第5回移動等円滑化評価会議 参加報告
2021年03月23日 バリアフリー
3月17日、第5回移動等円滑化評価会議が対面、オンラインの併用で開催され、佐藤事務局長が出席しました。
概要
平成30年改正バリアフリー法において、高齢者、障害者等の当事者等が参画する会議を設置し、定期的にバリアフリー化の進展の状況を把握し、評価することが定められました。
平成31年2月に第1回評価会議開催以降、今回で5回目の開催となります。また、全国10ブロックにおいて「地域分科会」を開催、高齢者、障害者等の様々な特性に応じたニーズや意見を適切に把握するための「特性に応じたテーマ別意見交換会」を開催しています。
今回は下記の内容について国交省からの報告があり、当事者団体、有識者等による「意見交換、要望が伝えられました。
① 移動等円滑化の進展状況について
② 第 4 回移動等円滑化評価会議における主なご意見と国土交通省等の対応状況
③ 移動等円滑化に関する好事例・先進事例の共有
④ 国土交通省等における最近の主な取組
⑤ その他
① 移動等円滑化の進展状況について
移動等円滑化の進展状況については、鉄軌道、バス、船舶、航空、タクシー、道路、都市公園、路外駐車場、建築物、信号機等の各項目において都市部での進捗が見られた一方で、地方部では不十分な状況もあり、地方間格差が見られる状況でした。また、他の項目に比べてリフト付きバス、旅客船、建築物での整備が遅れていることから、参加した委員からは積極的に進めて欲しいとの意見が出ていました。
② 第 4 回移動等円滑化評価会議における主なご意見と国土交通省等の対応状況
令和2年度の地方分科会開催状況では、意見交換会の他にバリアフリー教室、現地視察や体験乗車等を行ったとの事でした。
③ 移動等円滑化に関する好事例・先進事例の共有
移動等円滑化に関する好事例・先進事例については令和2年度バリアフリー化推進功労者大臣表彰を受賞した「みんなでつくるバリアフリーマップ(一般社団法人Wheelog)」、「宿泊施設における多様な利用者への配慮と誰一人取り残さない夜間訓練の取組(株式会社パームロイヤル)」等の取り組み事例紹介や、「明石市ユニバーサルデザインのまちづくり実行計画」が紹介され、当事者参画のもとでマスタープラン・基本構想が作成された事例を見ることが出来ました。
参加した委員からはこのような先進事例を全国の自治体にも共有してマスタープラン・基本構想の作成が進むよう後押しして欲しいとの意見が出ていました。
④ 国土交通省等における最近の主な取組
新幹線の新たなバリアフリー対策、地下鉄ホームと車両の段差・隙間縮小及び縮小箇所の案内表示、駅の無人化対策、新技術を活用した駅ホームにおける視覚障害者の安全対策検討会、建築設計標準、ユニバーサル社会におけるMaaSの活用方策、心のバリアフリー等の取り組みが紹介されました。
これらの取り組み報告を受けて、DPI日本会議からはコロナ禍での努力に感謝の意を伝えるとともに、以下の2点について提案と要望を伝えました。
(1)基本方針に定めてある分野の視察をしてはどうか
- 鉄道、バス、船舶、航空、タクシー、道路、公園、駐車場、建築物
- 特に、基準を見直した分野で、その後の新しい基準で整備されたものを視察したい。
- 視察は悪いところも見たら良い ➡ 基準に問題点がないか考える参考になる
- 観光船とかどうだろうか。船はバリアフリー化が遅れているので。隅田川の観光船の新しいタイプをみてみたい。
- 新国立、西武ドーム、成田空港、ホテル(新基準の)、UD公園、バスタ
(2)基本構想の策定で、明石市ヒアリングを公開で実施してはどうか
- 今後、マスタープラン、基本構想を全国で広げていく。そのために、どういう取り組みをしたら良いかわからない自治体も多いと思う。オンラインで全国の自治体、個人も参加できるようにして、明石市の担当者に取り組みを報告してもらってはどうか。
- 住民提案もできるので、市民も参加できるようにして、知ってもらえる。
- 国交省が主催してもいいし、この評価会議主催でやってもいいのではないか。
他の当事者団体や有識者からは以下のような意見が出ていました。(一部抜粋)
- 当事者参加の取り組みが進んで嬉しい。今後もさらにこのような取り組みが広がって欲しい。
- エレベーターのドアが閉まる時に音でわかるようにとあるが、聴覚障害者は聞こえないため、光でもわかるようにして欲しい。
- 地域の取り組み事例に聞こえない体験が少ない。増やして欲しい。
- 民間企業が運営を行う移動円滑化のためのアプリについて。民間企業が個人情報を取り扱うことを危惧している。国交省で取り扱いを検討して欲しい。
- バリアフリー整備の見える化を進めて欲しい。
- 音響信号機は重点整備地区(駅から病院、視覚障害者施設)で99%とあるが、24時間なのか一定の時間なのか、細かくわかるようにして欲しい。
- コロナ禍においてオンラインでのサービスが増えつつあるが、情報提供の方法について見えない、聞こえない人でも使えるように検討して欲しい。
- 高齢者は視覚、聴覚、判断力の減退を認識しづらく転倒が多い。少しの段差で躓くこともあり、通路の変化には白線をひいて欲しい。
- 新幹線の新型車両で車いすスペースが増えることは嬉しい。鉄道会社のホームページでも多言語でアピールして欲しい。
- 飛行機に搭乗した時の緊急時対応を説明して欲しい。避難手順の案内が欲しい。飛行機に担架を用意して欲しい。
- 学校のバリアフリー化について。車いす使用者が使えるトイレは何階にあるのか。水害で1階が使えない時に何階が使えるのか。
- 電車の券売機と情報提供について。海外の券売機が便利。モニターから運賃を選んで買うこともできるが、路線図から選ぶことや検索で買うこともできる。英語日本語の切り替えも可能。日本も参考にして欲しい。
- 好事例について地域から発信、共有の仕組みを充実させて欲しい。地域分科会はコロナ終息後もオンラインを活用して良いのではないか。
- 地域間格差の広がりに注意を払って欲しい。
- ホームドア問題もっと促進させて欲しい。
- 無人駅問題を評価の対象にして欲しい。
- 精神障害者の公共交通機関の運賃割引についても検討して欲しい。
- オリパラのレガシーをどう展開するのか。国体開催地や学校のバリアフリー化等、文科省等の関係省庁と連携しながら進めて欲しい。
- 心のバリアフリーについて、やるべきことをできていない部分を思いやりの問題にせず、社会モデルの考え方を広めて欲しい。
- 共同住宅のバリアフリー化、高速バスの整備等、遅れている部分に取り組んで欲しい。
- ホームと車両の段差隙間の目安値を全国に広めるとともに、解消した場所のチェックの仕組みを作って欲しい。
- UDタクシーは大型電動車いすでは乗車しづらいため、大型電動車いすでも前向き乗車できるように車両の開発を進めて欲しい。
- パーキングパーミット制度は全国でばらばらの制度になっている。国で統一基準を作って欲しい。
- マスタープラン、基本構想の目標値がどこまで進められるか。地域でプッシュして欲しい。ホストタウンの取り組みを他の区市町村に広報活動を。
- バリアフリーの評価について。達成の内容がどうなのか。アクセシビリティ、ユーザビリティも含めた評価をした方が良いのではないか。
感想
今回の会議を傍聴して印象的だったことは、当事者参画の重要性についてです。会議の中で東洋大学名誉教授の高橋儀平先生が発言されていたのですが、昨年完成した新国立競技場は設計要求水準に当事者参画についての項目が入っていたため、設計段階から当事者も交えたワークショップを開催でき、その結果素晴らしいバリアフリー設備の競技場を作ることができたそうです。
今後、この事例をレガシーとして広めるために具体的な当事者参画の枠組みの作り方を検討し公共事業ではぜひ推進を図って欲しいとおっしゃっていて、私も同感しました。
本会議の資料、議事録は委員が確認した後に国交省のホームページに掲載される予定です。
報告:工藤登志子(バリアフリー部会)