南アフリカのハウテン州で起こったNPO補助金停止問題が解決
2023年05月12日 国際協力/海外活動
△写真:4月20日に行われたハウテン州政府庁舎前でのデモに参加した自立生活センターのメンバーたち。レメロス自立生活センター提供
DPI日本会議では南アフリカのハウテン州でのJICA草の根事業のフェーズ3の実施に向けて準備を進めていますが、この4月に入り、そのハウテン州で社会福祉関連NPOの活動を根底から揺るがしかねない大きな事件が起こりました。
ことの始まりは、フェーズ3事業のカウンターパート団体であるレメロスを含む現地の自立生活センターに対して2016年度から行われていたNPO補助金の支給を今年度は実施しないという通告が、4月初旬に突然ハウテン州政府から出されたというものでした。
このハウテン州からのNPO補助金は、自立生活センターの人件費とヘルパー派遣の費用をまかなっているものであることから、補助金の停止はサービス提供の停止につながり、利用者の命にも係わることになります。
DPI日本会議が停止についての連絡を自立生活センターから受けた当初は、NPO補助金の停止は自立生活センターに対して行われたものと考えましたが、実態はそうではなく、ハウテン州政府が社会福祉全体に対する補助金予算を支給対象団体への事前通告なしに組み替えようとしたことによって発生したものだということがわかってきました。
NPO補助金支給停止や削減の通知は、自立生活センターだけではなく、障害者向け作業所や子供向けシェルター、高齢者向けケアサービスなどを含む、社会福祉関係の各種NPOに対しても行われていました。
当然のことながら、NPO側から非常に強い反発が生じました。自立生活センターを含む各種NPOが協力してデモやピケなどの抗議行動を、連日ハウテン州政府庁舎前で行って、補助金停止の撤回を求めています。
この件は政治的にも問題となり、与党のアフリカ民族会議(ANC)に次ぐ政党である民主同盟(DA)は、2015年に受け入れ準備の無いままに精神病院を閉鎖し多くの死者を出すことになったライフ・エシディメニ事件になぞらえて、第2のライフ・エシディメニの悲劇として批判を展開しています。
ハウテン州政府はDAが批判するような補助金の削減は行っていないと声明を出しましたが、現実にはサービス提供を中止した事業所が出てきています。ソウェトにある自立生活センターも、このままではサービス提供を継続できないという通知を利用者に出すまでに追い込まれました。
NPOや野党から強い批判を受けたことで、ハウテン州知事が問題に介入することになりました。NPO補助金について知事が州社会開発大臣らと話し合うという声明が4月24日に州政府から出されています。
この話し合いは5月4日に行われ、その結果NPO補助金の支給停止は撤回され、5月15日までに再開されるという知事の声名が発表されています。
この知事の声名の発表後に自立生活センターの代表らに連絡をしましたが、みな一様にほっとした様子でした。この事件で中断していた今年度のNPO補助金を受給するためのサービス提供合意書への署名を早急に行い、地域生活のためのサービスを切れ目なく行っていくとのことです。
報告:降幡 博亮(常任委員)