今年度の活動方針を公開します
2022年05月31日 お知らせ
DPI日本会議は、今年度下記の活動方針に基づいて活動を続けてまいります。
詳細は、下記ご覧ください。
1.障害者権利条約の完全実施
2.地域生活
(1)総合支援法改正に向けた取り組み
(2)施設入所・社会的入院の解消に向けて
(3)重度訪問介護の拡大とシームレス化等の積み残し課題への取り組み
3.交通・まちづくり
(1)東京オリパラのレガシーを発展させる最重要3課題の取り組み
(2)駅無人化問題への取り組み
(3)その他の課題
4. 権利擁護
(1)差別解消法改正に向けた取り組み
(2)施設入所・社会的入院を解消する
(3)権利条約総括所見に基づく法制度改正に向けて
(4)精神障害者の人権と地域生活の確立
(5)DPI障害者差別解消ピアサポートとの連携
5. 教育
(1)法令の改善等に向けた取り組み
(2)地域での取り組みと関係団体との連携
6. 雇用・労働・所得保障
7. 障害女性
1.コロナ禍やポストコロナ禍における障害女性の困難について
2.複合差別解消に向けて
3.優生保護法下の強制不妊手術被害者による国賠訴訟裁判について
4.「性と生殖の権利(リプロダクティブヘルス&ライツ)」の正しい理解に向けて
5.建設的対話(審査)に向けて
8. 国際協力
(1)国際レベルでのDPIによる誰一人取り残さない体制の構築
(2)アフリカ地域の自立生活推進の強化
(3)SDGs実施での障害施策の強化
9. 尊厳生
10. 優生保護法と優生思想
11. 欠格条項をなくす
12. コロナ禍への対応
13. 文化芸術
14. 次世代育成
各事業、組織について
◯広報・啓発
◯普及・参画
(1)加盟団体への支援、ネットワーク強化に向けて
(2)講師派遣、点字印刷
(3)DPI 障害者政策討論集会
◯権利擁護に関する事業
(1)DPI障害者差別解消ピアサポートの体制強化
(2)権利擁護部会との連携の強化
(3)差別や虐待実態の把握と新たな施策の基礎資料づくり
◯組織体制整備
(1)会員および支援者の増大にむけて
(2)事務局の体制整備について
(3)財政および予算執行について
◯部会とプロジェクト
2022年度活動方針全文
Ⅰ.活動方針
1.障害者権利条約の完全実施
(1)国内法整備等
2021年に引き続き、DPIとして三法と位置付けている「障害者基本法」、「差別解消法」、「障害者虐待防止法」の改正、インクルーシブ教育の実現のための法整備、脱施設・地域生活の確立のための総合支援法等の法制度の見直し、成年後見制度の見直しなど障害者関連法制度全般について、権利条約に則した見直しに向けた活動を行う。
まず、差別解消法については、第204回国会の改正法の成立をうけて、関係団体と協力しながら、基本方針の改定に向けて強力な運動を展開する。法の対象や差別類型、ワンストップ窓口の設置など相談体制の充実などを勝ち取ることを目標とする。それに続く対応要領、対応指針の改定についても同様に取り組んでいく。また、施行時期についても可能な限り早期の施行を目指して運動を展開する。そして、こうした改正差別解消法への運動を基本法改正につなげるために、関係団体、政策委員会等で取り組んでいく。
障害者虐待防止法の改正については、厚労省との意見交換や研究者や団体関係者を交えた学習会の開催などを通して、改正の実現に向けて引き続き取り組んでいく。
そのほか、障害者権利委員会が進める脱施設の動きを総合支援法の改正に反映させるための運動を展開し、脱施設・地域移行をさらに推し進める。また、インクルーシブ教育の実現などの重要課題も、「DPIビジョン2030」に則した形でそれぞれ取り組んでいく。さらに、2020年に起きた知的障害のある女性が就労支援施設のトイレで、一人で出産し子どもを死なせてしまった事件で、この女性に執行猶予付きの有罪判決が出されたことをうけて、障害のある女性の性と生殖に関する健康と権利や、障害のある人が性別や年齢に適した性に関する情報と、性教育を受ける機会を保障することを権利条約8条(意識向上)に則して取り組んでいく。
(2)権利条約の完全実施等
2022年の第27会期(8月~9月)障害者権利委員会において、日本政府の最初の国家報告書に対する建設的対話(審査)が予定されている。コロナ禍の状況を踏まえつつ、ジュネーブにおける対面でのロビー活動も見据えながら、私たちが望む総括所見を勝ち取るために最大限の努力を行う。事前質問事項の政府の回答において問題となった部分も含め、総括所見にどのように反映させるか、建設的対話のためのロビー活動のための資料作りなどの準備を行う。また、諸団体との連携や調整も進める。さらに、障害者権利条約推進議員連盟に対して、議連総会の開催など、建設的対話に積極的に取り組むように働きかける。
次に、総括所見を国内に広め、権利条約の目指す政策を勝ち取るための運動を展開する。日本政府に出された総括所見を整理し、課題を共有し、「DPIビジョン2030」のバージョンアップを行う。それをもとに、国や地域における運動の柱とするために、政策討論集会も含め、全国的に報告集会を開催する。また、各部会での取り組みにおいて総括所見を最大限活用しながら、権利条約の国内での完全実施をめざす。
2.地域生活
2030年までに脱施設の法制化を実現させるために、2022年の秋に障害者権利委員会から出される見込みの総括所見及び「脱施設ガイドライン」を活かした取り組みを展開していく。隔離、分離といった負の歴史に戻ることなく地域移行が促進されるための具体的仕組みを総合支援法の改正案の中に組み込むべく、関係団体との連携を維持強化して国会、自治体への積極的な働きかけを行う。
(1)総合支援法改正に向けた取り組み
2021年度から社保審障害者部会で検討されてきた総合支援法の見直しの議論は、2022年6月に取りまとめられ、秋の臨時国会もしくは2023年1月からの通常国会に改正法案が上程される見通しである。DPIは2021年度に引き続き関係団体と連携し、3月から6月にかけて鹿児島、高知、大阪、埼玉で行われる地域フォーラム及び5月の滋賀でのアメニティーフォーラムにおいて、4団体共通の要望と提案を国会議員、厚労官僚等に働きかけ、総合支援法の改正案の中に反映させられるよう努める。
提案の主軸は、地域生活支援拠点の強化策で、地域移行に特化した専門職として地域移行コーディネーター(仮称)の地域側、施設・病院側双方への配置、地域移行支援金(仮称)、暫定支給決定、自立生活体験室の設置等を含む、地域移行パッケージと、このパッケージの財源として地域生活移行及び地域生活基盤整備のための基金(仮称)の新設である。
(2)施設入所・社会的入院の解消に向けて
権利擁護部会等と連携し2020年12月に発足したDPI地域移行戦略会議を継続し、2021年度の日本財団助成事業「withコロナ時代のオンライン地域移行支援制度モデル構築事業」の報告書及び権利委員会による総括所見とコロナ禍における脱施設ガイドライン等の活用方法を検討し、政策討論集会等で提案していく。更に脱施設ガイドラインを活かしてキャンペーンを展開する。
(3)重度訪問介護の拡大とシームレス化等の積み残し課題への取り組み
雇用・労働部会等と連携し、2020年10月から始まった「雇用施策との連携による重度障害者等就労支援特別事業」の課題を明確にし、次回(2024年度)の報酬改定時に重度訪問介護、同行援護、行動援護の告示の改正(通勤通学、就労就学時の利用不可条項の撤廃)の機運を高めていく。
併せて、医療的ケア児等の障害児及び行動関連項目10点未満の知的、精神障害児・者にも重度訪問介護の利用対象の拡大を求める。また、まだ課題の残るヘルパーの運転、区分4、5の人の入院中の利用、支給決定の市町村格差、65歳問題(介護保険対象者)についても運用の見直しを求め続ける。特に自治体の独自運用により必要な支給量が確保されない問題について、DPIとして関係団体とも連携しながら実態調査の実施を含め取り組んでいく。
3.交通まちづくり
(1)東京オリパラのレガシーを発展させる最重要3課題の取り組み
2021年に引き続きこれまで進展のなかった分野に力を注いでいく。下記3点を最重要課題と位置づけ、2022年3月に斉藤鉄夫国交大臣に要望し、取り組みを始めた。
① 東京オリパラで実現したバリアフリー整備の義務基準化
東京オリパラの成果は、世界のバリアフリー整備基準の導入(Tokyo2020アクセシビリティ・ガイドライン)と、当事者参画の2つである。大会会場となったスタジアムの整備は、世界最高水準のバリアフリー整備が実現したが、大会後に地方で建築されているスタジアム等には、このいずれも反映されていない。バリアフリー法の義務基準になっていないために、全国に広がっていないのである。東京オリパラの成果を全国に広め、次世代につないでいくためにも、Tokyo2020アクセシビリティ・ガイドラインを義務基準に反映させることと、大規模な施設整備には必ず当事者参画を実現するように当事者参画のシステム化を求めていく。
② 最低基準の引き上げ
現在、多くの基準は、エレベーターは11人乗り以上、バリアフリートイレは1以上、車いす使用者用駐車スペースは1以上となっている。しかし、いずれもニーズが拡大し、この基準では対応できなくなっており、最低基準の引き上げを求めていく。
③ 小規模店舗のバリアフリーの推進
2021年春にガイドラインが出来たが、実際に新規店舗はどのくらい反映されているのか実態調査を求めていく。その結果を踏まえて、実効性のある施策の実施を働きかける。
(2)駅無人化問題への取り組み
2020年度から始まった意見交換会の中間とりまとめでは、乗務員によるスロープ介助の実施、駅舎のバリアフリー整備の推進が盛り込まれた。2022年度はガイドラインの作成が予定されているが、引き続き、基本は有人とすること、乗務員のスロープ介助の実施駅の拡大等を求めていく。
(3)その他の課題
2018年の法改正で、当事者による評価の仕組みとして中央に移動等円滑化評価会議、全国10か所に地域分科会が設けられた。地域分科会は実質的に年1回の開催にとどまり、評価や地域の課題の議論ができていない。複数回実施し、実行力のある仕組みになるように引き続き働きかけていく。
共同住宅のバリアフリー基準の見直しを求めてきたが、1月から「高齢者が居住する住宅の設計に係る指針の見直し等に関する検討会」が始まった。この中で、高齢者の指針の見直しとともに、障害者が居住する住宅のガイドラインも策定することになっている。いずれの基準でも積極的に意見提起し、障害者が居住できる共同住宅等を増やすために適切なガイドラインを策定する。
劇場等の客席については、バリアフリー法上の対象施設に入っていなかったため、これまでは条例で基準を設けることが出来なかった。しかし、国は今春に『「劇場等の客席」の建築物特定施設への追加』を行い、今後は条例で上乗せして客席基準を設けることが出来るようになった。加盟団体と連携し、各地の委任条例の策定・改正の運動を進めていく。
この他にも、第208回国会で成立が見込まれる「障がい者情報アクセシビリティ・コミニケーション施策推進法案」を踏まえた情報アクセシビリティの取り組みの拡充、自治体での策定が進まないマスタープラン・基本構想を加盟団体と連携して策定を広めていくこと、UDタクシーの乗車拒否の撲滅と大型の車いすもスムーズに乗降できる新型車両開発への働きかけ、導入が始まっている空港アクセスバスのチェック、駅ホームの段差と隙間の解消の推進、痴漢やストーカー被害を誘発している駅アナウンスの中止、建て替えが予定されている明治神宮野球場と秩父宮ラグビー場の当事者参画のバリアフリー整備、大阪・関西万博を契機とした関西地区のバリアフリー整備への支援等に取り組んでいく。
4.権利擁護
DPIビジョン2030「脱施設及び社会的入院解消を進め、障害を理由とする差別や虐待がない社会を創る」ことを目標に、差別解消法改正および施設入所等、社会的入院の解消に関する活動を中心に取り組みを行う。
(1)差別解消法改正に向けた取り組み
現在、内閣府では基本方針の見直しについて、議論が行われている。基本方針とは、政府がこの法律をどのように運用し、差別解消に向けた取り組みを行うかを明記した重要なものである。多くの障害者団体からはワンストップ相談窓口の設置を求める意見が出されているものの、政府は消極的な姿勢を見せており、DPIとしてワンストップ相談窓口の設置を強く求めていく。
他にも差別の定義、法の対象範囲、障害女性の複合差別等の重要課題を盛り込めるかが焦点となっている。
改正法施行期日は「公布の日(令和3年6月4日)から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日」とされており、現在も確定されていない。障害を理由とした賃貸住宅入居の拒否等、多くの差別が発生、放置されているため、一日も早い施行を求めて、政策討論集会等での情報提供および必要に応じて院内集会等の開催を行っていく。
(2)施設入所・社会的入院を解消する
施設入所・社会的入院は重大な人権侵害であることを改めて認識し、地域生活部会等と連携し、権利条約と日本の障害者施策との大きな乖離を明らかにし、関係法律整備の足掛かりとする。
(3)権利条約総括所見に基づく法制度改正に向けて
権利条約の総括所見に基づき、3年後見直し規定があるにもかかわらず放置され続けている障害者基本法および障害者虐待防止法の改正、さらに成年後見制度の見直しに向けた、機運を高めていく。
(4)精神障害者の人権と地域生活の確立
今後、障害者権利委員会の総括所見の中で、社会的入院に代表される日本の精神医療の劣悪さ、近年はコロナ禍による精神病院での大規模クラスターが発生、治療もされず放置され多くの命が奪われるなど、障害者への著しい人権侵害が大きく問われることは明らかである。
また、2021年に行われた日弁連の人権大会での、強制入院をなくしていくという決議を受けてこうした問題を解決するために、精神医療を一般医療体系に組み込むこと、以下の三点(①身体拘束・隔離、②本人の同意のない入院、③電気ショックや抗精神病薬に頼る診療)を無くすこと、福祉サービス等地域基盤整備や所得保障の充実を求めること、他の診療科で受診を拒否される要因となっている法制度の改正を目指し、精神障害当事者の登壇による院内集会の開催や、DPI障害者差別解消ピアサポートに寄せられる差別事例に丹念に取り組む。
(5)DPI障害者差別解消ピアサポートとの連携
DPI障害者差別解消ピアサポートと連携し、相談事例を共有し、事例の集積・分析を行い、関係法令の改正のための基礎データとして活用していく。
5.教育
障害のある子どももない子どもも地域の幼稚園・保育園、小・中学校の通常学級、高校、専門学校・大学等で共に学び育つインクルーシブ教育の仕組みを作り、実践を推し進めるための活動を行う。
引き続き改正バリアフリー法による小・中学校のバリアフリー化実現に向けた取り組みを進める。また地域の学校を原則就学先とする就学決定のあり方、教育の場における差別解消法上の不当な差別的取り扱いの禁止や合理的配慮の獲得の推進、障害に基づくハラスメントの防止といった課題に対する、政府や国政レベルでの活動とともに、地域の活動についても積極的に支援を行う。
(1)法令の改善等に向けた取り組み
権利条約第24条が求めるインクルーシブ教育について、建設的対話(審査)が行われるにあたり、その前後に教育分野の学習会等を行う。総括所見が出た後については、それが日本の教育分野の法令をどのように変えられるか、また現場の教育実態をどう変えられるかという視点のもとに取り組みを進める。
また同時に文科省の初等中等教育局関連では、分離選別をいまだに促進する特別支援教育の問題点を集約し、改善に向けた取り組みを行っていく。「新しい時代の特別支援教育の在り方に関する有識者会議」をもとに出された「障害のある子供の教育支援の手引」や「特別支援学級及び通級による指導の適切な運用について(通知)」への問題提起を含め、文科省担当者との意見交換も行っていきたい。また引き続き、学校バリアフリーに係る動きには注視し、事務連絡に示された「事例集」の作成や、全国的な進み具合などについて、働きかけを続けていく。
これらの取り組みについて、引き続き公教育計画学会等関係団体との連携を図っていく。
(2)地域での取り組みと関係団体との連携
各地の小・中学校における医療的ケア児の看護師配置・保護者付き添いの状況、就学指導のあり方や合理的配慮の実態、差別発言等不適切な対応、高校入学における定員内の不合格問題等、加盟団体、教育研修参加者等を通じて把握し、制度を変更する取り組みに結びつける。また、障害に基づく様々なハラスメントに対応できる知識について、障害者自身が学校教育でどのように得られるか、精神障害を含めた障害理解がどの程度進められているか等について、関係団体等と意見交換をしつつ、その実態と課題について把握するよう取り組みたい。
教職員への障害者の採用・人事配置については、「障害のある教職員ネットワーク」と引き続き連携をとりながら運動を展開していく。
2016年度から開始した「インクルーシブ教育推進フォーラム」を、2022年度も開催し各地のインクルーシブ教育の拡充・啓発を進める。
バリアフリー法が改正され、地域の小・中学校を2025年度末までに「緊急かつ集中的に」整備することがインクルーシブ教育を実現する環境整備、社会モデルの考え方を広げる機会と捉え、要望書を作成し提出する等、各地で要請行動を呼びかけ、JIEPとも共同しつつ地域の団体と取り組みを進める。
障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法の制定を見据え、視覚や聴覚に障害のある児童生徒に必要な環境整備について、情報収集に努める。
また若い障害者がインクルーシブ教育への理解を深め、運動の主体となるための取り組みとして教育研修を2022年度も行う。参加者が各地の教育課題に継続的な関わりを持ち、深めていくことができるようになるよう、内容を検討する。また近年の参加者が何らかの形で、運動に関わっていくような仕組みについても模索していきたい。
さらに2022年度も、地域でともに生きともに学ぶ取り組みを進める団体との交流を進めていく。
6.雇用・労働・所得保障
(1)雇用・労働
DPIは、障害者雇用については権利条約に基づく平等性と労働者性を確保し、障害の有無や種別及び程度等に関わりなく共働できる職場・雇用及び労働環境を実現するために取り組む。
そのために厚労省の検討状況を注視するとともに関係団体との連携を強化し対策を進める。
具体的な取組み課題として、一般就労については、募集、採用試験、採用後、退職および退職後等、障害者があらゆる場面において障害のない人と同等の機会、処遇を確保するとともに、障害に基づく差別の禁止と合理的配慮を確保し、働き続けることができるための労働条件と労働環境を整備すること及び除外率制度と除外職員制度を撤廃するために取り組む。併せて、2019年に改正された障害者雇用促進法の附帯決議を実現するために関係団体等との連携を深めて取り組む。
一般就労、福祉的就労及び第三の働き方とされる社会的企業及び社会的雇用などの課題については、「障害者の安定雇用・安心就労の促進をめざす議員連盟(インクルーシブ雇用議連)市民側」と連携して就労支援・継続事業の課題改善と社会的企業及び社会的雇用・就労等、多様な働き方の制度化に向けて取り組む。また、新たな課題である「法定雇用率達成代行ビジネス」に関するDPIとしての正式見解等を確認することが必要である。
国際的には、国連が定めた「ビジネスと人権に関する指導原則」を受けて日本政府が「行動計画(NAP)」を策定し、その実施と充実を求める「ビジネスと人権市民社会プラットフォーム(BHRC)」の幹事団体として参画し、障害当事者の視点から情報保障、介助者等の支援の確保に関して取り組む。
なお、全国集会においては、分科会テーマ「法定雇用率達成代行ビジネスの現状から障害者雇用の意義と課題を考える。」及び7月以降に「障害者雇用・労働フォーラム2022」を開催する。
(2)障害者の所得保障の確立
権利条約第19条の「自立した生活および地域社会への包容」に基づき、障害者の地域生活の保障や施設や病院での長期入所・入院を余儀なくされてきた障害者の地域移行を促進するために、以下の取り組みを関係団体と連携して継続的に進める。
①「1型糖尿病 障害基礎年金訴訟」への支援行動と年金制度の見直しを求める。
② 障害基礎年金を障害者の生活維持が可能な水準への引き上げを求める。
③すべての無年金状態にある障害者の解消を年金制度改正により求める。また、当面は、「特定障害者特別給付金制度」の改善を求める。
④ 特別障害者手当の支給要件等の見直しと「地域生活支援手当(仮称)」の創設を求める。
⑤ 生活保護基準引き下げ訴訟(いのちのとりで裁判)を注視する。
なお、1型糖尿病障害年金訴訟については年度内に結審の見込みである。
7.障害女性
(1)コロナ禍やポストコロナ禍における障害女性の困難について
2020年から女性ネットにおいてメールや電話やオンラインでの事例収集が行われてきた。今後も引き続き連携して情報収集や分析に努め、障害女性が適切な医療やサービスにアクセスできるよう適時要望行動を行う。
(2)複合差別解消に向けて
障害者基本法をはじめとする国内の法制度における複合差別解消の課題記述や施策や計画の策定実施に向けて、引き続き、政策委員会の各委員に働きかけていく。
(3)優生保護法下の強制不妊手術被害者による国賠訴訟裁判について
本裁判での完全勝訴を勝ち取り、国による謝罪と補償を実現させ、立法機関と行政が、優生思想のないインクルーシブ社会の実現に向けて実効性のある施策を実現するよう働きかける。
(4)「性と生殖の権利(リプロダクティブヘルス&ライツ)」の正しい理解に向けて
性と生殖の権利の理解が正しく広がっていくことは、社会から優生思想をなくしていくための基本である。障害の有無、障害の種別、セクシュアルアイデンティティーの違い等を超えて、性と生殖の権利について学びを深める活動を2022年度も展開していきたい。
(5)建設的対話(審査)に向けて
2022年8月に予定されている権利委員会での建設的対話(審査)に向けて、JDFパラレルレポート作成メンバーとして、障害女性の課題の可視化と解決に引き続き取り組んでいく。
いずれも、女性ネットと連携して取り組んでいく。
8.国際協力
1981年に誕生したDPIの最初のメッセージは平和についてであった。紛争・戦争はいまだに絶えることなく、障害者を生み、苦しめている。人間の安全保障で欠くことのできない障害者をその障害の程度や種別に関係なく、取り残さない活動を続けていく。
(1)国際レベルでのDPIによる誰一人取り残さない体制の構築
- 世界レベルでのDPIの体制統一のため進めてきたDPIユナイテッドを、再び「われら自身の声」として結集できるよう統合調整委員会に協力する。継続して事務局に運営スタッフを提供するほか、国連本部で毎年開催される権利条約締約国会議のサイドイベントの運営にも協力したい。
- 韓国DPIによるDPI第10回世界会議開催準備に協力し、韓国DPIとの連携も密にする。世界会議の意義や世界の障害と開発の現状の勉強会などを会議準備の一環とし、国内の運動と繋げていきたい。
- DPIアジア太平洋ブロック評議会は、DPI日本会議が業務委託したディーディー・コンサルティング社が事務局を代行する形態で事業を継続する。アジア太平洋障害者の十年の2022年終了に合わせ、ESCAPはジャカルタで最終年評価会議を予定している。対面での開催の可能性が高く、代表を派遣し当事者側からの討議に参加したい。
- 韓国、中国、モンゴル、日本の四か国の枠組みでの北東アジア小ブロックへの北朝鮮の参加を、韓国の意向を尊重し進めていく。
(2)アフリカ地域の自立生活推進の強化
- 南アフリカでのJICA草の根事業「障害者自立生活センターの拡大と持続的発展」のMOU(基本合意書)の締結を行い、プロジェクトの開始にこぎつける。スタッフの変更等があったハウテン州の自立生活センター2か所とのつながりを現地訪問により強化し、プロジェクトの円滑な実施に繋げる。
- 南アフリカでの自立生活センターの存在は、まだあまり知られていない。プロジェクト関係者やJICA課題別研修の元研修生とのセミナーの開催や、また彼らのWIDのセミナーや会議への参加を促したい。
- 元研修生や南アフリカプロジェクト関係者の早世が続いている。衛生知識の啓発や医療整備の要求も、IL運動と繋げていきたい。
(3)SDGs実施での障害施策の強化
- SDGsの「誰一人取り残さない」のテーマのもと、障害問題がさらに重要課題と認識されるように努める。具体的には、政策提言を重視するSDGsジャパンの中で、障害ユニットやビジネスと人権ユニットだけでなく、教育やジェンダー、保健などのユニットで提言できるようにする。
- 国際協力が中心となりがちなSDGsジャパンでの人権の討議を、権利条約と結びつける。それによって、2030年のSDGs達成期限までにSDGsを権利条約の実施に取り入れ、国際協力活動の強化に努めたい。
9.尊厳生
引き続き尊厳死法制化の動きについては常に注視し、動きが見られた場合に反対の意を表明する。また法制化によらず、透析や人工呼吸器、経管栄養等の生命維持に必要な装置の停止のための倫理が広がりつつある、終末期医療におけるACP(事前ケア計画)を根拠とした「延命」治療の制限拡大の動向に注意を払うとともに、生きるための患者の権利法の制定を求めていく。
コロナ禍で明らかになったトリアージや人工呼吸器の配分に関するルール策定を進める動きに関しては、2022年度も引き続き取り組む必要がある。コロナ禍での障害者の医療を受ける権利に関するオンライン学習会の他、諸外国の動きにも着目しながら、状況にあわせて学習会を行う。生命に価値基準や優劣を付けようとする動きにストップをかける活動を続け、ステークホルダーを巻き込みながら、尊厳死法制化に反対する世論の醸成にもつながる新たな動きを形成していきたい。
その他、2021年に亡くなった海老原常任委員が直面した医療の格差問題(常時医療を必要とする障害者の生存に必要不可欠な医療と介護を、適切な時期に受ける権利及びそれらを知る権利)などについても今後検討していきたい。
10. 優生保護法と優生思想
優生保護法裁判は、いよいよ最高裁判所の審理へと舞台が移るが、各地裁や高裁で結審・判決もなされる予定である。大阪・東京高裁で除斥期間という高い壁を打ち破って勝訴したことは、少なからず影響することと考えられ、一時金支給法改正に向けた動きも期待される。
被害者への早急の謝罪・補償が行われ、調査・検証が進むよう、2.8全国集会実行委員会でつながった全国の支援者とのネットワークに参画、被害者・家族の会、全国弁護団と連携し、大きな社会運動として展開していけるよう推進する。
また、生殖医療に関する法律や検討会などの審議において、障害者が排除されるような動きがないかを注視していく。
- 優生保護法全国市民活動ネットワークに、構成団体として参画する。
- 地域の裁判傍聴や支援する会、集会等に積極的に参加する。
- 母体保護法下での優生手術被害者の尊厳回復に向けて取り組む。
- 権利条約の建設的対話において効果的なロビイングを行い、総括所見で強い勧告が得られるように働きかける。
- 出生前検査や着床前検査を含めた生殖医療において、優生思想を助長する動きがあった場合には、関係団体とも広く連携をしながら反対の取り組みを進めていく。
以上の活動を通じて、相模原障害者殺傷事件に象徴される障害者排除が繰り返されることのないように、また、生きることを諦めざるを得ない障害者が再び現れることのないように、優生思想の歴史に終止符を打つことを目指す。
11.欠格条項をなくす
2022年度も引き続き、障害者欠格条項をなくす会と連携して、障害者が直面している欠格条項に関する諸問題に取り組む。
- 第5次障害者基本計画の中での重要テーマとして、制度上の社会的障壁の典型である、障害を理由とした欠格条項の見直しへの取組が盛り込まれるように働きかける。
- 同様に、差別解消法の基本方針の改訂にも取り組み、かつ、実行を伴うように働きかける。
- 「資格取得試験等における障害の態様に応じた共通的な配慮について」(2005年11月9日 障害者施策推進課長会議決定)が、差別解消法等の改正を反映し配慮事項を明確にして改訂されるように取り組む。個別の試験要綱も見直し改訂を要請していく。
- 2021年度に実施した「障害を理由とした欠格条項にかかわる相談キャンペーン」活動の成果をまとめる書籍を年内に出版する企画がある。
- また、欠格条項等に関する情報共有・情報交換の場とするなど、メーリングリストを有効に活用し、欠格条項をなくす運動に繋げていく。
12.コロナ禍への対応
2021年度と同様に、差別や排除、分断されることのない感染予防対策や検査体制、ワクチン接種、コロナに感染した場合の医療へのアクセス、障害福祉サービス等が滞りなく利用できるよう、引き続き取り組んでいく。
また、DPI事務局として、職場内や集会開催時における感染予防対策についても、その時々の感染状況、変異株の影響などを踏まえながら、引き続きマスクの着用、こまめな消毒、3密の回避、オンラインツールの活用など基本的なコロナ対策を徹底していく。
13.文化芸術
どのような障害があっても誰でも入れる、楽しめるインクルーシブな文化芸術作品の鑑賞機会を増やしていくために引き続き、コロナ禍の情勢を注視しつつ、「どんな障害があってもみなで同じ時間と空間を共有して楽しむ」というコンセプトによる映画上映文化祭を開催する。
「オリパラ全国ネット」が一区切りとなり、新たに発足した「障害者の文化芸術活動を推進する全国ネットワーク」に引き続き参加する。特に、今後改正差別解消法による事業者の合理的配慮義務化を念頭に置き、オリパラのレガシーを引き継いで「文化芸術分野における合理的配慮とそのための環境整備」が進むよう取り組みを進めていきたい。
とりわけ、「大阪・関西万博」に関して、ハード面はもちろん、展示・催事などコンテンツ、プログラムにおけるユニバーサルデザイン・バリアフリー化が進むよう、障害当事者としての意見提起を進めていく。こうした実践的な取り組みを通じて文化芸術分野における必要な環境整備や合理的配慮についてさらに深め、インクルーシブ社会の実現につなげていきたい。
14.次世代育成
若手メンバーの実践の場として「差別解消法プロジェクト」を2022年度も継続して取り組む。春から政策委員会で基本方針の議論が始まる予定で、これに合わせて意見書の作成等に取り組む。2019年度に収集した差別事例を基に、基本方針等に盛り込むべき事項をまとめ、働きかけを行う。また、若手メンバーのフォローアップとして、少人数での勉強会や意見交換なども実施する。
Ⅱ広報・啓発事業
ホームページ、SNSでの情報発信に引き続き注力する。権利条約や国内の障害者関連法制を分かりやすく解説をしたコンテンツをまとめ、活動報告だけではなく、有益な資料を提供できるようにする。また既にあるコンテンツの定期的な見直しを進め、より分かりやすく見やすいウェブサイトにするよう努める。またバナー広告の新規獲得も引き続き目指す。広報・啓発事業全体として、様々な広報活動を企画・検討・追求し、DPIの活動・問題意識をより社会へ広め、支援者を一人でも多く増やしていく。
中長期的な行動計画である「DPIビジョン2030」については、短期目標であった2024年が来年に迫っているので、総括所見に即した進捗の確認と見直しを行う。また、SDGsに対してDPIが掲げた各目標に対する取り組みについても改めて検討と見直しをしていく。
「メールマガジン」については、「ホームページにアクセスせずに情報を得たい」という声もいただいたことからホームページの更新にあわせて積極的に発行していく。特に、毎月初めの定例として、「ここに注目!メールマガジン」を発行し、各部会の活発化のためにも継続して発行をする。
「オンラインミニ講座」は、そのときどきの旬なトピックについて集中的に発信をしていく。
活動内容の紙媒体での発信については、賛助会員をはじめとした対象へ、ホームページの内容を凝縮させた「DPI通信」を発行し、紙媒体での情報発信にも力を入れる。
普及・参画
1. 加盟団体への支援、ネットワーク強化に向けて
2022年度もオンラインを活用したDPIフォーラムやタウンミーティングを実施する。部会ごとの企画等も積極的に展開する。最新の情勢を報告し、DPIビジョン2030と取り組みについて討議する。DPIフォーラムやタウンミーティングを通じて、DPI加盟団体との関係をより一層強化し、一体となった運動展開を目指す。さらに、夏に予定されている建設的対話(審査)をうけて出される総括所見を活用し、障害者基本法と障害者虐待防止法の改正を始めとする法制度の拡充を目指し、DPI加盟団体と連携した運動を展開する。また、各地で取り組まれている条例づくりへの支援、各種講師の派遣も実施し、ネットワークを強化し、さらなる運動の展開を図る。
2. 講師派遣、点字印刷
引き続き、各地の障害者等が主催する学習会や集会に対し、権利条約や障害者制度改革および差別解消法・差別禁止条例、総合支援法等をテーマとした講師派遣を積極的に行う。
また、点字印刷物の作成については、依頼に対し柔軟に応じ、視覚障害者への情報保障を担い、関係団体・個人への広報活動も積極的に行う。
3. DPI障害者政策討論集会
第11回政策討論集会は、11月26日(土)、27 日(日)にオンライン形式で開催する。本集会はDPIとしての政策方針と活動の検証を行う場として、重要な機会となっている。今後予定されている権利条約に基づく建設的対話(審査)を見据え、地域での自立生活、インクルーシブ教育、成年後見制度、精神医療のあり方など現状の問題を検証し、今後より一層の取り組みを進めていく。
権利擁護に関する事業
今後目指すべき「障害者権利条約の完全実施」に向けて、国内法の一つ、差別解消法の見直しに貢献できる体制でありたいと考え、2020年度より体制を一新した。2021年度よりテレワーク環境が整ってきた状況から2022年度の方針として下記の諸点をあげる。
(1)DPI障害者差別解消ピアサポートの体制強化
名称をDPI障害者差別解消ピアサポートとして改め、障害者差別および虐待に関すること、及び、合理的配慮に関することに集中して対応する。相談員相互の情報共有を密に図るため、組織内研修を定期的に行う。相談体制の安定化を図るために、総務、労務管理を可視化する。
(2)権利擁護部会との連携の強化
権利擁護部会長である辻直哉事務局次長を所長に迎え、常任委員会への報告等を充実するとともに、全国各地の障害当事者が運営する各種センターや運動団体との連携を深める。
(3)差別や虐待実態の把握と新たな施策の基礎資料づくり
障害者差別や虐待に関わる内容の分析を、差別解消法プロジェクトチームと連携して行う。また、既存の福祉サービスでは対象にならず、社会的に排除されている障害者への相談強化に取り組み、構造的な差別を明らかにし、新たな制度・政策の資料を作成する。
組織体制整備
1.会員および支援者の増大にむけて
様々な情報発信媒体(ホームページ、Facebook、メールマガジン)を活用し、多様な層への情報発信を進め、さらに広く活動を届け、ひとりでも多くの方に興味を持っていただけるようにする。
近年導入しているクレジットカード決済から賛助会員に登録してくださる方が増えていることから、より一層使いやすく、寄付のしやすい環境整備をすすめ、上手に活用していく。様々な形を駆使し、DPIの活動への理解と周知を得て、加盟団体のない地域における正会員、賛助会員、寄付や支援を獲得できるよう努めていく。
2.事務局の体制整備について
コロナ禍における感染拡大防止対策のため、引き続き在宅勤務と事務所勤務を併用していく。特に、事務局員内での情報共有やコミュニケーションをこれまで以上に丁寧に行うことが大切であるため、クラウドの活用やzoomを利用していく。また、DPIの役割、ならびに求められる業務内容の複雑・多岐化に対応すべく、事務局内の体制を見直し、引き続き事務局体制および環境整備等を行う。
3.財政および予算執行について
DPIの運動の周知および安定的な財源確保のため、加盟団体や関係団体を中心に財政支援の呼びかけ、会員の確保を積極的に行う。また、各部会・プロジェクト内での予算執行状況の管理など、担当部会及び担当者と事務局との共有を図ることで、スムーズな運営に繋げていく。
4. 部会とプロジェクト
(1)部会について
2014年度からテーマ別に8つの部会(地域生活、バリアフリー、権利擁護、教育、雇用労働・所得保障・生活保護、障害女性、国際協力、尊厳生)を設けて運動を展開してきた。2021年度は、コロナ禍で集会等がほとんど開催できなかったが、オンラインを活用し、DPI連続フォーラム、タイムリーな課題を解説するオンラインミニ講座等を実施し、部会の積極的な活動に繋がった。2022年度も部会メンバーを拡充し、部会単位でオンラインを活用したセミナー等を企画・開催するなど、さらなる活性化をめざす。
(2)プロジェクトについて
重点的な課題についてはプロジェクトを立ち上げて取り組む。
①障害者差別解消法プロジェクト
2021年度に引き続き、差別解消法見直しに取り組む。2022年度は差別解消法の基本方針、対応要領・対応指針の改訂において、事例に基づいた提案を働きかける。
②障害者権利条約の審査・総括所見を活用した国内法制度整備事業(公益財団法人キリン福祉財団助成事業)
2022年度から3年間の事業として新たに実施する。夏に予定されている国連の第1回建設的対話(審査)をうけて総括所見が出されるが、この総括所見の指摘内容について整理、分析し、取り組み課題を明確化し、意義やその内容について加盟団体等に普及啓発するとともに、国や自治体レベルにおける法制度の改善に結び付けていく。