第5回ユニバーサルデザイン2020評価会議が開催されました(東京2020オリンピック・パラリンピックの取り組みのまとめ)
2021年11月08日 バリアフリー
11月5日(金)、第5回ユニバーサルデザイン2020評価会議(以下UD2020評価会議)が対面、オンラインの併用で開催され、佐藤事務局長が出席しました。
開催経緯
政府は東京2020オリンピック・パラリンピックを機に日本全体をユニバーサル化するために、ユニバーサルデザイン2020行動計画を2017年に策定し、それに基づき障害者団体等を構成員としたUD2020評価会議を開催しています。昨年度までに4回開催され、今回が第5回(最終回)となります。
〇議事次第
- 開 会
- 議 事 これまでの取組の総括について(報告)
- 意見交換
- 閉 会
〇これまでの取組の総括について(報告)
- 資料1:ユニバーサルデザイン2020評価会議の総括
- 資料2:東京大会を契機とした共生社会の実現に向けた取組(主な成果)
- 参考資料1:ユニバーサルデザイン2020行動計画(概要)
- 参考資料2:ユニバーサルデザイン2020行動計画
まず国交省より、これまでの取組の成果について資料をもとに報告がありました。法整備の面では平成30年、令和2年にバリアフリー法が改正され、下記の内容が盛り込まれました。
【平成30年の改正内容】
- 理念規定を設け、「共生社会の実現」、「社会的障壁の除去」を明確化。
- 市町村がバリアフリー方針を定めるマスタープラン制度を創設。
- 公共交通事業者等によるハード・ソフト一体的な取組の推進等を規定。
【令和2年の改正内容】
- 公立小中学校等を特別特定建築物としてバリアフリー基準適合義務の対象に追加。
- 基本構想における教育啓発特定事業の追加や、マスタープランにおける心のバリアフリーの記載事項の追加等の改正を実施。基本構想は309自治体、マスタープランは8自治体が作成済。(令和3年3月末)
- 各施設設置管理者や公共交通事業者等に対し、ハード対策に加え、心のバリアフリーの観点からのソフト対策の強化を義務、努力義務化。
また、令和3年に障害者差別解消法改正法が成立し、障害を理由とする差別の解消の一層の推進を図るため、事業者に対し社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をすることを義務付けるとともに、行政機関相互間連携の強化を図るほか、障害を理由とする差別を解消するための支援措置を強化する措置(相談体制の充実や事例の収集・提供の確保等)を講ずることとしています。
(施行期日:公布の日(令和3年6月4日)から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日)
取組の成果については、主に下記が挙げられました。
- 心のバリアフリーの普及
- 競技会場等のバリアフリー化
- ユニバーサルデザインの街づくりに向けた取組
- UDタクシーや新幹線の車椅子用スペース等をはじめとする公共交通機関のバリアフリー化
- ホテル・飲食店のバリアフリー化
- 共生社会ホストタウン
- 学校施設のバリアフリー化
- バリアフリートイレの適正利用に向けた取組
- 車椅子使用者用駐車施設等の適正利用に向けた取組
- 電話リレーサービス
- 同時手話通訳による中継放送 等
意見交換
当事者団体、有識者等からはUD2020評価会議によってバリアフリー整備が大きく前進したこと、当事者参画によって形だけでなく実用性のある整備が出来たこと等、評価会議の意義を評価する声が多数聞かれました。その一方で現在も残る課題や今後の取組への不安や期待の声も出ていました。
佐藤事務局長からは今後の課題として下記の5点について伝えられました。
1.IPCアクセシビリティガイドのレガシー化
東京2020オリパラでは国際基準であるIPCアクセシビリティガイドの理念が盛り込まれた。Tokyo2020アクセシビリティ・ガイドラインが作られ、それをもとに整備された国立競技場は世界的に見ても最高レベルのバリアフリー整備が実現した。しかし、オリパラ以降全国各地で大型イベントに向けた施設整備が進められているが、バリアフリー整備が不十分で後退している状況。原因は、Tokyo2020アクセシビリティ・ガイドラインの内容を、バリアフリー法の義務基準に盛り込んでいないため。バリアフリー法の義務基準に引き上げ、地方格差のないように整備を進めて頂きたい。
2.心のバリアフリー化の定義
「心のバリアフリー」とは優しさであるという誤解が広がっている。UD2020行動計画では心のバリアフリーの考え方を、「社会モデル」、「差別の禁止」、「共感し想像する力」と示しており、これを普及啓発して頂きたい。
3.小規模店舗のバリアフリー化
小規模店舗のバリアフリー整備は義務ではないため整備がほとんど進んでいない。ぜひとも義務基準に引き上げて整備を進めて頂きたい。
4.UDタクシーの乗車拒否問題
ユニバーサルデザインタクシーの普及は進んだが、現在も車いす使用者への乗車拒否が相次いでいます。乗車拒否をする理由の多くは乗務員が車いすの乗せ方を知らないため。乗務員への研修を徹底して、車いす使用者への乗車拒否をなくしていただきたい。
5.ホテルのバリアフリー化
東京オリパラに向けて、ホテルのバリアフリー客室を総客室数の1%義務化としていただいたが、世界では3~5%が標準となっている。さらなる引き上げが必要。
他の委員から出ていた主な意見は下記の通りです(一部抜粋)。
- 評価会議のような当事者、企業、行政が連携して取り組むことをレガシーとして地方に広げていって欲しい。
- 情報アクセシビリティの確保が課題と書いて頂きありがたい。電話リレーサービスの普及も進めて頂きたい。
- バリアフリー整備が大きく進んだのは東京だけで、地方では当事者の意見が聞いてもらえない現状がある。今後地方へどう引き継いでいくのか検討して頂きたい。
- バリアフリーの考え方や基準は時代に合わせて進化させていって欲しい。
- JPNタクシーは重度障害者が利用できず取り残されている。誰一人取り残されない整備を進めて頂きたい。
- 心のバリアフリーは継続的な取組がないと忘れられてしまう。今後も継続して浸透させて頂きたい。
- 補助犬トイレが不十分。施設を充実させて頂きたい。
- UDタクシーに補助犬も乗れるようにして頂きたい。
- バリアフリーな駐車施設の整備が進まなかったことが今後の課題。今後進めて頂きたい。
- 新幹線の車いすスペースが増えたことは嬉しいが、予約方法の課題も取り組んで頂きたい。
- 今後も評価会議のような取組を継続して地方にも広げていって頂きたい。
感想
2017年から始まったUD2020評価会議は今回が最終回でしたが、改めて成果報告を聞いてこの数年の間に都心部ではバリアフリー整備が大きく前進したことを実感しました。当事者が事業者と同じ場で直接意見を伝えることで、より充実した整備を進めて頂くことが出来たと感じます。当事者の声に真摯に耳を傾け、努力して頂いた事業者の皆様には心より感謝申し上げます。
今後の課題としては、地方格差の解消と当事者参画のレガシー化、オリパラ後も継続した取組を続けていくこと等が多くの委員から挙げられていたことが印象的でした。この評価会議が終わっても、地方の取組にも注目しながらレガシーを引き継いでいきたいと思います。
▽本会議の議事録は後日、首相官邸のウェブサイトに掲載される予定です(外部リンク:首相官邸)
報告:工藤登志子(DPIバリアフリー部会)
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