【全国初!】海外研修期間中も重度訪問介護の継続利用が認められました!
研修などで長期間海外に滞在することを考えていて、ヘルパーによる介助が必要な障害者にとって画期的な支給決定の判断が示されました。
DPIの加盟団体でもあるCILいろはで活動している八木さんは今年度、ダスキン研修で約1年間アメリカでの研修を予定されています。このアメリカ滞在中のヘルパー利用について、日本にいる時と同様に重度訪問介護の利用を継続できないかと、地元の自治体である水戸市と話し合いを重ねてきましたが、この度、水戸市から継続利用を認める判断が下されました。
7月19日に水戸市から直接説明を受ける機会を設けていただき、DPIから地域生活部会及び事務局次長として今村と白井も同席させていただきました。
ご対応いただいた水戸市障害福祉課の大平課長補佐からは、海外滞在中の重度訪問介護の継続利用について、いくつかの課題があった中で、とりわけ居住実態がどこにあるのか、というところが障害者総合支援法の規定と照らし合わせた上での大きな課題であったという説明がありました。
障害者総合支援法の建て付け上、最終的な支給決定権は市町村にあるとはいえ、確固たる根拠が必要ということで、県や国にも問い合わせてみたり、他の自治体に類似の前例がないか探したりもしたが見つからず、一旦は居住実態がないという解釈で支給決定自体ができないとの判断が示されました。
しかし、ご本人の粘り強い交渉とDPIから国への働きかけも相まって、居住実態の解釈について厚労省からの助言もあり、所得税法上では海外滞在期間が1年未満の場合は引き続き日本の居住者として扱われるという規定を根拠にして、海外研修期間中の重度訪問介護の継続利用を認める決定をしたということでした。
これまで前例のなかった長期間に渡る海外滞在中の制度利用が認められたこと自体が画期的で喜ばしいできごとですが、大平課長補佐からの説明でもっとも嬉しかったのは、八木さんから相談のあった当初から「制度が障害のある方の挑戦の足かせになってはいけない。なんとか八木さんが制度を利用できるようにしたい」という思いで検討をされていた、というお話でした。
自治体によっては様々な理由をつけて制度利用そのものや支給決定の時間数を減らすための独自解釈(社会的障壁となるローカルルール)をして、障害のある人の生活を制限するところも少なくない中、水戸市はどうしたら制度が使えるようになるのか、と八木さんの海外研修を応援する前向きなスタンスで検討をしてくれていたことを知ってとても嬉しく思いました。
重度訪問介護の継続利用ができるかどうかわからず、果たしてアメリカ研修に行けるのか、と不安を抱えていた八木さんがとても明るい表情で市の説明を聞いていた姿も印象的で、制度が社会的障壁の除去に資するというお手本のような好事例だと感じました。
なお、国はかねてから宿泊を伴う外出において、介助の必要性は国内外を問わないということで、「行き先が国内でも海外でも重度訪問介護サービス等の利用について、国として制限するものではない。」ということは、繰り返し述べています。
今回もおそらく数日から数週間程度の海外利用であれば問題なく、水戸市も支給決定されていたと思いますが、約1年という長期間の事例だったため、DPIから国に問い合わせた際、「通年かつ長期の外出に当たる可能性はあるが、留学ではないので、少なくとも在宅における介助は認められるだろう」という見解を示していました。
しかしその後、「居住実態がどこにあるか?」という新しい尺度が登場し、一旦は「居住実態が日本にあるとは言えない」という理由で支給決定自体ができないとの見解が示されたものの、何日以上で線引きされるのかは曖昧なままでした。最終的には先述の所得税法上の規定を根拠に、1年未満であれば海外転出届の必要はなく、日本の居住者とみなせるということとなった次第です。
これから海外に研修などで長期間(1年未満)の滞在をしようと考えている、常時介助を必要とする重度障害者にとっても大きな希望となる判断で、こうした考え方に基づく支給決定が全国どこでもされるように引き続き全国団体としても取り組んでいきたいと思います。
文責:白井 誠一朗(事務局次長)