精神医療国家賠償請求訴訟 第10回口頭弁論を傍聴してきました。伊藤時男さん「社会的入院を一人でもなくしたい」
2023年02月22日 権利擁護
伊藤時男さんは福島県内の精神科病院に約40年入院し、東日本大震災で病院が被災し、茨城県の病院に転院したことがきっかけとなり、グループホームでの生活を経て地域移行した方です。
2019年の第8回DPI障害者政策討論集会にもご登壇いただき、「入院中に養鶏場で鶏糞の処理作業をさせられて、一生懸命働けば退院させてもらえると思って頑張ったが、いつまでたっても退院させてもらえなかった。自分よりあとに入院した人が退院し、働ける人の方が退院出来ないように感じた」と話されていました。
「日本はあまりにも社会的入院が多く、社会的入院を一人でも多くなくしたい。退院できると思われるのに退院できない人が何人もいた。退院意欲を失った人もたくさん見てきた。私はそういう現状を見て見ぬ振りをすることはできない」として、2020年に東京地裁に提訴しました。裁判の主要な争点は以下の通りです。
- 伊藤時男さんの長期入院体験を通して、日本の精神医療政策そのものを問う初めての国賠裁判。
- 原告の訴えとしては、①医療保護入院、②精神科特例、③精神医療政策の不作為、④任意入院の問題性問う。⇒現行法は違憲状態、国(行政・立法)の不作為責任を問う。
- 被告国は全面的に争う「否認」姿勢を表明。
⇒行政施策は状況に応じて適切に展開され、法改正や社会復帰施策・地域医療施策など、積極的に推進してきた。
⇒国に原告に対する法的責任は無く本訴訟は成立しない。
当日は、約85名の傍聴者が集まり、終了後には報告会も開かれました。
▲報告会で発言する伊藤時男さん
▲伊藤さん(右)と報告会に参加したDPI事務局の上薗
参加者からは、日本の精神医療の構造的な問題とこの裁判の意義、ご自身の入院体験、看護師による患者への暴行が報道された東京都八王子市の滝山病院について等の多くの発言がありました。
裁判は終盤を迎えており、今年の秋頃には結審する見込みだそうです。次回の第11回口頭弁論は5月15日(月)14時に決まりました。ぜひとも多くの方に東京地裁に傍聴に行っていただき、伊藤時男さんを応援していただきたいと思います。
※伊藤さんの入退院の経過は、NHKのETV特集「長すぎた入院~知られざる精神医療の実態」(2018年2月3日)で放送され、現在もネット上で見ることができます(有料)。
▽ETV特集「長すぎた入院 精神医療・知られざる実態」(外部リンク)
▽精神医療国家賠償請求訴訟研究会ホームページ(外部リンク)
報告:佐藤 聡(事務局長)
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