山本博司厚生労働副大臣に「厚生労働行政における障害福祉施策に対する要望書」を提出しました
10月8日(木)、山本博司厚生労働副大臣を表敬訪問し、「厚生労働行政における障害福祉策に対する要望書」を提出してきました。
(参加者:副議長 尾上浩二、事務局長 佐藤聡、議長補佐 崔栄繁、事務局次長 今村登、白井誠一朗)
この間、厚生労働省では令和3年度に予定されている報酬改定に向けて、「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」による検討が進められています。こうした来年度予算にかかわる検討の動きの他、障害者総合支援法の次の3年後見直しを見据えた障害福祉施策の重要課題を中心にDPIとしての要望をまとめました。
当日は大変お忙しい中、30分も時間をとっていただき、地域移行をより前に進めていくための方策や福祉人材の確保、重度訪問介護サービスの積み残し課題に関する取り組みについてなど、丁寧にお話を聞いていただきました。
山本副大臣からは「報酬改定では地域移行支援にウエイトをおいた改定を考えている」、「今後も様々な当事者の声にアンテナを張っていきたい」といったご発言を頂きました。
誰もが地域で暮らせるインクルーシブな社会の実現に向けて、厚生労働省との意見交換の機会をもちながら、今後とも積極的に取り組んでいきたいと考えているところです。
2020年10月8日
厚生労働省
副大臣 山本 博司 様
厚労行政における障害福祉施策に対する要望書
認定NPO法人DPI日本会議
議長 平野みどり
日頃より障害福祉施策の充実と向上にご尽力いただきありがとうございます。
さて、2014年に国連の障害者権利条約(以下、権利条約)を日本が批准してから早6年が経ちます。コロナ禍でなければ今夏ジュネーブで権利委員会による日本の審査が行われる予定でしたが、残念ながら世界的なコロナ禍により日本の審査は来年以降に先送りとなっています。そのため、国連の勧告をもとに検討を行うのはまだ先になりますが、条約に沿った見直しを進めることは常に必要なことと考えます。
差し当たり来年度に行われる障害福祉サービスの報酬改定を機に、より権利条約第19条に沿った制度運用が進められるよう、取り組んでいただきたい4つの項目について下記のように要望いたします。
記
- 令和3年度報酬改定等、来年度予算編成に関わる取り組み
- 福祉人材の確保
- 重度訪問介護サービスの積み残し課題への取り組み
- その他(今後の取り組みについての意見交換)
1. 令和3年度報酬改定等、来年度予算編成に関わる取り組み
施設入所支援は、地域移行策とセットで計画的に配分を見直し(移行)して下さい。とりわけ地域移行支援、地域生活支援拠点整備の強化を重点的にお願いします。
<地域移行支援>
① アウトリーチ、個別ピアカウンセリング、自立生活プログラム、体験室利用等の地域移行に有効な実践活動を評価する仕組み
② 地域移行した施設、病院、介護事業所、相談支援事業所及び自治体を評価する仕組み
<地域生活支援拠点>
① 地域生活支援拠点は、人口10万人に一箇所くらいの割合で整備するような予算を(特に面的整備の充実が必要)
② 地域生活支援拠点の面的整備には、地域移行センター(仮称)に地域移行コーディネーター(仮称)が配置できる予算が必要
2. 福祉人材の確保
上記の地域移行支援、地域生活支援拠点を強化充実させ、より実効性のあるものとして機能させるため、かねてから施設や親元からの自立を支援し独自の手法で地域移行に取り組んできている団体や事業所を参考に、相当数の実績のある相談者や介助者が、地域移行のスペシャリストとして活動できる人材育成とサービス体系の新設が必要不可欠です。そのために、次の2点の実現をお願いします。
① 地域移行コーディネーター(仮称)等、地域移行の促進を担う職種の新設
② 地域移行の強化に向けた検討チーム立ち上げ
3. 重度訪問介護サービスの積み残し課題への取り組み
対象者の拡大(行動障害のない知的・精神障害者、障害児)、場所や目的(通勤・通学、就労・就学等)による利用制限(社会的障壁)の撤廃、入院中の利用制限(障害支援区分4・5が対象外)、コロナ禍による新しい生活様式に対応できる柔軟な運用といった問題が未解決のままになっています。その対応策として、次の2点の実現をお願いします。
① 障害当事者団体を含めた検討チームの立ち上げ
② 重度障害者の就労の可能性を高めるため及びコロナ禍での新しい生活様式・働き方を後押しするために、在宅勤務で重度訪問介護を使えるようにすること(参考:さいたま市)
4. その他(今後の取り組みについての意見交換)
① 「障害者虐待防止法の改正」(学校と病院を通報義務化対処に)、「障害者総合支援法の改正」(法の多少範囲の拡大)をはじめ、障害者権利条約の実施に関する障害者福祉のあり方について、あらためて意見交換の場を設定して下さい。
② 人材確保対策として、最低賃金の上昇や処遇改善加算等により、扶養家族の労働時間数が減る問題の解決が必要です。女性の社会進出促進の観点からも、扶養のラインを最賃や処遇改善加算の上昇率に合わせて変動させられる仕組みを早急にご検討下さい。
以上
<解説資料>
1. 令和3年度報酬改定に関する取り組み
- 基本報酬単価を上げるため、処遇改善加算は基本報酬に組み込んで下さい。
申請手続きや管理業務自体が介護事業所の大きな負担となり、介護業務以外に専門職を雇う必要が出ている。またそうした余裕のない事業所は、ヘルパーが兼務せざるを得ず、本来の介護業務に支障をきたしている。 - 最低限、処遇改善加算等の比率変更を行う場合は、基本報酬と処遇改善を合わせた報酬額が、現行より引き下がってしまうことがないようお願いします。
- 2020年10月からの通勤・就労の支援において、まだこの事業に手をあげる自治体が極小と聞いています。その一番の原因は、この事業は市町村の行う地域生活支援事業として位置付けられていますが、予算的裏付けが皆無であることが大きいと考えます。地域格差が生じないように、例えば地域生活支援促進事業の大学等修学支援を通勤・就労にも使えるよう拡充し、その後、通勤通学・就労就学での利用を重度訪問介護等への組み込みを検討するなどの具体的な改善をお願いします。
- 介護保険対象者の国庫負担基準を実態を踏まえて引き上げて下さい。
介護保険適用年齢(65歳、特定疾病は40歳)になり、介護保険を併給する場合、重度訪問介護等の訪問系サービスの支給時間数が削減されたり、本人の意向を無視し相当威圧的に介護保険の申請を強要したりする事例が後を経ちません。その原因の大きな要因として、介護保険対象者になった場合に国庫負担基準が激減(ほぼ介護保険の区分5の額が差し引かれる)するという問題が長年指摘されながら放置されています。こうした実態を踏まえて引き上げをお願いします。 - 障害児の国庫負担基準を上げて下さい。
障害児は障害支援区分がないこともあり、障害児の国庫負担基準は、障害の種類や程度に関係なく一律となっています。それも障害者に比べ著しく低いため、特に医療ケア児のニーズに十分対応できず、親の負担が大きく離職せざるを得なくなったりするなど、身体的、精神的、経済的負担が続いています。医療的ケア児など重度な障害に対応できる国庫負担基準を新設して下さい。また、重度訪問介護を行動援護や同行援護と同様に年齢制限を撤廃することも併せてご検討下さい。
2. 地域移行支援と地域生活支援拠点の強化・充実
施設からの地域移行について、この40〜50年の間に身体、知的、精神それぞれの支援団体の独自の取り組みもあり、またこの間、作られた施設移行、地域定着支援事業の成果もあり、徐々にではあるが地域移行は行われています。近年は最重度の行動障害者や精神障害者の地域での自立生活も実現しつつありますが、これには、地域定着後もさらに手厚い生活支援や、金銭管理、対人関係のトラブルの処理などに多大な継続的支援が必要となっており、相談支援も介護サービスもこれまでの報酬単価と仕組みの範囲ではとても対応しきれず、地域の社会資源の連携が不可欠ですが、ほとんどが手弁当で行っているような状況です。これを解決し、地域移行を促進するためには、各障害種別に対応可能な事業所と地域移行のスペシャリストを確保できるよう、先の要望事項と併せて、次のような対策が必要と考えます。
- 地域生活支援拠点の強化・充実には箱物を建てるよりも面的整備を強化・充実することとし、例えば、障害者の地域移行の拠点相談事業所を「地域移行センター(仮称)」として、人口10万人に対して1カ所設置する。
- この1ヶ所の拠点「地域移行センター(仮称))には、身体、知的、精神、難病、子供の障害者に対応できる職員「地域移行コーディネーター(仮称)」を5名ずつ配置する。
(例)人口50万の八王子市では5ヶ所の拠点で合計25名の職員配置している。(別紙参照) - 地域移行センター(仮称)に地域移行コーディネーター(仮称)が配置できる予算が必要
- 地域移行センター(仮称)の事業費としては、地域移行、定着支援事業費と共に活動経費を1ヶ所につき2,500万円/年程度。
ベテランのコーディネーター(地域移行コーディネーター)1名分の人件費込みで、年額500万円。
ベテランのコーディネーター(地域移行コーディネーター)を一事業所に5人として、5人×500万=2,500万円/年 - 地域移行コーディネーターは、相談支援専門員研修を必須とし、追加研修を課すなどを検討
- 地域移行、退院の意向調査の定期的実施と、それに基づく具体的な移行計画の義務化
- 計画の達成度に応じて自治体を評価する仕組み
- 地域移行支度金(準備金)制度の新設(敷金礼金、家具、家電、当面の介護費用等:参考ソウル市)
- 入所施設職員の地域生活支援人材への転向を支援する仕組み
- 地域移行の際、施設入所時の居住地の自治体に費用負担を一元化するか、一部負担を課す仕組み
- 地域生活支援拠点の面的整備には、地域移行センター(仮称)に地域移行コーディネーター(仮称)が配置できる予算が必要
- 地域移行コーディネーターは、相談支援専門員研修を必須とし、追加研修を課すなどを検討
以上
事務局次長 白井誠一朗
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