新しい評価指標の取り組み始まる!(第6回移動等円滑化評価会議)
2021年09月30日 バリアフリー
9月29日(水)に第6回移動等円滑化評価会議が開かれました。この会議は2018年のバリアフリー法改正で新たに設けられた会議で、定期的にバリアフリー化の進展の状況を把握し、評価するものです。障害者団体等(18)、事業者団体(11)、研究者(3)、自治体(2)の34人で構成され、年に2回開催されています。さらに、全国10ヵ所の地方運輸局にはそれぞれ地域分科会が設けられ、6月から8月に開催されております。
議事と配布資料
- 移動等円滑化評価会議等における主なご意見と国土交通省等の対応状況
- 新たな評価指標のあり方の検討について
- その他
<配付資料>
資料1 移動等円滑化評価会議 委員名簿
資料2 移動等円滑化評価会議の概要等
資料3 移動等円滑化評価会議等における主なご意見と国土交通省等の対応状況
資料4 新たな評価指標のあり方の検討
参考資料1 移動等円滑化評価会議、地域分科会等における主なご意見
参考資料2 移動等円滑化に関する好事例・先進事例の共有
参考資料3 国土交通省等における最近の主な取組
主なポイント
はじめに事務局から資料3に基づいて、これまでの評価会議で出た意見に対して、国交省としてどのような対応をしているか説明がありました。
新たな評価指標のあり方の検討
前回の会議で委員から「バリアフリーの評価の問題として、アクセシビリティやユーザビリティを視点とした評価指標を検討する時期に来ているのではないか」という意見があり、これを踏まえて、バリアフリーの質(アクセシビリティ/ユーザビリティ)の観点から新たな評価指標のあり方について検討を行うことになり、資料4の「新たな評価指標のあり方」が事務局から提案されました。
- 当事者参画による意見交換会や現地視察も含め、アクセシビリティやユーザビリティを視点とした公共交通機関等での「サンプル評価」を実施し、評価会議において結果を報告、ご意見を伺った上で具体的な検討を開始する。
- 年に2回開催している評価会議のほか、意見交換や現地視察を行うWGの設置を検討。
障害当事者参画の普及
近畿分科会では、関西エアポート(株)と連携し、「関西国際空港のリノベーション」に関する検討会を設置し、当事者が参画し、全体打合せ、課題別フォローアップ会、空港現地見学会、モックアップ検証を実施しているそうです。当事者参画は東京オリパラで実現した取り組みです(新国立競技場、成田空港)。今後もこうした当事者参画の取組事例を積み重ねていくということですので、ぜひ、全国に広げていってほしいと思います。
この他にも、心のバリアフリー・社会モデルの普及推進、基本構想・マスタープランの作成促進(明石市から取り組みの紹介)、障害者割引の導入促進、ICT等の新技術の活用、誘導案内表示等の検討、コロナ禍での障害者への配慮等が報告されました。車椅子使用者用駐車施設等の適正利用と無人駅の対応については検討会を設けて議論を進めているということです。
主な発言
DPIからは以下の4点発言いたしました。
1.新たな評価の手法のあり方はぜひ実施してほしい。
WGの設置も賛成。評価の手法を考える上で、考え方のベースとなる指標は世界基準を踏まえて策定したTokyo2020アクセシビリティ・ガイドラインとしていただきたい。
2.東京オリパラで実現した当事者の意見反映と、TOKYO2020アクセシビリティ・ガイドラインをバリアフリー法の義務基準に盛り込むべき。(TOKYOオリパラのレガシー化)
2025年の大阪万博に向けて、日本国際博覧会協会から7月に「施設整備に関するユニバーサルガイドライン」が公表されたが、残念ながらこのガイドラインの策定には、当事者団体が全く参画していない。さらに、TOKYO2020アクセシビリティ・ガイドラインで実現した世界基準が反映されていない。TOKYOガイドラインでは義務となっていたものが、義務ではなくのぞましい基準に留まっている。オリパラ以前の日本に戻ってしまったような不十分な内容。
3.神戸市営地下鉄のエレベーターの問題 当事者参画を国交省としてしっかり取り組んでほしい。
今春、地下鉄三宮駅のエレベーター更新工事でカゴが小さいものになってしまった。原因は、障害当事者等の意見を十分に踏まえずに施設整備を行ったこと。今後同様の事例が起こらないよう、近畿運輸局では当事者参画のシステム構築に向けて事業者・当事者・国において調整してくださっている。しかし、地元の当事者団体から聞くところによると、神戸市交通局はホームページで意見募集をするといった程度で(メールで意見を送るだけ)、付け替えるエレベーターについて当事者参画で検討する場は持たれていない。現状はどうなのか?再び、当事者不在で検討を進めるという過ちをおかすことの無いように国交省としてもしっかり取り組んでほしい。ぜひ、近畿分科会、地元の障害者団体のみなさんも参加してモックアップテストをして、モデルとなるようなものを作ってほしい。
4.ホームと車両の段差と隙間の縮小 事業者ごとに段差と隙間の実績を毎年公表してほしい。
2019年に目安値を策定し、各社取り組んでいただいている。目安値をクリアすれば90%程度の車椅子ユーザーが駅員に頼まなくても自由に単独乗降できるようになる。とても重要な取り組み。毎年、事業者ごとに段差と隙間の実績を公表してほしい。
他の委員からも、当事者参画を進めること、TOKYO2020アクセシビリティ・ガイドラインの義務基準化を求める声が複数上がっていました。また、新幹線の駅等の大規模駅も当事者参画でバリアフリーを進める取り組みをしたらどうかという意見もありました。
仙台市営地下鉄は南北線の車輌が新しくなるので、仙台市交通局から地元障害者団体に意見交換が呼びかけられたという報告もありました。地域の障害者団体と事業者が良好な関係を築き、当事者参画で建設的な対話を進めている好事例だと思いました。
今後
この評価会議は、毎回、ほぼすべての障害者団体の委員が発言し、活発な提案があります。しかし、これまでは国交省の取り組み報告がメインで、評価会議の機能を十分発揮できていないように感じていました。今回、事務局から新たな評価指標のあり方が提案されたことは注目です。
今後は、10月から評価指標の検討が始まり、3月の第7回評価会議で進捗状況が報告され、WGが設置されます。2022年度は、WGによる意見交換会や現地視察を実施し、第8~9回評価会議で進捗状況を報告し、意見聴取を行うということです。
ぜひ、当事者が評価し、バリアフリー法の基準や施策に反映させていくという仕組みを作っていけるように積極的に働きかけていきたいと思います。
報告:佐藤 聡(事務局長)