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【ポイントまとめました】「精神科病院の『中』の声から人権を考え、何ができるか考える」(DPI政策論「権利擁護分科会」報告・感想)

2022年12月27日 イベント権利擁護

DPI障害者政策討論集会1日目「権利擁護分科会」の報告について柳原康来さん(愛知県重度障害者団体連絡協議会)・感想について、莫 易欽さん(日本福祉大学社会福祉学部)が書いてくれましたので、ご紹介します!


こんなことが報告されました(ポイントまとめ)

(敬称略)

成田 茂(身体拘束の体験者)
Aさん(身体拘束の体験者)
Bさん(身体拘束の体験者)
Cさん(身体拘束の体験者)

有我譲慶(認定NPO法人大阪精神医療人権センター理事・看護師)

詳細は下記報告をご覧ください。


権利擁護分科会開催の経緯

2022年夏に行われた障害者権利条約(以下、権利条約と称す)のジュネーブ審査を受けて勧告のあった、「脱施設化」をキーワードに分科会を開催しました。

「脱施設化」で特に、日本の精神科病院が立ち遅れている深刻な状況について、実際に精神科病院へ入院した当事者の経験談や患者に寄り添う医療従事者の意見を元に、「脱施設化」の重要性や勧告においての課題を整理し、今後の当事者運動の在り方を考えました。

分科会で報告・議論したこと

■4名の入院経験者の話

成田さん

前半は、成田氏と3名が実際に精神科病院で経験した、強制入院や身体拘束(以下、拘束と称す)の状況をお話しいただきました。

当時の劣悪な環境であるカーテンのない大部屋での拘束、強制入院に至るまでに警察官からの取り押さえ行為、留置施設から直接入院させられたこと、退院と偽って隔離室に入れられたこと、拘束されたまま食事をさせられていたこと、辛い思いを表すために床を叩いただけで他害の疑いがあると判断されたことなど、非常に心痛む内容でした。

また、成田氏から日本の精神医療が世界的に見ても、とても遅れているという情勢報告、精神保健福祉法改正について11月の国会審議で市町村長同意での医療保護入院が可決されようとしていることなど権利条約に逆向した施策が実施されようとしていることへの問題提起がありました。

■有我氏からの報告

有我さん

さらに、有我氏から80年代の閉鎖病棟は人権侵害であり治外法権的であったこと、イタリアを視察して脱施設に向けた取り組みが進んでいることに目から鱗が落ちたこと、尊厳を踏みにじられたことが当事者にとってトラウマ・心の傷として永久に残ることなど、病棟の看護師として当事者と関わる中で見聞きしたことや感じたことをお話しいただきました。

そして、日本の精神医療分野で大きな問題をまとめた実際のデータと医療従事者としての肌身で感じている課題を比較しました。日弁連の精神科入院患者に対するアンケートでは全体の8割が「つらい(説明不足・劣悪な環境など)」と回答していました。

今回のジュネーブ審査の権利委員会の勧告において、①「強制入院・差別的法制度の廃止」に向けた取り組みの必要性、②人権モデルの浸透・社会的包摂の視点・優生思想の克服、③日本の精神保健福祉法では精神障害者が保護の対象とされているが、権利条約における精神障害者は権利の主体として定められているという解釈の違い、④精神病床と(全体の37.1%、日本だけが上昇傾向)入院日数が世界一(強制入院33%→50%・ヨーロッパは12%程度)で医療保護入院の件数が15年間で2倍に増加、精神科特例や在院日数の長期化など現状の整理をしました。

これらの状況を打開するための具体策として、海外との比較を行ったところ、長期入院の対策として、ベルギー・フランス・ドイツでは裁判官による審査を行い長期入院が減少傾向にあるのに対し、日本では書類だけでの判断が95%以上である状況に、判断の方法から変えていかなければならないと警鐘が鳴らされました。

■意見交換

後半では、登壇者からの補足や全体の話を踏まえた意見交換が行われました。

親の反対によって退院に結びつかず、死亡したことにより退院を迎えることになってしまった事例や、当事者自身が入院以前に、看護の勉強において身体拘束について学んだ際は疑問を持たなかったが、精神病院での入院を経験から実際に拘束される恐怖感など、実情が語られました。

私宅監置など昔からの法制度が、日本の今日の精神医療を形作っています。精神障害の苦しみだけにとどまらず、入院において拘束されるなどの経験は、その後の人生を変えてしまうほどの人権侵害であるという意見も上がりました。

今後の取り組み

総括所見を受けて強制入院、身体拘束、社会的入院の廃止に向け、障害者虐待防止法の改正をはじめ、障害者と関係者一丸となって取り組んでいく必要があることが確認されました。

愛知県重度障害者団体連絡協議会 柳原康来

参加者感想

今回、第11回DPI障害者政策討論集会の権利擁護分科会を参加させていただき、とても勉強になりました。
精神障害者は他の障害と変わらず、精神が病気を患うだけであると考えています。しかし、外見で分かる身体障害とは違い、気づかれにくく理解されにくいのが精神障害の特徴だと理解できました。

病院内で他害、自傷行為を行う患者に対して、他人を傷つけないために、一時的な拘束は有効かもしれません。しかし、すべての精神障害のある者を拘束するのは、科学を尊敬せず、人権を蔑む行為ではないでしょうか。また、電気ショック等も本人が望まない治療を強制することは人権侵害そのものです。

医療行為の名の下、隔離や拘束といった行為が、長年にわたり行われていること自体、異常であり、権利条約の総括所見や国際比較からも明らかです。

犯罪者でもなく、人を傷つけるようなことをしたわけでもないのに、何故このように不公平な扱いを受けなければならないのだろうか、疑問を感じました。今回の分科会のように多く精神障害者の声を社会に届ける必要があり、このことが精神障害者に対する差別や偏見をなくす、重要な取り組みと感じました。

日本福祉大学社会福祉学部 莫 易欽


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