国連障害者権利委員会 脱施設化ガイドライン 章立て及び抄訳
1.章立て(全12章)
I.ガイドライン作成の目的とプロセス
Ⅱ.施設化の終焉に向けた締約国の義務
Ⅲ.脱施設化プロセスの理解と実現のための主要項目
Ⅳ.障害者の尊厳と多様性に基づく脱施設化
Ⅴ.実現のための法制度枠組み
Ⅵ.インクルーシブな地域支援サービス、システム、ネットワーク
Ⅶ.他の者との平等を基礎とした主流サービスへのアクセス
Ⅷ.緊急時の脱施設(リスクのある状況、紛争等を含む人道危機)
Ⅸ.救済・賠償・補償
Ⅹ.データ集計
Ⅺ.脱施設化プロセスの監視
2.各章ごと抄訳 編注:()内はパラグラフ番号
I.ガイドライン作成の目的とプロセス
- 本ガイドラインは、「一般的意見5」及び「(14条)身体の自由及び安全に関するガイドライン」を補完するもの。(1)
- コロナ禍前後の障害者の経験から明らかになった、施設化の問題点を強調。(2)
作成プロセス:参加型(世界7地域・500人以上から聞き取り)(3)
Ⅱ.施設化の終焉に向けた締約国の義務
- 国際法上の義務にも関わらず、世界中の障害者が生命を脅かされる形での施設収容が続いている。(4)
- 脱施設化のプロセスは、条約に則っておらず、進んでもいない。(5)
- 施設化は、5条違反(差別的慣習)、12条違反(法的能力の事実上の否定)、14条違反(インペアメントに基づく拘束・自由のはく奪)。障害者に対する暴力の一形態(15条、16条、17、25条違反:同意のない侵襲的医療等)(6)
- 自立した生活及び地域社会へのインクルージョンの権利にも矛盾。(7)
- 締約国は、あらゆる形態の施設化を廃止、新規入所の終了、施設への予算配置を控えること。施設化は、障害者の保護の一形態、ましてや「選択肢」として取られることは断固としてあってはならない。(8)
- 施設化を長引かせる口実は存在しない。地域リソースの不足等が、施設を維持し、閉鎖を遅らせる理由にはならない。(9)
- 急性期にあることが施設入所の理由になってはならない。医学的介入が必要なものとして扱われるべきではない。(10)
- 脱施設化プロセスは、官民問わずあらゆる形態の施設化、孤立・分離を終わらせることを目的とすべき。(11)
- 施設化は、障害のある子どもの保護の一形態には決してなり得ない。(12)
- 締約国は、①即時退所の機会保障、②非自発的拘留の禁止(14条違反の精神保健福祉法制によるもの)、③施設新設・既存施設の改修の抑制、をすること。(13)
Ⅲ.脱施設化プロセスの理解と実現のための主要項目
A.施設化
- 「施設」を定義する要素:介助者の強制的な共有、個人の意思や選好と関係のないルーティン化した日常、等(14)
- 施設化=「障害」に、「ケア」「治療」を理由として上乗せしたいかなる拘留。
特別寄宿舎、ハンセン病コロニー等の集合的施設で起こりやすい。(15) - 脱施設化の改革対象には、非国営の施設も対象となる。また、施設の要素を一つでも残したものは「地域に根差した」とは言えない。成人障害者が代替意思決定にさらされた環境、サービス事業者が障害者の自律を否定、ルーティーンを決めている「地域生活」等(16)
- 刑務所、ホームレスシェルター等、その他の「収容環境」にも障害者が多い点に留意。差別的慣習を要解消。(18)
B.脱施設化プロセス
- 誰とどこでどのように暮らすか、について、自律・選択・コントロールを障害者が取り戻すことに焦点を当てるべき。(19)
- 脱施設化プロセスの主体は、入所経験者等を含む障害当事者であるべきであり、施設を運営・維持しようとする関係者であってはならない。(20)
C.選択する権利・個人の意思と選好の尊重
- 自立した地域生活には、完全な(full)法的能力、住居や支援サービス等へのアクセスが必要。選択肢があるとは、障害のある女性、高齢者、子どもを含め、意思決定を尊重されることをいう。(21)
D.地域に根差した支援
- 障害者が支援の選択・利活用にあたり法的能力を行使できるよう支援すべき。(24)
- 支援サービスとは:介助サービスのみならず、移動・コミュニケーション・住宅探し等の支援を含む多様なサービスを指す。(25)
- 施設退所後すぐに介助サービスを使えるよう、施設入所中から介助サービス等の支援の仕組みと入所者がつながっているべき。(27)
- 「地域に根差した支援」が、新たな分離型のサービスや集合型住居を作り出してはならない。例えば、「小規模グループホーム」、作業所、「レスパイトケア」のためと称した施設、通過型ホーム、デイケアセンター等。(28)
E.財源と資源の配賦
- 施設への投資は禁止(改修目的を含む)。入所者の即時解放のため、自立生活に必要なサービスに予算転換すべき。施設を維持するため、入所者に施設等に住むことを「選ぶ」よう提案してはならない。(29)
- 施設建設・改修のための公費利用は停止すべき。国際協力によるものも含む。(30)
- 締約国が退所者に提供すべき「完全補償パッケージ」:日常生活用品・現金・食糧・バウチャー・コミュニケーション支援機器・利用可能なサービスの情報等。これらは、退所時に即時に提供しなければならない。(31)
F.アクセシブルな住居
- 締約国は、公営住宅/賃貸補助を通じ、アクセシブルな住居を提供すべき。医療・支援パッケージを前提とし、地域の指定の共同住宅等に住まわせることは条約19条、18条-1(訳注:移動・居住を選択する自由)違反。(32)
G.脱施設化プロセスにおける障害当事者の参画
- サービス事業者、専門家等、施設維持を支持する利害当事者が脱施設化の意思決定プロセスに影響を及ぼすことを避けるべき。(34)
- 入所者、退所者、新規入所リスクが高い障害者が、脱施設化プロセスに完全に参加できるようアクセシブルな形で情報提供すること。(35)
- 脱施設化と並行した市民への意識啓発:19条の理解、施設化の有害さ、障害者の社会からの排除、そして改革の必要性について伝えるべき。(36)
Ⅳ.障害者の尊厳と多様性に基づく脱施設化
- すべての障害者が地域で暮らす権利を持つ。インペアメントに基づき、地域生活の能力を評価(「地域生活は無理」等)することは差別的である。(37)。
- 家族からの支援:成人障害者が同意を表明した場合に限定されるべき(38)。
A.インターセクショナリティ
- 脱施設化のプロセスにおいて、交差的アプローチを取るべき。障害以外の要素(人種・性別・ジェンダー・性的指向・言語、難民であること、インペアメントの種別等)を要考慮。(39)。
B.障害のある女性及び少女
- 障害のある女性は、障害のある男性、障害のない女性と比べ、法的能力を行使する権利を否定されている。施設内で、暴力・搾取・有害な慣習(強制的な避妊・中絶・不妊手術等)の高いリスクにさらされている。(42)
C.障害のある子どもと若者
- 障害のある子どもにとって、「地域で暮らす」権利の核は「家族の中で育つ」権利。大小に関わらずグループホームは子どもにとって特に有害。施設でのケアを正当化・維持する国際的基準は条約違反であり改定されるべき。(43)
- 家族の形は、未婚の両親、シングルの親、同性の親、養子縁組、里親、親族によるケアなど多様な形態を含む。孤児院・居住型ケア、グループホーム等への国際協力は控えるべき。(44)
- 子どもは施設収容によりインペアメントが悪化しがちである。障害のある子ども・若者同士のピア・サポートも重要。(45)
- 短期的入所でも、子どもには苦しみ・トラウマ等になり得る。(46)
- 障害のある子どもにも意見表明権がある。年齢、障害、ジェンダーに配慮した支援を受けるべき。(48)
- 障害のある子ども・若者が施設で暮らすことを「選ぶ」ことはあり得ない。地域生活とは、「居住型施設以外のあらゆる生活環境」であることを考慮した上で、障害のある子ども達がどこで誰と暮らしたいか選ぶ機会を与えられるべき。(49)
- 障害のある子どもが地域の学校に通えるようにすべき。分離教育は地域へのインクルージョンを台無しにし、障害のある子どもを入所させる圧力につながる。(50)
- 家族と子どもに届きやすい形で情報提供をすべき。入所を助言しないよう専門職にも人権モデルに基づく研修が必要。(51)
D.障害のある高齢者
- 脱施設化は、障害のある高齢者(認知症患者を含む)も視野に入れ、高齢者向けの入所型施設(認知症ホーム等)もターゲットとすべき。(52)
Ⅴ.実現のための法制度枠組み
- 自立生活・地域生活を阻む法制度の廃止、慣習・慣行を撤廃すべき。施設閉鎖を目指した脱施設化のための法制度とすべき。法制度は、地域生活に必要なサービスを実現すること、元入所者への補償を含むべき。(53)
A.実現に向けた法的環境整備
- 脱施設化のための法的環境整備には、すべての障害者の法的権利を認めることが必要。自立生活/地域生活の権利(介助を受ける権利を含む)のほか、以下の基本的な権利を認めるべき。(54)
1. 法的能力
・法的能力に関する法制度改革は、脱施設化と同時/即時に必要。入所者に対する後見制度、強制的な精神保健治療、その他の代替意思決定の枠組みは即時撤廃されるべき。地域移行後も法的能力行使のための支援は必要な場合継続すべき(55)
2. 司法へのアクセス
・司法へのアクセスは脱施設化の鍵である(特に、ジェンダーに基づく暴力を受けている入所中の女性及び少女にとって。)13条の内容を遵守すべき。(56)
・入所者が申し立てをできない場合は、国家人権機関もしくは権利擁護団体が法的措置を取ることも可能。障害に基づき拘留された障害者の解放、新たな拘留の防止は即時的義務であり、司法・行政の自由裁量としてはならない。(57)
3.身体の自由及び安全
・「精神上の疾患・不調」を理由とした非自発的な治療等、身体の自由及び安全をはく奪する法的条項は撤廃すべき。恣意的拘束から出所するための緊急支援を用意すべき。(58)
4.平等及び無差別
・ 障害・その他の理由による入所が、禁じられている差別の一形態であることを法律に明記すべき。(59)
B.法的枠組みとリソース
- 以下の1~5の項目について、現状を正確に把握することは、脱施設化の包括的改革のために不可欠。(60)
1.法律
- 全分野の法律を、以下の目的で体系的にレビューすべき。(61)
a)施設化を促進・可能にしている全条項を廃止に向け洗い出す。
b)自立生活を実現するための法的状況と権利の間のギャップを知る。
c)入所措置に対する効果的な法的救済措置(地域で十分な合理的配慮や支
援が受けられない場合等を含む)を保障する。 - 各法(障害関連法制・法的能力関連、家族法、保健法、民法等)が障害者権利条約(かつ一般的意見)を遵守しているかレビューする。(62)
2.施設的な環境及び入所者の状況
- 既存施設をマッピングし、施設向け予算の現状把握をすべき。また、現入所者の支援ネットワーク等を把握し、新たな支援枠組みの土台とすること。(63)
3.地域に根差したサービス
- 現状の地域に根差したサービスの現状も包括的に把握すべき。(64)
4.支援制度に必要な新たな要素の特定
- 締約国は障害者団体と連携し、以下を行うこと。(65)
a)現状と必要な支援のギャップ、新たに必要なサービスを特定する。
b)パイロットプロジェクトを行い、評価する。
c)より多くの支援を必要とする人、障害児の家族等を含め、幅広いサービスを保障。
d)障害者の意思と選好を尊重した支援サービスの保障。
e)障害者の「本物の選択(real choice)」を可能にするサポート
5.労働力分
- 脱施設化に向けて労働力分析(地理的分析・雇用情勢を含む)をすること。労働力転換(訳注:施設⇒地域のこと)を実現可能にし、現状を改善するための優先取り組み事項を明確にすべき。(66)
C.脱施設化戦略と行動計画
- 締約国は脱施設化計画(期限、達成指標、人的・技術的・財的リソースを明記したもの)を採択すべき。法制度改革・予算措置を実行できるハイレベルでの政治的リーダーシップと共に、省庁横断的に取り組むべき。あらゆる過程に、元入所者・障害児を含む障害当事者(団体)が参画すべき。(67)
- 脱施設化宣言(何を目指すか明確に述べているもの)を障害当事者と共に作成することが、脱施設化戦略と行動計画の基盤となる。(68)
Ⅵ.インクルーシブな地域支援サービス、システム、ネットワーク
A.支援システムとネットワーク
- 知的障害者や、より支援を必要とする障害者にとって、支援システムは重要。(69)。
- 締約国が財政支援すべきは、ピアサポート、セルフアドボカシ―、支援ネットワーク(障害者団体、元入所者の組織、自立生活センター等)。(70)
- ピアサポートは、施設や医療専門職から独立し障害者団体が自立運営すべき。(73)
B.支援サービス
- 人権モデルに基づき、医学モデルによる評価は避けるべき。意思決定や評価の際に医療専門職が障害者より力を持たないようにするべき。(75)
- 診断・治療を前提としない精神保健システム外の選択肢も保障されるべき(76)
- 既存サービスから分離された形での支援サービス(デイケアセンター、作業所等)は、条約の趣旨と異なる。(77)
- 高齢化した障害者について、高齢化を理由に介助等支援サービスへのアクセスを失うことがないようにすべき。(81)
- 障害のある子ども、家族への支援サービスが、分離・排除等につながらないようにすべき。(82)
C.個別化された支援サービス
- 入所者を含むすべての障害者が、介助サービスの情報にアクセスできるようにし、個別化された本人中心のあらゆる種類の支援サービスを提供すべき。(83,84)
D.支援機器
- 支援機器を手頃な価格で入手できるようにすべき。(85)
E.所得支援
- 入所措置に対する補償も含めた個別直接給付を実現し、障害者のベーシックインカム、健康保険、障害に関連する費用がカバーされるようにすべき。(86)
- 給付対象者は、本人や世帯の所得に関わらず、すべての障害者とすべき。(87)
- サービス給付の管理は障害者本人がすべきであり、すべての障害者にそのための十分な支援を提供すべき。(88)
- 障害者本人と家族の貧困は入所の促進要因となる。経済的支援を行うべき。(89)
Ⅶ.他の者との平等を基礎とした主流サービスへのアクセス
- 施設化阻止のため、教育・雇用等の主流サービスをアクセシブルにすることが必要。障害の「重さ」・必要な支援量、「精神保健状態」等によりアクセスを阻害されることがないようにすべき。(90-92)
A.退所準備
- 脱施設化は施設化の不公正な慣習をひっくり返すもの。必要とする支援量に関わらず、すべての障害者が退所する機会を有している。(93)
- 施設関係者に対する脱施設化の研修をすべき。地域移行プロセスにおいて、地域移行経験者と入所者間のピアサポートが促進されるべき。(94)
- 退所する者は、a)意思決定者として尊重され、b)地域で暮らす心身の準備期間と機会を十分に与えられ、c)個別化された地域移行計画の中心となり、d)入所経験者として尊重され、脱施設化のプロセスや賠償の計画・実施に参画できること、e)事前に地域での幅広い経験を提供され、f)適切な生活水準を保障されるため住宅、交通、労働・雇用、個別支給金等に関する情報を得られるように。(95)
- 退所者には、出生証明書や市民権の獲得等のための障壁を除去し、人道危機の際も含め、公的身分証明書類を保障しなければならない。(96)
- 金融機関等が、障害を理由に身元調査等をすることは差別となる。(97)
- 施設運営者、司法関係者向けに研修(地域生活の権利・アクセシブルなコミュニケーションの権利について)を行うべき。(98)
B.地域での自立した生活
- 締約国は、意識啓発(100)、移動の自由やアクセシブルな情報の保障(101-102)、包括的なヘルスケア(103)、作業所等ではない分離されない形での雇用(104)、貧困に陥らないための社会保障(105)、退所者(障害のある子どもを含む)へのインクルーシブ教育・高等教育・生涯教育等の機会(106)を保障すべき。
Ⅷ.緊急時の脱施設(リスクのある状況、紛争等を含む人道危機)
- パンデミック、自然災害、紛争等の緊急時において、締約国は施設閉鎖の努力を継続・強化すべき。緊急時の施設化を予防し、施設化に偏りがちな復興計画において脱施設化を盛り込むべき。(107)
- 緊急時であっても、国際条約の人権水準を遵守すべきであり、トリアージ等における障害を理由とした差別等は認められない。障害に基づく拘束の禁止や法的能力の権利も堅持されるべき。(108)
- 緊急支援、復興プログラム・政策等は、入所中の障害者を含む障害者団体(障害児の代表を含む)と連携しつつ計画・実施すべき。(109)
- 緊急時、健康上のリスクが高い障害者が脱施設化において優先されるべき。(110)
- 障害のある女性・少女は、人道危機の際に性・ジェンダーに基づく暴力のリスクが高く、その他のサービスへのアクセスも困難な傾向にあるため、締約国は交差的アプローチをとること。(111)
- 緊急時のあと、施設の再建や増員を防ぐべき。施設ではなく、地域での支援・サービスに予算を転換していくべき。(113)
- 緊急時においても、性別、年齢、障害別の統計を整備し、アクセスできるようにすべき。(114)
Ⅸ.救済・賠償・補償
- 締約国は、あらゆる形態の施設化が、条約に盛り込まれた権利の複合的な侵害であることを認識すべき。補償の否定、長期にわたる入所、強制的な侵襲的医療やその他の暴力・虐待、非人間的かつ劣悪な環境は重大な要素である。(115)
- 締約国は、各種国際規約(※障害者権利条約ほか多様な規約を引用)に基づき入所による損害・補償内容を明確にすべき。(116)
- 締約国は、あらゆる形態の施設化による損害の性質・範囲について特定、啓発するメカニズムを設置し、法制度の変更を提案すべき。また、補償・賠償を求める障害者が司法にアクセスできるよう保障すべき。(117)
- 補償の範囲は、入所中、入所後の個々の人生への影響(現在進行形のもの、今後発生するもの、交差的な損害も含む)を考慮すべき。(118)
- 締約国は、元入所者に対し正式な謝罪を行い、施設化による苦痛や痛みへの補償を自動的に行うべき。(119)
- 賠償は、金銭的な補償だけではなく、入所中の損害から回復し、地域で生活するための法的・社会的サービスを含むべき。また、障害に基づく拘留や施設化等を犯罪とする法制化をすべき。(120)
- 真実委員会を設置し、過去・現在の入所者に対する損害の全概要を明らかにし、施設化がもたらす社会的弊害を世間一般に周知すべき。(121)
- 救済措置の検討にあたっては、障害者、特に入所経験者と共に行い、入所経験者の意思と選好を尊重した補償・賠償メカニズムとすべき。(122)
Ⅹ.データ集計
- 脱施設化プロセスのため、統計データを取るべき。質問項目等はワシントングループのものを参考にし、あらゆる形態の施設(公営・民営・宗教団体等)を対象とすべき。(124)
- 推奨される項目:人種、種族的出身、年齢、ジェンダー、性別、性的指向、社会経済的状況、障害種別、入所の理由、入所日、解放(予定)日、その他の要素。これにより、退所の選択を行使できた人数、まだ退所できず地域移行計画中の人数などが、より正確に把握できる。(126)
- 脱施設化に関するデータは、あらゆる障害者がアクセスできる形態にし、個人情報・プライバシーに配慮すること。(127-128)
Ⅺ.脱施設化プロセスの監視
- 33条の独立した監視機関との関連で、人権侵害を是正し改善し、勧告を出せるような脱施設化の監視メカニズムを設置すべき。(129)
- 脱施設化の監視メカニズムには、障害者(特に入所経験者)の参加を重視すること。施設関係者は監視メカニズムからは除くこと。(130)
- 締約国は、条約33条2項のもとで指定された独立した監視機関や、33条3項に基づく障害者団体等による独立した監視活動が、施設に制限なく入ることを可能とし、書類や情報にもアクセスできるようにすべき。(131)
- あらゆる監視メカニズムは、施設内での人権侵害の状況について自由に調査できるものとする。入所者のプライバシーは当然配慮するが、そのことが調査を妨げる言い訳とはならない。(132)
- 締約国は、独立した監視により発覚した事案も含め、施設内での人権侵害には即時かつ効果的に対応しなければならない。(133)
- 元入所者は入所中の自身の記録に自由にアクセスできるべき。(134-135)
- 緊急時であっても、モニタリングは継続すべき。対面が難しい場合は、オンラインや書面等も検討すべき。(136)
- モニタリングは、すべての施設が閉鎖されるまで継続される。(137)
Ⅻ.国際協力
- 国際協力は脱施設化改革をサポートする鍵である。緊急時支援も含め、施設化につながるいかなる協力も条約違反となる。(138)
- 施設を維持・強化する協力が行われないよう、データ収集や監視メカニズムも含め、透明性を確保すべき。(139)
- 国際協力のプロジェクト立案の際に、元入所者を含め障害者に意見を聞くプロセスを保障すべき。(140)
- 地域国際機関にも締約国と同様の義務があり、脱施設化プロセスを各地域で促進する際の重要な役割を果たし得る。(142)
- 国際協力により、悪しき慣習の繰り返し(医学モデルに基づくアプローチや強制的な精神保健法制等)とならぬよう留意すべき。また、観光客による施設訪問等(ボランツーリズム)等が推奨されぬよう、締約国は条約の趣旨と施設化の弊害を啓発すべき。
以上
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