国交省から航空事業者に事務連絡が出ました! ~電動車いすバッテリーの目視確認は必須要件ではない~
2024年04月17日 バリアフリー
4月5日(金)に那覇空港から台北に向かうPeach Aviationの飛行機で、電動車いすユーザーが直前に搭乗を拒否されるという事件が起きました。
搭乗拒否の理由は、目視でバッテリーを確認できなかったことです。経過と問題点をまとめました。
経過
台湾在住のAさんは沖縄を訪問し、台北に帰るためにPeach Aviation の便を予約していました。
電動車いすを利用しているので、バッテリーが飛行機に搭乗可能なものか確認が必要です。Aさんの電動車いすは台湾製のもので、バッテリーにはカバーが掛かっており、目視確認ができないタイプです。
Peach Aviation のホームページには「バッテリーの目視確認が出来ない場合、バッテリーの詳細な情報がわかる書類等をご持参ください」と記載されていたので、Aさんは事前にバッテリーの書類を提出し、当日もその書類を持参していました。
当日はチェックインカウンターでバッテリーの書類を見せて通過し、保安検査場も通り、搭乗ゲートに行くと、航空会社のスタッフが「バッテリーを目視で確認できないから搭乗はできない」と言いました。
Aさんは事前にバッテリーの書類を提出していることを説明し、さらに、持参したその書類を見せて説明したのですが、目視が出来ないからダメだと拒否され、飛行機に乗れませんでした。
問題点
Aさんは2年前からこの電動車いすを使用しており、これまでも4つの航空会社(中華航空、大韓航空、EVA AIR、ANA)を利用したことがあり、問題なく搭乗できておりました。
Aさんの電動車いすのバッテリーは、飛行機に積載可能な基準を満たした安全なものです。
今回の問題点は2つあります。
1つは、Peach Aviationは社内規定で目視でのバッテリーチェックを必須要件としていたことです。
電動車いすは世界中に多くのメーカーがあり、様々なタイプが発売されています。バッテリーがカバーで囲まれており、外から確認することが出来ないものはたくさんあります。
多くの航空会社はそういう場合は、書類の提出等でバッテリーを確認し、搭乗を認めています。
もう1つは、Peach Aviationはホームページにバッテリーが目視確認できない場合は書類を提出するように記載しており、Aさんはその求めに応じてバッテリーの書類を事前に提出し、当日も携行して見せたにも関わらず、Aさんの搭乗を認めなかったことです。
国交省からの事務連絡
AさんとDPIでは、この搭乗拒否の経過を文章でまとめ、4月8日(月)に国交省に提出し、事実確認と改善の働きかけを要請しました。
国交省は4月15日(月)に「電動車椅子におけるバッテリーの確認方法について」という事務連絡を定期航空協会会長宛に発出しました。
事務連絡には「国土交通省航空局では、旅客からの書類提供や口頭による申告も含めた何らかの方法によりバッテリーの種類を確認し、これに基づいて適切に搭載することを求めており、必ずしもバッテリーの現物確認まで求めている訳ではありません」としています。
さらに、「本年4月より障害者差別解消法が改正され、輸送事業者に対し障害者に対する合理的配慮が義務付けられているところ、電動車椅子のバッテリーの現物確認ができないことをもって、差別的な取り扱いをすることのないよう、貴傘下会員へあらためて周知願いたい」とし、差別的取扱いをしないことも求めています。
今回の事務連絡により、バッテリーチェックは、目視による確認が必須要件ではなく、書類提供や口頭による申告を含めたなんらかの方法で確認すれば良い、ということが明確になりました。誤った社内規定を設けた航空事業者は、改定が必要となります。
航空機の利用はこの他にも、バッテリーチェックをする係員がバッテリーの知識をほとんど持っていないことや、チェックインカウンター、保安検査場、搭乗ゲートと3回もバッテリーチェックがあり、同じことを聞かれ、同じ確認が繰り返され、その結果30分~1時間もかかっているという問題もあります。
アメリカの航空会社は5~10分程度で出来ており、これは日本の航空会社のシステムに問題があると考えています。
こういった課題も改善し、誰もが自由に飛行機を利用できるように、引き続き国交省と航空事業者に働きかけていきたいと思います。
■国交省からの事務連絡は、以下からダウンロードいただけます。
報告:佐藤 聡(事務局長)
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