【報告】第2回 公共交通機関のバリアフリー基準等に関する検討会
2020年09月02日 バリアフリー
9月1日(火)に第2回公共交通機関のバリアフリー基準等に関する検討会(オンライン)が開かれました。
▽第2回公共交通機関のバリアフリー基準等に関する検討会(外部リンク:国交省)
この検討会はバリアフリー法に基づく各種基準を検討するもので、本年5月にバリアフリー法が改正されたので、主に改正事項の基準への反映を議論しています。さらに、8月28日に新幹線のバリアフリー対策検討会のとりまとめが出ましたので、この取りまとめをガイドライン等に反映させることも今回の大きな目的です。
議題は下記の3つです。
(1)ソフト基準の方向性及びガイドラインの草案について
(2)新幹線の新たなバリアフリー対策について
(3)視覚障害者のエスカレーター利用のための誘導案内方法に関するワーキンググループ(WG)の設置について
(1)ソフト基準の方向性及びガイドラインの草案について
本年のバリアフリー法改正で、新たに公共交通事業者等のソフト基準適合義務が創設されました。これは、公共交通事業者等に対して、スロープ板の適切な操作や照度の確保等を職員がしっかりできるようにしておいてください(役務の提供)、というものです。その基準を省令に盛り込む具体案が示されました。
基本的な考え方は下記の2つです。
- バリアフリー化された旅客施設・車両等の機能が十分に発揮されるよう、ハード基準と対応するかたちでバリアフリー設備の操作方法や維持管理に関する基準を設ける
- 人的対応を行うことを前提にハード基準を適用しないこととしている場合は、当該人的対応を適切に実施すべき旨の基準を設ける
例えば1は、電車やUDタクシーに乗るときの渡し板を職員が適切に扱えるようにする、聴覚障害者に文字で意思疎通を図るように設備を整えておく(券売所、案内書、保安検査場、バス、船舶の売店等)といったものです。2はちょっとわかりにくいですが、もともとハードの基準で職員が対応するから設備を設けなくても良い、とされているものがあるのです。
たとえば、券売機で、高齢者・障害者が利用できる券売機の代わりに職員が対応するものとか、通路で視覚障害者誘導ブロック等を設置する代わりに相互に視覚障害者を誘導案内する職員等がいる区間(どんなとこ?)です。そういうところも、しっかり職員が対応しなさいよ、と省令に書くということです。
なお、ソフト基準に違反している事実があると認められる場合は、 是正命令(法第9条第3項)が出され、是正命令に違反した場合は300万円以下の罰金 (法第59条)ということです。今後のスケジュールは、今年の11月に公布され、来年4月1日に施行されます。
(2)新幹線の新たなバリアフリー対策について
8月28日(金)にまとまった「新幹線の新たなバリアフリー対策について(とりまとめ)」について説明があり、具体的な省令の文案が示されました。これまでは新幹線だけの基準はなく、都市間鉄道という枠でデッキ付き特急車両等と同じ分類でした。
それを、今回は新幹線だけに特化した基準を新たに盛り込んでいます。この内容については、とりまとめを反映させたもので、具体的なレイアウト図も盛り込まれています。委員からは、車椅子席に背当てが必要ではないか、多目的室が狭い車両の場合は、車椅子スペースに車いすを置かせてほしい、車いすだけでなく多様な障害者が利用しやすいバリアフリー化の検討も必要といった意見が出されていました。
私からは、デッキ付き特急車両も予約・発券に長時間かかる、web予約ができない、座席数が少ないといった新幹線と同じ問題があり、今回の新幹線の基準をデッキ付き特急車両の基準にも広めていってほしいと要請しました。
(3)視覚障害者のエスカレーター利用のための誘導案内方法に関するワーキンググループ(WG)の設置について
視覚障害者のエスカレーターへの誘導案内について、2018-19年度の基準検討委員会で移動等円滑化基準とガイドラインの改訂について検討を行いました。その中で、技術が開発途上であること、有効性が確実に証明されているわけではない等の理由で、誘導案内方法について検討課題となりました。
また、本年の第1回準等検討会でも過去の議論の整理を行うべきとなったことから、現行ガイドラインの内容を充実させることを目的にワーキンググループ(WG)を立ち上げることになりました。
検討内容は、エスカレーターへの誘導用ブロックの敷設促進に向けて、敷設方法案や誘導案内を行うエスカレーターの対象範囲を検討し、視覚障害者による検証結果を踏まえた敷設の考え方・事例をガイドラインにおいて示すということです。
この日議論された案はパブコメを経て改正されます。新幹線に関する整備ガイドラインについては、できるだけ早期に改正し、来夏の東京オリンピック・パラリンピックまでにバリアフリー化された新幹線車両の導入を目指しているということです。すべての新幹線車両が新しい基準を満たしたものになるまではまだまだ時間はかかりますが、確実に整備を進めていただきたいと思っています。
事務局長 佐藤 聡