誰もが気楽にスポーツに親しめる場づくり総合推進事業第一回検討委員会が開かれました! (スポーツ施設におけるユニバーサルデザイン化等推進事業)
2022年07月28日 バリアフリー
スポーツ庁では本年3月に「第3期スポーツ基本計画」を策定し、「誰もがアクセスできる」ことを目標に掲げました。
地域において住民の誰もが気楽にスポーツに親しめる「場づくり」の実現として、この検討会が立ち上がり、スポーツ施設におけるユニバーサルデザイン化に関するガイドブックを作成することになりました。
検討会の構成員は、スポーツクラブの運営会社、行政の障害者スポーツセンター、スポーツ関連団体、設計会社、パラスポーツ関係者、学識研究者、当事者団体等 14人です。7月27日(水)に第1回検討会が開かれましたので概要をご報告します。
本事業の背景
スポーツ庁から以下の説明がありました。
- 我が国のスポーツ実施率はまだまだ低く、週1回以上の実施率は成人全体で56.4%に対し、障害者は31.0%と大きな開きがある。
- 東京オリンピック・パラリンピック大会の基本コンセプト「多様性と調和」、スポーツ力を活用して持続可能な社会や共生社会の実現に向けた取り組み(SDGs等)を通じて、あらゆる面での違いを受け入れて、互いに認め合う共生社会を育むことの重要性が改めて認識されている。
- 第3期基本計画で、今後5年間に取り組む施策として「スポーツを通じた共生社会の実現」を掲げ、障害者の週1回以上のスポーツ実施率を40%程度に引き上げることを目標としてスポーツの推進に取り組む。
- スポーツ実施の阻害要因・障壁が、障害者、女性、LGBTQ他多数にあり、スポーツ施設に関するユニバーサルデザイン化はまだ限定的である。
- 本事業は、スポーツを「する」場に着目して取り組む。
- 社会モデルの考え方に即し、政府はこれまで共生社会を目指すためにバリアフリー法、ユニバーサルデザイン2020行動計画などに取り組んできた。
といったことが報告されました。
ガイドブックの概要
- スポーツ施設における「ユニバーサルデザイン化」の推進のためのポイントを整理
- ガイドブックにとりまとめ、自治体や施設管理者へ普及啓発
- 優良事例等の資料の収集と整理。20事例選定し、現地調査とヒアリングを実施。視点として、①属性に応じた設備や対応、②施設内の場所ごとに求められる設備と対応、③スポーツ実施意欲向上につながる取り組み。
DPIからの意見
DPIからは以下の3点を要請しました。
① 施設のユニバーサルデザイン・バリアフリー化
東京オリパラの施設整備のために策定した「Tokyo2020アクセシビリティガイドライン」は、世界のバリアフリー整備基準であるIPCアクセシビリティガイドを踏まえて、多様な障害者が参画して策定したすばらしいもの。ぜひともこれを遵守してほしい。
② 主催者向けの施設運営のガイドライン
せっかくバリアフリー整備されても、主催者が施設を理解せずに運用することがある。例えば、国立競技場には介助犬トイレを作ったが、イベント時に行ってみるとゲートで塞がれて立ち入れなくなっていた。大阪のスタジアムでは、車イス席が沢山あるのに、ほとんど健常者の席として売ってしまい、障害者が利用できる数は少ない。このように、実際にイベントを実施する主催者が設備を理解していないので、必要な人に届いていない場合がある。主催者に向けた施設運営のガイドラインの策定も必要。
③ 利用資格・参加資格の見直し
私は手動車いすに乗っており、走るのが好きで、昔から市民マラソン大会に出たいと思って、いろんな大会を調べた。しかし、どこも車椅子は駄目とか、競技用車椅子じゃないと参加できないという規定があって、参加できない。参加できるものがあってもフルマラソンではなく、短い距離でつまらない。私も含めて普通の障害者は、競技用車いすはもっていない。マラソンのコースは階段なんかないから車椅子でも走れるのに、主催者が参加できないルールを作っている。これは物理的な問題ではなく、人間が作った社会的障壁。こういった障害者が参加できない参加資格を設けているのは、マラソンに限らず様々な大会や施設でもあるのではないか。
2021年に障害者差別解消法が改正され、数年後には民間も含めて合理的配慮が義務化される。一律に障害者を排除するのではなく、どうやったら障害者が参加できるようになるかを考えることが、これから求められていく。施設のユニバーサルデザイン化とともにルールの見直しも項目に入れてほしい。
まとめ
今後は、8月、11月、2月に検討会が開かれ、今年度中にガイドラインがまとめられます。DPIは運動団体ですが、障害者運動の方ですので、これまでスポーツとは縁遠く、スポーツ庁とのお付き合いは今回が初めてでした。スポーツマンでない私が検討会に入っているのはちょっと場違いな感じもしましたが、スポーツを通したインクルーシブ社会の実現というのも大切な視点だなと感じました。
東京オリパラで「多様性と調和」が基本的なコンセプトに掲げられ、バリアフリー整備も進展しています。これを全国の地域の施設にも広げ、障害者を排除する規定も見直していくことは、大切な取り組みだと思いました。積極的な働きかけを行い、ぜひとも良いガイドブックを作成したいと思います。
報告:佐藤 聡(事務局長)
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