旧優生保護法下の優生手術被害に関する動きー超党派議連総会が開催され、調査の概要が示されました
2021年06月04日 権利擁護
(写真:優生議連の冒頭で挨拶する会長の尾辻秀久議員(元厚生労働相))
「旧優生保護法下における強制不妊手術を考える議員連盟」(以下、優生議連)総会が2021年5月26日に開催されました。
一時金申請の状況と国が行っている調査の概要について、総会で報告された内容を以下簡単に紹介します。
なお、最後に関連の動きとして優生裁判に関する署名活動が神戸で行われいています。ぜひご協力ください。
被害者の一時金申請が想定より少ない
旧優生保護法(1948-1996年)下で強制的な不妊手術を受けた被害者数約2万5,000人に対する補償として、2019年4月から 「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律 」(以下、一時金法)に基づく優生手術被害者への一時金(外部リンク:厚労省。一律320万円、請求期限2024年4月23日まで)の請求審査が実施されています。
しかし、申請件数が1,049件(2021年4月末現在、厚生労働省発表)と被害者数の3.9%にとどまっており、厚労省が推計する1万2,000人から見て、また厚労省調査が把握した少なくとも3,400人分の個人記録が残っていることから見ても非常に少ないことがわかっています(4月23日「一時金支給法成立から2年にあたり、国に対し同法の改正などを求める弁護団声明」より)。
総会の冒頭挨拶において優生議連会長の尾辻秀久参議院議員は、当初の見込みよりも「ゼロが1つ少ない」ことに懸念を示しました。
厚労省の審査状況報告では、認定件数は899人(男性254件、女性645件)で、相談件数はのべ5,390件、認定された人の数は厚生労働省(ハンセン病)128人、宮城県100人、北海道85人の順で多く、年齢では70代が一番を置く323人、60代が258人、80代が214人、90代64人、50代33人、40代6人、100歳代1人でした。
一時金法が出来たことを告知するにあたり、厚労省はウェブサイトや広告、障害者関係団体等を通じて広報を行ってきましたが、被害者本人への通知は行っていません。
議連の議員からは、自治体によっては本人への通知を行っているところもあり、もしも本人通知をすることで困ることがあるのならばそうした自治体でどのようなことがあったか把握をしてほしいと質問・意見が出ました。
※「旧優生保護法下における強制不妊手術を考える議員連盟」総会での配布資料はこちらからダウンロードできます。
国が調査に着手
また、衆議院・参議院両院の厚生労働委員会調査室より2020年6月から開始している調査についての報告が行われ、今後の取り組みについて参加議員から質問と提案がありました。
この調査は一時金法21条が「国は、特定の疾病や障害を有すること等を理由として生殖を不能にする手術又は放射線の照射を受けることを強いられるような事態を二度と繰り返すことのないよう、全ての国民が疾病や障害の有無によって分け隔てられることなく相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資する観点から、旧優生保護法に基づく優生手術等(第二条第二項各号に掲げる者に係る生殖を不能にする手術又は放射線の照射をいう。)に関する調査その他の措置を講ずるものとする。」と定めていることに基づいて行われるものです。
この調査において実際に申請した被害者への聞き取りを行うことの重要性が議員から提案されました。
一時金の手続きと国の調査に関し市民団体から多くの要望書
当日は、市民団体(優生手術被害者・家族の会・優生手術に対する謝罪を求める会・全国弁護団連名、おおさか旧優生保護法を問うネットワーク・ODF・大阪弁護団等)からの多数の要望書・意見書等も多数出され資料配布されました。
これらの意見書では、今回の国の調査において法の成立・改定経緯や運用実態、自治体または各学会や教育機関など関係団体の関与などを調査項目に入れるべきことなどが要望されました。
また、現行の申請手続きや期間について、コロナ感染リスクや本人・家族等の逡巡の解決にかかる時間を踏まえ、一時金を受け取るための手続きができる期間を法定の5年間より延長すること、被害者に通知や戸別訪問等のアウトリーチを行うことなどが提言されました。
さらに、旧法の存在を理由に実施された子宮等摘出など被害者も一時金の対象とすること、被害者が被った人生被害の重大さ鑑みて支給金額を増額すること、中絶被害者も一時金等の対象に含めること、配偶者も一時金等の対象に含めること、 また旧優生保護法が母体保護法に変わった後の強制的な不妊・断種手術の実態把握とそれらの被害者に対する措置の検討等、法改正を含めた要望も出されています。
最後に署名ご協力のお願い
関連する動きとして、現在、優生裁判が各地で行われ、25名が提訴中です。仙台・大阪・札幌の一審判決では優生手術は憲法に違反するとの判断が示されています。神戸地裁では今年2021年8月3日に地裁判決が予定されています。
現在「優生保護法による被害者とともに歩む兵庫の会」が「第3次 兵庫優生手術裁判判決に向けての署名(締め切り:7月4日)」を集めています。以下、藤原久美子 DPI日本会議 常任委員/DPI女性障害者ネットワーク 代表)による呼びかけ文を掲載します。
兵庫では、8月3日(火)14時~の判決に向けて、様々取り組みを行っています。7月4日(日)には、決起集会(オンライン&会場)も行う予定です。
今年の2月より「神戸地裁に公正な判決を求める署名」へのご協力をよびかけさせていただき、多くの方からご協力をいただきました。第2次分の署名として5月20日に紙署名6,445筆、電子署名126筆、計6571筆を提出しました。
第1次分と合わせて紙署名19,821筆、電子署名1,225筆、合計2万1,046筆となっています。ご協力いただいた方、ありとうございました。7月初旬に第3次の提出を予定しています。ぜひ署名にご協力ください。
②紙ベースでのご署名を希望される場合
こちらのPDFをダウンロード、印刷していただきご送付ください。
注1) 可能な限り、原本をご送付ください。
注2) お手数ですが、「同上」や「〃」を使用せずにご記入ください。
★締め切り:2021年7月4日(日)
署名用紙郵送先(問合せ及び署名集約先)
優生保護法による被害者とともに歩む兵庫の会HP
〒650-0016 神戸市中央区橘通1-1-2 兵庫障害者センター内
電話(078)341-9544 Fax (078)341-9545
報告:浜島(事務局)
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