窓口以外にも電車の運行異常や災害時にも使えるようになると良い
- 無人駅などで遠隔操作できるようになると良い
- 知的障害者でも読み取れるようにルビ入り対応もしていただきたい
といった意見が出ていました。
私個人的な意見としては、音声が文字化されてディスプレイに表示されるということで、個人情報の配慮やディスプレイの高さが車いすの高さにも対応されているのかが気になりました。現在は西武新宿駅と都営大江戸線都庁前駅の窓口に設置されているとのことなので、実際に利用してみたいと思いました。
全体的な感想
今回も当事者団体からはたくさんの意見や要望が出ており、2時間の会議では足りないくらい多くの課題があると感じました。
これまでの評価会議を通して進展したものもあれば今後も継続的な働きかけが必要なもの、新たに出てきた課題等もあり、現状をしっかり把握しながら取り組んでいく必要性を感じました。
また、都心部と地方部での整備格差も埋めていけるよう、地方部の当事者との連携も大事だと感じました。
今後、一歩でもバリアフリーを進展させるために私自身ができることとして、電動車いすに乗ってたくさんの場所へ出かけていきたいと思います。
報告:工藤登志子(バリアフリー部会長補佐)
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