【最終報告】Withコロナ時代のオンライン地域移行支援制度モデル構築事業
2022年04月06日 地域生活
日本財団助成事業として展開した「Withコロナ時代のオンライン地域移行支援制度モデル構築事業」の最終報告になります。京都のJCIL、大分の自立支援センターおおいたから、それぞれ報告をいただきました。
京都JCILからの報告 一年間の取り組みを振り返って
この度は、日本財団より助成を受けて、オンライン地域移行支援制度モデル構築事業の取り組みを行えたこと、大変有意義であったと思います。以下に、この一年間の取り組みを振り返って報告します。まず、今回のモデル事業として当センターで行った取り組み一覧を列挙します。
■宇多野地域移行振り返り座談会
2021年2月22日・3月15日・4月12日 Zoomにて計3回実施。これまでの宇多野病院からの地域移行を当事者と支援者で振り返り、好事例としてうまくいったことや直面した課題、コロナ前後の変化やオンラインツールの活用などについて話し合い、その議事録をまとめた。
■地域定着支援
■藤田紘康さんの地域定着支援
主にピアサポーターの野瀨(2019年宇多野退院)が担当し、藤田さんの地域移行後の困りごとなどを解決するために活動した。藤田さんが退院された直後の2020年10月から2021年12月までの間に、Zoomでのオンライン相談も含めて53回のピアサポートを行った。
■植田カフェ
2018年に宇多野病院から地域移行した植田健夫さんが地域での居場所づくりの一環として、2021年8月より毎月一回、JCIL事務所にてスタッフにコーヒーを提供する取り組みを行った。
■田中さんと植田さん オンライン料理対決ILP
田中佑磨さん退院(2020年10月)後、植田健夫さんと田中さんとでZoomを使用した料理対決を行った。二人は同じU Rの別棟に住まれていることもあり、料理のお裾分けもした。Zoomは田中さん植田さんの表情が映るように配置、また各ヘルパーがキッチンで調理している様子を写した。美味しく食べやすい食事形態を模索した。
■京都市「脱施設化」のための働きかけ
京都において地域移行や施設入所者数削減という目標を実際に推進していくために、京都市障害者施策推進審議会のメンバー(JCILも加盟)や地域移行に関心のある研究者の方々などと話し合い検討を行った。その結果、京都市障害保健福祉推進室が施設入所待機者及び施設入所者に対して地域移行の実態調査を行うとの方向性が示された。また、審議会の有志のメンバーと研究者らでワーキンググループも立ち上げた。
■筋ジス病棟以外の障害者入所施設へのアプローチ
コロナ禍以降、それまでつながりのあった障害者入所施設の入所者の方と面会できない状況になり、オンラインでの繋がりを模索するために、インターネットの利用状況などのアンケート調査を行った。その結果、インターネットにアクセスできていない人が一定数いること、またネット環境があっても支援の手がなく利用ができていない人もいることが分かった。
■地域移行啓発PV作成
医療的ケアの必要な重度障害者の地域移行を広く知ってもらうために PR 動画を作成した。今までの地域移行支援に携わってこられた訪問医療や訪問看護、介護派遣事業所や宇多野病院へのインタビューなども実施した。地域移行について、多角的で客観的に分かりやすい動画を作成することができた。
次に、これらの取り組みを終えて、私たちが考えるその成果と課題について報告します。
成果・よかったこと
- 地域定着支援を密に実施し、オンサイト・オンライン支援双方のメリットとデメリットを確認できた。
- 藤田さんの利用するヘルパー事業所や訪問看護、訪問入浴が同じ事業所でトラブル発生時やお悩みを解決時に自分の経験を元に助言できたのが良かった。(野瀨)
- 地域定着支援をリアルタイムで報告しつつ、その前の地域移行支援については、本人とCIL内だけにとどまらず多職種の関係者インタビューを行って振り返られたことで、より多角的で客観的な全体像を示すことができた。
- アンケートなどを通して現在、施設に入所されている方の率直な思いを聞き取ることができたことは非常に貴重だった。
■課題
- コロナ禍による病院や施設の面会制限下では、新規の地域移行希望者とつながることができなかった。
- 施設入所者の方の支援をオンラインで行う場合、施設自体にオンライン環境がないところがまだまだ多い。環境があったとしてもサポートが必要なので、もっとアクセスしやすい工夫が必要。
- 重度障害者もスムーズに地域移行できるようにするために必要、大事なことをまとめて明示できるとよかった。
- 地域定着支援については、また改めて振り返って検証が必要。
これをもってこの一年間の取り組みの最後の報告といたします。一年間本当にありがとうございました。モデル事業自体はここで終了となりましたが、私たちの地域移行の取り組みはこれからもまだまだ続きます。この一年間取り組んできたことを土台として、今後もますます日本での地域移行の促進に貢献できるよう頑張っていきたいと思いますので、これからもよろしくお願いいたします。
JCIL日本財団PTチーム
自立支援センターおおいたからの報告
私たちはこの度、日本財団様の助成を受け、自立生活体験室を設置させていただきました。
この自立生活体験室では、N病院に入院されていた芦刈氏の自立生活プログラム(以下、ILP)をメイン活用させていただき昨年8月、無事に地域移行を果たす事ができました。
今回は一年間の振り返りをお届けいたします。
1.物件(体験室)探し
私たちの団体のある大分県は、障害者の割合が比較的多く大家さんも理解のある方が多い状況ですが、今回の芦刈さんのように「大きな車椅子+呼吸器」という方の地域移行事例が少なく、エレベーター幅、廊下幅等、ソフト面というよりは、ハード面の壁が大きかったです。
しかし、運良く、センターの近くの物件を見つける事ができました。見学後、即契約。その後、体験に必要な家具や家電を購入設置する作業に移りました。
2.物品購入
私たちが良く利用している福祉用具業者へ連絡。発注から搬入までにはそこまでトラブルがなく進める事ができました。
3.オンライン支援
オンライン支援に関しては、話すと凄く長くなるのですが・・・
(1)オンライン体験
メインに行った事として、調理、掃除、買い物、洗濯です。
もともと、芦刈さんは食べる事が好きで、調理はとても楽しんで行っていました。しかし、食べる事は好きでも、調理するという事は初めてで若干苦戦してる印象もありました。結果的には満足しているようで、おいしそうな麻婆豆腐が完成しました。
(2)オンライン研修
オンライン研修は、この事業の中で一番力を入れました。対面での研修でも、難しい研修・・・オンラインでできるのか?不安はとてもありました。
まずは、聞き取り。どんな方法で?必要な物品は?気をつける事は?細かく聞き取りを行いました。
次に研修。僕がモデルになればよかったのですが、褥瘡という悪魔に襲われ、「どうしようかなぁ?」と考えていると、以前、同じオンラインで地域移行された方が「介助用人形」を利用していたのを思い出し、「介助用人形」を利用した研修を実施しました。
4.事業を終えて
この事業の話をいただいた時、正直「地域移行できるかな?」「地域移行できなかったらどうしよう?」というプレッシャーが大きかったです。
しかし、支援を進めていく中で、プレッシャーが楽しみに変わっていきました。これも、支援いただいた日本財団様、情報提供してくれた全国の仲間、一緒に頑張った介助者、そして最後まで地域移行を諦めなかった芦刈さんがいたおかげだと思っています。
今回をきっかけに、オンライの可能性を改めて感じる事ができたのは、これからの支援に大きくつながると思います。貴重な経験をいただき本当にありがとうございました。
自立支援センターおおいた