小規模店舗のバリアフリー化ガイドライン素案が出ました!(第3回高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準の改正に関する検討会及び小規模店舗WG報告)
2020年10月29日 バリアフリー
小規模店舗のバリアフリー化は日本に残ったバリアフリー分野の最大の課題です。2018年と本年のバリアフリー法改正国会審議でもこの課題が議論され、附帯決議にも盛り込まれました。それらを受けて、本年1月から標記の検討会がスタートしております。去る10月28日に第3回が開かれ、いよいよ具体的なガイドラインの素案が示されました。
議事
議事次第は下記の通り。特に注目は赤字の4つです(議題2(2)、(3)、(4)②、3の2つ目)。
1.開会
2.議事
(1)建築設計標準改正の考え方
(2)重度障害、介助者等への対応について
①現状の課題整理と検討の方向性(案)
②【前回検討会の修正】改正内容について(たたき台)
③【新規追加】改正内容について(たたき台)
(3)小規模店舗のバリアフリー化について
①現状の課題整理と検討の方向性(案)
②【前回検討会の修正】改正内容について(たたき台)
③【新規追加】改正内容について(たたき台)
(4)設計事例の紹介について
①現状の課題整理と検討の方向性(案)
②設計事例の紹介(たたき台)
3.その他
・建築物のバリアフリー化に関わる支援制度について
・バリアフリー法施行令の一部改正について
ガイドラインの主なポイント
小規模店舗については、業種を9つに分類した上で、主な整備項目を決めるというものです。特に重要なことは、前回までは床面積に応じて整備内容を変えるという考え方でしたが、規模の大小にかかわらず、基準は概ね一律にするという方向に変わりました。主な重要ポイントは下記の通りです。
- 出入り口と店舗内の段差解消
➡店舗の用途、規模にかかわらず出入り口は幅80cm以上、段差は解消する。既存建築物等で通路や出入り口に段差がある場合は据え置き型の傾斜路(可搬式スロープ)でもよい。
- テーブルと椅子
➡ 車椅子のまま食事ができるように原則として可動式の椅子とする。固定席を設ける場合は、必ず可動式の椅子席を設けるものとする。車いす使用者に配慮し、可能な限りローカウンター席を設ける。テーブルの下端の高さは65-70cm程度とし、上端の高さは70-75cm程度とする。テーブルや衝立・パーティションも動かすことができるようにすると、通路・スペースの確保が容易になる。
- 車椅子で使えるトイレ
➡1つ以上設置。複数の店舗が入るビルなどでは、共用スペースに1つあれば良い。商店街なども共用で1つあれば良い。
- その他
車いす使用者が使える試着室、ATM、セルフレジ、サッカー台(スーパーなどで商品を袋に詰めるための台)、点字メニューや筆談ボード、コミュニケーションボードの準備も盛り込まれている。
車いすユーザーが使えるトイレ(いわゆる多機能トイレ)は、従来は2m×2m程度という基準でした。実際には、トイレ内にライニング(設備機器背後の配管スペース)があって、実行寸法はこれより狭くなっているところも多かったのです。そこで今回は「標準内法寸法は2m以上×2m以上とする」という方向で議論されています。便座の高さも低すぎると便座から車椅子に戻るトランスファーができない人もいるので、42-45cm程度とするとなりました。
・資料3 高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準の改正に関する検討会及び小規模WGの設置について(国交省HP)
・資料4 バリアフリー法の概要について(国交省HP)
委員からの主な意見
議題2(2)トイレ
- 機能分散とともに、可能なところでは車椅子で使えるトイレの複数化が必要。(DPI)
- トイレの高さは調査結果では43cmがベスト。42-45cmという提案通りでよい。(DPI)
- 複数化が望ましい。やむを得ず1ヶ所の場合は、右利き、左利きの両方に対応可能な工夫が必要。
- 便房の背もたれは体感機能障害がある人には有効。競技場でも多機能設置されてきたが、前よりに設置してあると使いにくい。位置が前後に5cmくらい移動できると良い。
議題2(3)小規模店舗のバリアフリー化について
- 「固定椅子を設ける場合は、総席数の半数以上は可動式の椅子を設ける」としてほしい。(DPI)
- 裏口から入れればいいとすると、障害者の尊厳を大切にされていないように感じる。アメリカでは実際に裏口しかなかったレストランが訴えられて負けている。できる限り主たる出入り口をバリアフリー化する、高低差が激しく、どうしても無理な場合は裏口でも良いとしてほしい。(DPI)
- 「可搬式スロープは常備して、すぐに対応できるように」と入れてほしい。どこにあるかわからない、実際にはないということが起きないように。(DPI)
- 半分地下、半分上階といったスキップフロアの店舗はどうするか、示すことが必要(DPI)
- 資料5には店主が車いす使用者のらーめん店が紹介されている。素晴らしい事例。働く側に車いす使用者や障害者がいる、という視点でもガイドラインを考えてほしい(DPI)
- 固定の椅子やテーブル困る。可動式がよいということを強調していただきたい。
- インターフォンがあるところまでの点字ブロックの敷設必要。
- 盲導犬もいるので、通路幅とってほしい。
- 券売機は全盲のものは不可能。弱視でも買えるように字を大きくする等お願いしたい。
- 銀行のATM 故障したときに困った。聴覚障害なので電話できない。モニターなどの表示で対応できるようなものを入れていただきたい。
- エレベーターですが、外部との連絡が遮断される。故障時不安。エレベーターにカメラついているもの少ない。エレベーター内にカメラをつけて外部と連絡取れるように記載してほしい。
設計事例の紹介
優良な設計事例の紹介です。葛飾区にある店主が車いす使用者のらーめん屋、清瀬市にある理容所が紹介されています。とても良くできているので、ぜひ資料を見て欲しいですし、実際に行ってみてください。
・資料5 国土交通省住宅局におけるバリアフリーに関する取組(国交省HP)
バリアフリー法施行令の一部改正について
これはとても重要な改正です。自治体で委任条例というものをつくれます。バリアフリー法に上乗せ・横出しの基準を条例で作ることができるというものです。たとえば、バリアフリー法では床面積2000㎡以上の特別特定建築物しかバリアフリー整備義務はないのですが、条例で飲食店は200㎡以上は義務化する、というように基準を引き下げて対象を広げることができるのです。すでに大阪府などは以前から委任条例を作り、整備を進めています。
しかし、委任条例を策定している自治体は20程度しかないのです(自治体は全国に1741あり)。これを増やすために、今回、自治体が委任条例を作りやすいように施行令を改正するというものです。規模に応じて整備項目を自治体で策定できるようになります。
まとめ
今回示されたガイドラインの素案はかなり良い内容だと思いました。ぜひとも車いす使用者が利用できる店舗を増やすために、引き続き積極的な提案を行って参ります。次回は12月25日で、ここで取りまとめられるようです。ぜひ資料をご覧になって、ご意見ございましたら、DPIまでお寄せください。
事務局長 佐藤 聡
【参考】
- 構成委員
- 委員35人(学識経験者5人、高齢者・障害者団体10人、事業者団体10人、建築関係団体6人、地方公共団体4人)
- 関係省庁オブザーバー 内閣官房、文科省、厚労省、農水省、経産省、国交省、観光庁、国土技術総合研究所、国立研究開発法人建築研究所
- 事務局
- 国土交通省住宅局建築指導課、市浦ハウジング&プランニング、国土技術研究センター
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