【ポイントまとめました】「脱施設・脱病院のロードマップを考えよう!~施設や病院からの地域移行の仕組みづくりに向けて~」(DPI政策論「地域生活分科会」報告・感想)
12月2日(土)DPI政策論「地域生活分科会」について、報告を下林慶史(DPI常任委員・日本自立生活センター)が、感想を福嶋哲平さん(CILひかり 権利擁護担当)が書いてくれましたので、ご紹介します!
こんなことが報告されました(ポイントまとめ)
(敬称略)
1.今村登(DPI事務局次長・自立生活センターSTEPえどがわ)
- DPI日本会議としてこれまで、地域生活支援拠点と地域移行コーディネーターの創設を強く訴え続けてきた
- さらに進展させるには、施設福祉から地域生活への予算の転換や施設に依存しない地域づくりを進めること
- 地域移行という選択肢があることを知ることが大事で、そのために国の仕組みとして確立する必要がある
2.圓山 里子(新潟医療福祉カレッジ)
- 地域移行支援拠点は地域生活における安心感を担保する、生活の場の移行をしやすくする支援の提供の整備といった2つの役割と相談、緊急時の受け入れ対応、体験の機会・場、専門的人材の確保・育成、地域の体制づくりの機能を担っている
- 総合支援法における相談支援には限界があり、何かあったら家族頼みになってしまっている
- パーソナルアシスタントの整備や障害当事者をエンパワメントすると同時に生活を支えるための支援を行う自立生活センターが重要
3.山田 浩(ピープルファーストジャパン)
- ピープルファースト活動に関わって20年、仲間をいっぱい増やすことを大切にしてきた
- 施設入所経験がありいろいろなことを我慢してきた
- もう施設はいらない。施設をつくるより地域で暮らすことを進めてほしい
4.岡部 宏生(境を越えて理事長)本間 里美(境を越えて事務局長)
- 重度訪問介護や障害当事者の地域生活について知ってもらうこと・介助者を育てること・さまざまな人と繋がることを目的として複数のプロジェクトを展開している
- カリキュラム化プロジェクトについては、知ってもらうことと育てることの根幹を担っている
- 当事者の生活がそれぞれに違うこと、その人が必要とするサポートについて実感し「障害とは何か」について考える貴重なきっかけになっている
- 実習後には、4割の方が介助のアルバイトやボランティアとして関わっている
詳細は下記報告をご覧ください。
分科会で報告・議論したこと
去る12月2日(土)「脱施設・脱病院のロードマップを考えよう」〜施設や病院からの地域移行の仕組みづくりに向けて〜と題して地域生活分科会が行われました。
冒頭では部会長である今村氏からDPI日本会議としてこれまで、地域生活支援拠点と地域移行コーディネーターの創設を強く訴え続けてきた経緯とさらに進展させるには、施設福祉から地域生活への予算の転換や施設に依存しない地域づくりを進めること。「地域移行を前提」とし、地域移行という選択肢があることを知ることが大事で、そのために国の仕組みとして確立する必要があり、脱施設・地域移行を実現するためにロードマップを考えることが重要であると述べました。
続いて、新潟医療福祉カレッジの圓山氏からは、地域生活支援拠点についての概要やなぜ地域移行がすすまないのか、今後必要なことについて語っていただきました。
圓山氏によれば、地域移行支援拠点については地域生活における安心感を担保する、生活の場の移行をしやすくする支援の提供の整備といった2つの役割と相談、緊急時の受け入れ対応、体験の機会・場、専門的人材の確保・育成、地域の体制づくりの機能を担っているとのことでした。
加えてなぜ地域移行が進まないのかについては総合支援法における相談支援の限界があり、何かあったら家族頼みとみられている点を挙げておられました。そういった状況を変えるための補助線としてのパーソナルアシスタントの整備や障害当事者をエンパワメントすると同時に生活を支えるための支援を行う自立生活センターの意義についても触れられ、今後は安心できる場づくりや仕組みづくりが重要と指摘されました。
ピープルファーストジャパン代表の山田氏と支援者の福岡氏からの報告がありました。山田氏はピープルファースト活動に関わって20年、仲間をいっぱい増やすことを大切にしてきたとのことでした。
山田氏は施設入所経験がありいろいろなことを我慢してきたと語っておられ、「もう施設はいらない。施設をつくるより地域で暮らすことを進めてほしい」と率直に述べられていたのがとても印象的でした。
今年のピープルファースト全国大会に海外ゲストが来られて交流する中でさらにその思いを強くされたようです。また、「僕がわからないこと(とき)は助けてほしい。」と自分の地域生活に必要な支援について語られていました。
次に岡部氏と本間氏からは、「境を越えて」で実践されているカリキュラム化プロジェクトについて報告されました。団体としては設立5年でALSなどの障害当事者と介助者を中心として構成されており、重度訪問介護や障害当事者の地域生活について知ってもらうこと・介助者を育てること・さまざまな人と繋がることを目的として複数のプロジェクトを展開されているとのことでした。
特にカリキュラム化プロジェクトについては、知ってもらうことと育てることの根幹を担っており、福祉系大学やその他の教育機関での正式なカリキュラム化を目標に、精力的かつ地道に活動されている様子を語っていただきました。
モデル事業の内容をさまざまな人を交えて検討し、2021年から事業を実施。今年度は関東を中心に東北・関西の6校と、その輪は確実に広がっているそうです。
カリキュラムの内容としては座学での学びと障害当事者宅での実習が行われており、それらを通して、学生は当事者の生活がそれぞれにちがうこと、その人が必要とするサポートについて実感し「障害とは何か」について考える貴重なきっかけになっているとのことでした。
実際に実習後には、4割の方が介助のアルバイトやボランティアとして関わっているとのことでした。
今回の分科会では、今後、脱施設化や地域移行の要となる地域生活支援拠点と地域移行コーディネーターに今後求められることや知的障害者が地域移行するために必要な支援のあり方、障害当事者の地域生活を支える人材育成の具体的な取り組みとさまざまな団体との連携の重要性について多くの参加者と共有できました。
下林慶史(日本自立生活センター)
参加者感想
正直なことをいうと、今回の地域生活分科会の話を聴くまでは、「地域生活支援拠点」とか、「地域移行コーディネーター」という言葉自体は知ってはいましたが、意味はほとんど理解できていませんでした。
そして、CRPDの対日審査の総括所見が、インクルーシブ教育のこととともに脱施設・脱病院のことを“urge”していることは理念としては理解しているつもりでしたが、「脱施設・脱病院を達成するには○○しなければならない」と言った場合の具体的な「○○」が自分の中から抜け落ちてしまっていることに改めて気付かされました。
いくら、理念としては立派なことを言っていても、具体的な「○○」を綿密に計画し実際に行動していかなければ、それは絵空事に終わってしまうことを、大いなる反省の念とともに痛感しました。
そういう意味で、今回のお話では、制度の意味や実際の取り組みについて聴講することができたので、非常に良い機会となりました。
何かを達成したい場合、その目標を立てて発信することはもちろん大切ですが、それだけではダメであるという、ごくごく当たり前のことに気付かされたのはとても貴重な機会でした。
福嶋哲平(CILひかり 権利擁護担当)
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