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【ポイントまとめました】「NIPT(出生前遺伝学的検査)に潜む課題とリプロ―それぞれの生き方を認める社会へ―」(DPI政策論「障害女性分科会」報告・感想)

2021年12月22日 イベント障害女性

DPI障害者政策討論集会2日目「障害女性分科会」について、報告を藤原久美子(自立生活センター神戸Beすけっと・DPI常任委員)が、感想を小森淳子さん(岐阜協立大学非常勤講師)が書いてくれましたので、ご紹介します!


こんなことが報告されました(ポイントまとめ)

(敬称略)

1.須賀ナオ(DPI女性障害者ネットワーク)

2.米津 知子(DPI女性障害者ネットワーク)

▽DPI女性障害者ネットワークが出した要望書(外部リンク:DPI女性障害者ネットワーク)

3.二階堂 祐子(国立民族学博物館外来研究員・近畿大学非常勤講師)

詳細は下記報告をご覧ください。


分科会開催の経緯

2013年に導入されたNIPT(母体血を用いた出生前遺伝学的検査)は非認定施設で拡大の一途をたどる。厚労省の専門委員会が検討し、今年5月に報告書が公開された。

DPI女性障害者ネットワーク(以下、DPI女性ネット)は障害女性の立場から意見書を作成、厚労省などに提出した。この意見書を通じて社会に伝えたいことを報告、それを受けてNIPT検査とリプロ(性と生殖に関する健康・権利)について、男性障害当事者も交えて、各人の体験を元に共に考えたい。

分科会で報告・議論したこと(敬称略)

1. 出生前検査・着床前検査の最新動向と要望書にこめた思い
須賀ナオ(DPI女性障害者ネットワーク)

NIPT検査は妊娠中に行い、確定診断はできないため、確定には侵襲的な羊水検査が必要となる。着床前検査は不妊治療の一環として体外受精を前提とし、侵襲的なものである。だが、実際に妊娠にまで至るのは約2割。

障害の半数は原因不明であり、21・18・13トリソミー以外の数の変異は生存できない。今後、出生前検査認証制度運営委員会で指針を作成、施設認定や運営評価を行うこととなる。

遺伝性の障害がある子どもを産んではいけないという社会からの圧力と、商業化をすすめたい医療側の思惑で、バリエーションのある遺伝子が排除されていくことの危機感。障害に対するマイナスイメージをなくしていくこと、女性への充分なサポート体制が必要である。

米津知子(DPI女性障害者ネットワーク)

1993年に厚労省が出した血清マーカーに関する指針では、「積極的に妊婦に知らせるべきでない」との見解が示され、日本産科婦人科学会はNIPT検査においても、その姿勢を踏襲してきた。

DPI女性ネットは決して検査を推奨する立場なのではなく、報告書に書かれた「ノーマライゼーションの推進」「優生思想を排除」を実現できるような体制を求めて9項目の要望を挙げた。

二階堂 祐子(国立民族学博物館外来研究員・近畿大学非常勤講師)

ダウン症の妹がおり、自身の妊娠の経験から、意見をだしてきた。トリソミー(何番目かの染色体が1本多い状態で生まれてくること)は胎児そのものではないが、実態であるかのように捉えられる。「イメージ」なら、変えることができる。今ある社会構造的差別が女性のリプロを阻害している。

2.シンポジウム

佐々木和子(京都ダウン症児を育てる親の会)

ダウン症の息子は現在自立して4年になる。ずっと出生前検査には反対してきた。これからは、子どものインクルーシブ教育に関して活動することで誰も排除されない社会を作りたい。

野々村好三(障害者権利条約の批准と完全実施をめざす京都実行委員会)

先天性の視覚障害者として、障害児を産んだ母親がおかれる立場を見てきた。健康な子どもを産むことが奨励され、産まない選択も尊重されない。分けない教育で医者の価値観も変えていくべき。

下林慶史(日本自立生活センター事務局長・DPI常任委員)

出産直後の事故で脳性麻痺。思春期に自身の身体の変化を話すと、母や姉に強い拒否反応を示されたショック。自立してからは、家族を持たない生き方もよいと思えるようになった。

佐々木貞子(DPI常任委員・DPI女性障害者ネットワーク)

遺伝性の疾患。視覚障害のある母親は、何もできないように思われる。今あるヤングケアラーの問題も、障害のある親の問題ではなく、社会資源の少なさが問題。

今後の取り組み

検査が推奨される背景には、女性への抑圧と障害者差別があり、その両方の解消に向けて働きかけること。相談支援や制度等社会資源の整備、子どもの頃からの教育が重要となることが確認された。

報告:藤原久美子(DPI常任委員・DPI女性障害者ネットワーク)

参加者感想

出生前遺伝学的検査について詳しく学ぶことができ、その上で障害女性たちがこの問題をどう捉え、何を問い直していこうとしているか、深く理解できました。また、リプロダクティブ・ヘルス/ライツについても、発言者の多声性が担保されていて、とても良い分科会だったと思います。

二階堂さんが言われていたように、まだ生まれてない、おなかの中の何らかの疾患があるかもしれない胎児は、ディスアビリティ(障害)はもっていません。インペアメント(機能障害)しかもっていないんですよね。

その部分で選別されていくなら、ディスアビリティという視点は希薄になり、社会が私たち障害のある人たちを支え、自分らしい生き方を保障していく責任は形骸化されていくと思います。この検査が広がれば、私たちがバトンをつないで積み上げてきた「障害の社会モデル」という視点は、事実上なし崩しにされ、逆行していくのではないでしょうか。なので、この検査を受けるカップルだけの問題ではなく、この社会全体にかかわる重大な問題になっていくと思います。

もう一つ思ったのは、この検査が広がり、障害のない子どもを産まなければならないという意識が強められることによって、産む・産まないの選択がますます縛られていくのではないかということです。

産みたい人が産み、どんな命も親だけでなく社会全体で受け止められるようなゆるやかな社会でなければ、個人の性と生殖の自己決定権は、社会の空気に左右され、結果的に人口政策にからめとられていくのではないかと思います。

この問題に対して、歩みを止めることなく、私たちは声をあげ続けなければならないと、決意を新たにする分科会となったように思います。

(岐阜協立大学非常勤講師 小森淳子)


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