【DPIメンバーが登壇しました】
第63回日本弁護士連合会人権擁護大会シンポジウム第1分科会 「精神障害のある人の尊厳の確立をめざして~地域生活の実現と弁護士の役割~」報告
10月14日(木)日本弁護士連合会(日弁連)主催で第63回日本弁護士連合会人権擁護大会シンポジウム第1分科会「精神障害のある人の尊厳の確立をめざして~地域生活の実現と弁護士の役割~」が会場とオンライン配信で開催されました。
はじめに
日本では、精神障害のある人は400万人を超え、そのうち約27万人が入院し、入院者の約半数が法的強制の下での入院を強いられています。本人の同意がないまま、入院をさせられている人がたくさんいます。
他国と比べて、日本は圧倒的に精神病床数が多く、入院期間が長く、隔離拘束の多さは社会問題になっています。
毎年のように報道される院内での虐待事件など精神障害のある人の尊厳は確立されないままにあります。
第1部では「精神科医療のいま」と題し、精神医療福祉の概況の報告と強制入院の被害実態を調査したアンケート調査が紹介されました。
第2部では弁護士の方々が作成した3つの寸劇を通して、強制入院、退院が出来ない現状、精神医療審査会などの現行制度の問題点を議論しました。
第3部では、国連をはじめとした海外の人権擁護者から日弁連に対する応援ビデオメッセージを上映し、強制入院廃止を目指し、「精神障害のある人の尊厳の確立を求める決議」が採択されました。
DPIスタッフが登壇しました
第1部と第2部にDPI日本会議の鷺原が登壇しました。
精神病棟に入院し、尊厳を踏みにじられた経験から「精神病院とは一体誰の為の場所なのか」と問いかけました。
また鷺原は強制入院を経験した当事者へインタビューを行い、地域に居場所がなく、仕方がなく精神病院へ入院をしている人たちがいるという声を紹介しました。地域で暮らしていく為のインフラが整っておらず、地域で生きていくための社会資源や人材の充実が必要だと訴えました。
また退院審査請求をしているにもかかわらず退院が出来ないケースが非常に多く、精神医療審査会のあり方を変えるための世論のパラダイムシフトが必要だという話をしました。
最後に、自分事としてこの人権侵害の温床となっている強制入院の問題の打破に取り組んでもらいたい。精神疾患があろうとなかろうと、自分らしく生きられる社会を創っていきたいと話しました。
最後に
入院したくないのに入院させられる。退院したいのに精神障害に対する偏見、現状の制度により退院できず、病院で一生を終える方すらいる。退院しても地域での支援がなく、退院しても帰る場所がないから退院が出来ない。家族も誰にも相談できず、入院という選択肢しか与えられず、孤立している。
精神障害者は人に迷惑をかける存在という前提に立った日本の精神医療は全く変わっておらず、様々な問題が置き去りにされています。
強制入院は、障害者権利条約の理念にも反しています。
「地域で共に生きる」
精神病院で人生を費やすことはあってはなりません。地域へ戻る・地域で暮らすという前提に立った精神医療制度の改革、予算配分の見直しを実行し、精神障害者への偏見などをなくしていかなければいけません。
日本の精神障害者の数は400万人を超え、強制入院の問題は誰に対しても起こりえることです。
精神医療の問題を、決して他人事ではなく自分事として考えてくれる方が増えることを願います。
精神病院での悲惨な事件や強制入院をなくすため、DPI日本会議は関係団体と協力し、取り組みを継続していきます。
報告:笠柳(事務局長補佐)
▽当日の資料はこちらから見られます(外部リンク:日本弁護士連合会)
以下、当日のプログラム
【12時35分~14時45分】
第1部 精神科医療のいま
Ⅰ 日本の精神科医療の現状
- ビデオトーク 伊藤 時男 氏
- 髙橋 智美(第1分科会実行委員会事務局長・札幌弁護士会)
Ⅱ 精神科への入院経験を有する方々への実態アンケート調査結果報告
悲しい・つらい・悔しい体験とその後の人生~経験者1000人余りの声~
- 柳原 由以(東京弁護士会)
- 山口 亮(京都弁護士会)
- ビデオトーク ハワイさん
- ビデオトーク たにぐちさん
【 小休止 】
Ⅲ 座談会 「強制入院にたよりつづける社会でいいの?」
~当事者、家族、そして医師の立場から~
- 伊藤 順一郎 氏
- 鷺原 由佳 氏
- 滝沢 武久 氏
<コーディネーター>
- 池原 毅和(第1分科会実行委員会共同委員長・第二東京弁護士会)
- 鹿野 真美(東京弁護士会)
―休憩(15分程度)―
【15時00分~17時00分】
第2部 劇から考える「こんなとき、あなたならどうする!?」
第1場面「強制入院するしかないの?」
第2場面「どうしてこんなに退院できないの?」
第3場面「精神医療審査会って何のためにあるの?」
<パネルディスカッション>
- 伊藤 順一郎 氏
- 太田 順一郎 氏
- 川部 早苗 氏
- 佐々木 信夫 氏
- 阪井 ひとみ 氏
- 鷺原 由佳 氏
- 関 常夫 氏
- 滝沢 武久 氏
<コーディネーター>
- 八尋 光秀(第1分科会実行委員会共同委員長・福岡県弁護士会)
- 東 奈央(大阪弁護士会)
―休憩(15分程度)―
【17時15分~17時55分】
第3部 強制入院廃止への歩みをここから進めよう!
~国内外からの応援メッセージとともに~
Ⅰ 国内外からのビデオレター
- タルヤ・ヘイノ氏(フィンランド国立健康福祉研究所教授)
- トム・アーンキル氏(フィンランド国立健康福祉研究所名誉教授)
- ロベルト・メッツィーナ氏(トリエステ精神保健局元局長)
- テレジア・デゲナー氏(国連障害者権利委員会前委員長)
- リネー・ラトリッジ氏(国際障害政策コンサルタント)
- 森和男氏(全国ハンセン病療養所入所者協議会会長)
- 志村康氏(ハンセン病違憲国家賠償訴訟全国原告団協議会会長)
- キム・ミヨン氏(国連障害者権利委員会副委員長)
- ジャン・リュック・ローラン氏(精神科医)
- マーサ・サベジ氏(世界精神医学会「精神医療における強制に代わる手段の 導入に関するワーキンググループ」メンバー)
- リーアン・デイビス氏(メンタルヘルス慈善団体「マインド」法務責任者)
- アリス・リバモア氏(メンタルヘルス慈善団体「マインド」シニア弁護士)
- ヨナス・ラスカス氏(国連障害者権利委員会副委員長)
Ⅱ 私たちのめざす強制入院廃止への道
- ~基調報告と人権擁護大会決議案「精神障害のある人の尊厳の確立を求める決議」の概要~
池原 毅和(第1分科会実行委員会共同委員長・第二東京弁護士会
▽主催者ホームページはこちら(外部リンク:日本弁護士連合会)
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