障害者権利委員会から日本政府へ勧告(総括所見)が出されました! ~90項目以上改善するよう勧告されています~
2022年09月12日 障害者権利条約の完全実施
8月22-23日にスイスのジュネーブで、障害者権利条約の日本の建設的対話が開かれ、9月9日に権利委員会から日本政府へ勧告(総括所見)が出されました。
分離教育の中止、精神科への強制入院を可能にしている法律の廃止を求めるなど、日本の課題を的確に指摘したものです。第1条から 33条まで懸念と勧告がまとめられており、19条、24条は6項目もあります。合計で、懸念93項目、勧告は92項目、留意1項目、奨励1項目となっています。
正式な日本語訳は後日外務省から発表されると思われますが、取り急ぎ自動翻訳ソフトを使った日本語訳から、ポイントとなる勧告等を抜き出してみました。
【1~4条 一般原則と義務】
- 障害者代表組織、特に知的・心理社会的障害者(精神障害者?)との緊密な協議を確保することを含め、すべての障害者を他の者と同等に人権の主体と認める条約と、障害関連の国内法および政策を調和させること。
- 委員会は、締約国に対し、条約の選択議定書を批准し、条約第23条第4項に関連する解釈宣言を撤回することを奨励する。
【第5条 平等及び無差別】
- 障害者差別解消法を見直し、障害、性別、年齢、民族、宗教、性自認、性的指向、その他あらゆる状態を理由とした多重・交差的形態の差別、合理的配慮の否定を含め、条約に従い、障害に基づく差別を禁止すること。
- 障害に基づく差別の被害者のために、司法・行政手続を含むアクセス可能で効果的なメカニズムを確立し、包括的な救済を行うこと。
【6条 障害のある女子】
- 男女共同参画政策において、障害をもつ女性や少女に対する平等を確保し、多重的かつ交差的な形態の差別を防止するための効果的かつ具体的な措置を採用し、障害関連の法律や政策にジェンダーの視点を主流化すること。
【9条 施設及びサービス等の利用の容易さ】
- 障害者団体と緊密に協議しながら、政府のすべてのレベルにわたってアクセシビリティを調和させ、ユニバーサルデザイン基準を定着させ、特に建物、交通、情報通信、その他の施設やサービス(主要都市以外も含む)が市民に開放または提供されるように、行動計画およびアクセシビリティ戦略を実施すること。
【12条 法律の前にひとしく認められる権利】
- 代替的な意思決定体制の廃止を視野に入れ、すべての差別的な法規定と政策を廃止、支援付き意思決定メカニズムを確立すること。
【14条 身体の自由及び安全】
- 障害者の強制入院を、障害を理由とする差別であり、自由の剥奪に相当するものと認識し、実際の障害または危険であると認識されることに基づく障害者の強制入院による自由の剥奪を認めるすべての法的規定を廃止すること。
【17条 個人をそのままの状態で保護すること】
- 障害者団体と緊密に協力し、旧優生保護法における優生手術の被害者に対する補償制度を改正し、すべての被害者が明示的に謝罪され、適切に救済されるよう、すべての事例の特定、臨時補償、補聴・代替コミュニケーション手段、情報へのアクセスなどの支援手段、申請期間を限定しないことなどが確保されること。
【19条 自立した生活及び地域生活への包容】
- 障害児を含む障害者の施設収容を廃止するため、予算配分を障害者の入所施設から、障害者が地域社会で他の人と対等に自立して生活するための手配と支援に振り向けることによって、迅速な措置をとること。
- 精神科病院に入院している障害者のすべてのケースを見直し、無期限の入院をやめ、インフォームド・コンセントを確保し、地域社会で必要な精神保健支援とともに自立した生活を育むこと。
- 障害者団体と協議の上、障害者の自律と完全な社会的包摂の権利の承認を含め、障害者が施設から他の人と平等に地域社会で自立した生活に効果的に移行することを目指す、期限付きのベンチマーク、人材、技術、資金を伴う法的枠組みおよび国家戦略、ならびにその実施を確保するための都道府県の義務付けを開始すること。
【20条 個人の移動を容易にすること】
- 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」に基づく制限を撤廃し、すべての地域において障害者の自由な身の回りの移動を確保すること。
【21条 表現及び意見の自由並びに情報の利用の機会】
- 日本手話を国レベルの公用語として法律で認め、生活のあらゆる場面で手話へのアクセスとその使用を促進し、有能な手話通訳者の訓練と利用可能性を確保すること。
【24条 教育】
- 分離された特別な教育をやめる目的で、教育に関する国家政策、法律、行政上の取り決めの中で、障害のある子どもがインクルーシブ教育を受ける権利を認識し、すべての障害のある生徒が、あらゆるレベルの教育において、合理的配慮と必要とする個別の支援を受けられるように、特定の目標、時間枠、十分な予算で、質の高いインクルーシブ教育に関する国家行動計画を採択すること。
- すべての障害児の普通学校への通学を保障し、普通学校が障害児の普通学校を拒否することを許さない「不登校」条項と方針を打ち出し、特殊学級関連の大臣告示を撤回すること。
- 障害のあるすべての子どもたちが、個々の教育的要求を満たし、インクルーシブ教育を確保するための合理的配慮を保障すること。
【28条 相当な生活水準及び社会的な保障】
- 民間および公共住宅に適用される法的拘束力のあるアクセシビリティ基準を確立し、その実施を保障すること。
【29条 政治的及び公的活動への参加】
- 公職選挙法を改正し、選挙放送やキャンペーンなどの選挙関連情報の調整とともに、投票手続き、施設、資料が、すべての障害者にとって適切でアクセスしやすく、理解しやすく使いやすいものになるようにすること。
【31条 統計及び資料の収集】
- 障害者に関するワシントン・グループの質問集と経済協力開発機構(OECD)の開発援助委員会の政策マーカーを想起し、締約国が生活のあらゆる領域で、年齢、性別、障害の種類、必要とする支援の種類、性的指向と性自認、社会経済状況、民族性、居住地(居住施設と精神病院を含む)などの様々な要素によって細分化した障害者に関するデータ収集システムとデータ基盤を整備するよう勧告する。
【33条 国内における実施及び監視】
- パリ原則を完全に遵守して、人権の保護に関する幅広いマンデートと十分な人的、技術的および財政的資源を有する国内人権機関を設立し、その枠組みの中で、障害者政策委員会の正式能力を強化し、条約の実施を監視するためにそのメンバーの中で独立、障害の多様性の代表およびジェンダーバランスを保証することを勧告する。
全体を通じて、多数の項目で日本政府に対し障害者団体との緊密な協議を求めています。「Nothing about us , without us(私たち抜きに私たちのことを決めないで)」という合言葉の下に策定された権利条約の根幹とも言える理念が総括所見にも反映されています。
なお、権利委員会は日本政府に対し、次回は2028年2月20日までに定期報告の提出を求めています。報告には、今回の勧告が国内でどのように実施されたかという情報も含めるように要請しています。
DPIとしては、この総括所見を分析し、加盟団体をはじめ全国のみなさんにお伝えし、国内法制度のバージョンアップに取り組んでいきたいと考えています。
▽10月5日(水)に報告集会を企画しています。ぜひご参加ください。
10月5日(水)2022 DPI日本会議×CILイルカフォーラム 緊急報告「国連障害者権利委員会の総括所見」で示されたこと ~南の国からインクルーシブの風を届けます~
佐藤 聡(事務局長)
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