国交省から「令和2年度 移動等円滑化に関する実績の集計結果」が公表されました ~新たにホームの段差と隙間も加わる~
2022年01月20日 バリアフリー
1月11日(火)に国交省から2020年度(2021年3月31日現在)のバリアフリーの実績報告が公表されました。
バリアフリー法に基づいて毎年報告されているもので、例年は10月くらいに公表されていたのですが、今年は少し遅れて1月となりました。鉄道、バス、タクシー、船舶、飛行機といった分野ごとにデータが公表されており、バリアフリー化の進捗状況がわかる重要なデータです。
この中から、鉄道について見ていきたいと思います。(外部リンク:国土交通省)
鉄道の段差解消(エレベーターやスロープの設置)
3千人以上の駅の段差解消状況が%で表示されており、これをみると全国平均が95%となっています。
しかし、3千人以上の駅は全国の34.6%(3251駅/9411駅)しかありませんので、全駅で見ると50.4%となります。今回はじめて50%を超えましたが、まだ全国の約半数の駅は段差解消されておりません。さらに、3千人未満の駅では26.8%と非常に低いです。
【全国の状況】
全駅 | 50.4% | (4,744駅/9,411駅) |
3千人以上駅 | 95.0% | (3,090駅/3,251駅) |
3千人未満駅 | 26.8% | (1,654駅/6,160駅) |
都道府県別
都道府県別のデータもあり、これをみると都市部と地方の格差が非常に大きいことがよくわかります。
3千人以上の駅だけで見ると差がわからないので、都道府県ごとに全駅に占める段差解消状況を計算してみました。
沖縄はゆいレール19駅のみで100%ですが、これを除くと、一番高いのは東京都の94.3%ですが、一番低い宮崎県は15.7%です。50%を超える都府県は14でした。
主な都道府県別の状況は以下の通りです。
宮崎 | 15.7% | (12駅/76駅) |
山口 | 17.1% | (26/152) |
青森 | 20.1% | (31/154) |
大分 | 20.6% | (18/87) |
鹿児島 | 20.9% | (26/124) |
徳島 | 22.3% | (17/76) |
島根 | 22.5% | (21/93) |
北海道 | 23.4% | (112/478) |
石川 | 23.6% | (17/72) |
長野 | 24.8% | (64/258) |
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福岡 | 50.2% | (180/358) |
茨城 | 50.7% | (68/134) |
奈良 | 50.7% | (66/130) |
宮城 | 55.4% | (87/157) |
滋賀 | 56.8% | (71/125) |
京都 | 64.1% | (161/251) |
兵庫 | 66.3% | (254/383) |
千葉 | 70.5% | (249/353) |
愛知 | 74.5% | (370/496) |
埼玉 | 81.0% | (193/238) |
大阪 | 84.3% | (437/518) |
神奈川 | 88.7% | (338/381) |
東京 | 94.3% | (716/759) |
沖縄 | 100% | (19/19) |
ホームドア
ホームドアが設置されている駅は全国で10%です(943駅/9,411駅)。
駅にはホームが複数ありますので、番線でみると11%(2,192番線/19,922番線)となります。都市圏を中心に設置が進んで来ましたが、全国的にはまだまだ低い状況です。
新項目 ホームの段差と隙間が加わる!
今回新たにホームの段差と隙間の状況が加わりました。
車いす使用者が単独乗降できるように、2019年にホームの段差と隙間の目安値(段差3cm×隙間7cm)(※)が設定されました。この数値だと約9割の車いす使用者が単独乗降可能となりますので、非常に重要です。各事業者でホームを嵩上げし、隙間と段差を解消する取り組みが始まっています。
ただ、難しい一面もあります。鉄道はコンクリート軌道(主に地下鉄等)とバラスト軌道の2種類あります。多くはバラスト軌道なのですが、これは枕木と石でレールを支えていますが、どうしても浮き沈みがあり、高さを一定に保つのが難しいそうです。
また、ホームは曲がっているところが多く、直線のホームは全体の20%程度しかありません。ホームの嵩上げだけでは段差と隙間を解消できない駅も多くあるのです。新しい技術の導入も必要です。
データでは、段差と隙間が解消されている駅は6.9%(658駅/9411駅)です。まだまだ非常に少ないですが、今回初めてデータが公表されたことは非常に意義深いです。鉄道事業者におかれては、単独乗降できる環境整備を目指して、段差と隙間の解消に取り組んでいただけますようお願い申し上げます。
※この目安値の段差3㎝・隙間7㎝は、列車走行の安全を確保するため、基本的に、車両の揺れや軌道の変位等の影響が少ないコンクリート軌道かつ直線部を含むホームの駅において満たすこととした。
▽参考 鉄道駅におけるプラットホームと車両乗降口の段差・隙間に関する検討会_令和元年8月とりまとめ(PDF)
報告:佐藤聡(事務局長)
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