【報告】サー・ロバート・マーティンさんたち講演会 総括所見を踏まえて脱施設を進めよう!~施設に頼らない地域をどうつくるか~
2023年11月08日 地域生活障害者権利条約の完全実施
2023年10月17日(火)にピープルファーストジャパン、全国自立生活センター協議会、東京都自立生活センター協議会、DPI日本会議主催の「サー・ロバート・マーティンさんたち講演会-~総括所見を踏まえて脱施設を進めよう!~施設に頼らない地域をどうつくるか~」に参加しました。
前半は、ピープルファースト・ニュージーランドの終身会員で、知的障害当事者ではじめて国連障害者権利委員会の独立専門家になったサー・ロバートさんの基調講演、後半はコリー・アールさん(カナダ)とエミリー・ムティエンさん(スウェーデン)をパネラーに迎えたシンポジウムの形式で行われたこの講演会は、多数の国会議員や参加者の方々が来場し、脱施設に対する関心の深さがうかがわれました。
基調講演では、ロバートさんご自身の入所施設で育った経験から、施設がいかに社会から隔離されていて、権利や尊厳を奪うものであるのかということ、だからこそ施設をなくしていかなければならないのだという強い思いと、ニュージーランドでの脱施設化の経緯、そして、ロバートさんが障害者省と協働して取り組んでいる新しいプログラムについてのお話がありました。
△講演するロバートさん(左)と支援者のシンディさん
後半のシンポジウムでは、コリーさんから、カナダの脱施設の経緯と、ピープルファースト・カナダが行政向けに作った脱施設化ガイド「正しい道」などの取り組みについて、エミリーさんは、スウェーデンのグループホームについて、サテライトホームという、一人暮らしをしている障害者の近くに支援者が暮らしていて、何かあると来てくれるという仕組みについて話してくださいました。
△コリーさん、左は支援者のシェリーさん
エミリーさんからは冒頭「日本は権利条約に批准したのに、なぜそれを実現するための行動を起こさないのか」という質問もあり、その鋭い指摘に会場の空気が引き締まりました。
△エミリーさん(左)と通訳者の松永洋子さん
お二人のお話を受け、シンポジウムでコメンテーターを務めたDPI日本会議副議長の尾上浩二さんから、「地域移行がいわれてから15年経つ。10年で一割しか施設入所者が減っていない。このペースでは脱施設に100年かかってしまう。
脱施設を推し進めるためには、入所施設や病院・親元で生活している障害者の地域移行と、新規の施設入所をストップし、重度訪問介護の支援者を増やしていくことが必要。
施設で使われている予算を地域での自立生活のために使っていけるよう、総括所見後初の報酬改定を見守りたい」とのコメントがありましたが、締約国として障害者権利委員会の審査・勧告をどう受け止め行動していくのかを私たちもしっかりと注目していかなければと思います。
基調講演、シンポジウムとも入所施設がいかに尊厳を奪い、社会から隔離する場所なのかということが繰り返し話されていたこと、グループホームは地域生活ではなく、施設であると話されていたことが印象に残っています。
施設入所を経験した立場として、私も同じように感じています。日本もニュージーランドやカナダ、スウェーデンの後に続いていけるよう、私たち当事者が権利を守る運動を続けていくことがとても重要であると改めて感じました。次にエミリーさんにお会いするとき、「宿題をやりきりましたよ!」と胸を張って報告できるよう進んでいきたいと思いを新たにしました。
内山裕子(ヒューマンケア協会)
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