質問状
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2003年12月26日 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
内閣府障害者施策推進本部長 小泉 純一郎 殿 厚生労働大臣 坂口 力 殿 文部科学大臣 河村 建夫 殿 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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質問状 医師法等の障害者欠格条項見直し 中間年(2004年)にあたり、 経過・現状・今後について |
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はじめに 2001年7月に、医師法や薬剤師法など27法令の障害者欠格条項を見直した法律が施行されました(注1)。同法は、施行後5年をめどとして状況を把握検討し必要な措置を講ずる旨の附則を定めているので、今、折り返し点(2004年1月)にさしかかっています。 試験が欠格条項に代わる障壁にならないようにすることや、補助的手段の導入・修学就業環境の整備について決議した、法成立時の附帯決議(注2)、障害者施策推進本部申し合わせ(注3)もふまえて、中間的な状況把握と課題の整理をすることが、客観的に必要となっています。 そのために、下記の質問事項について、2004年1月末までにご回答いただくとともに、2004年2月末までに、今後にむけて話し合う機会をもつことを申し入れます。 |
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◆内閣府障害者施策推進本部への質問 1. 一連の欠格条項見直し後の、実際上の変化と現状、今後の課題について、認識と見解を示してください。 2.2001年6月12日付の、障害者施策推進本部申合せ「障害者に係る欠格条項見直しに伴う教育、就業環境等の整備について」で掲げたことの実施のために、どのような手段をこうじていますか。 |
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◆厚生労働省への意見と質問 (意見) 医師国家試験、歯科医師国家試験の、障害者にかかわる受験の欠格条項は、2001年に削除されていますが、現在もそのことがよく伝わっていず、「本当に受験できるか」という質問や不安の声が、私たち障害者団体、関係団体にも寄せられています。受験できること、そして、受験者には試験時に具体的にどのような配慮実施の用意があるのかも、一般広報としてきちんと伝える必要があります。 試験を準備する上では、一般広報や各学校への通知によって、上記の情報が一般の人々や受験希望者本人に広く速やかに届くようにし、本人がそれぞれのニーズを申し込めるようにすることが、第一に必要なことです。また、視聴覚言語に障害をもつ人にも伝わり、かつ障害当事者が連絡をとりうる形かどうかも、点検しなければなりません。例をあげると、試験に関する問合せ先の記載が、通例、電話番号や住所だけになっています。これでは、聴覚言語障害者は、ほかの人たちが電話で迅速に連絡をとることができるのに対して、郵便で日数をかけて問い合わせるか、代わりに電話をかける人を探さなければならず、公平を欠きます。聴覚言語障害者からのファックスやメールでの問い合わせを可能にすること、及び、そのための連絡先を明記することが必要です。 しかし上記のような広報は現状ではあまり行われていないようすです。一方で、看護師などについて、試験の準備を理由に、2001年に各学校を通じて在学する障害者を調査した経過があります(注4)。同様のことが省や試験実施主体の手で広く行われてきました。本来必要なことは、本人を含めて情報がきちんと届くことであって、学校等にこのような調査を行うことには個人情報保護の観点からも疑義があります。 試験時の配慮については、2003年実施の医師国家試験を例にとると、検討過程では主に視覚障害者について、試験方法を考慮されたとのことでした(注5)。肢体障害者や、内部障害そのほかの病気がある人にとっては、障害があるドライバーに対応した駐車場、交通機関のアクセスなど試験会場までのアクセス、および、会場のスロープやエレベーター、車いすで使用できるトイレ、受験者のニーズに応じて別室受験が可能なことなど、物理的環境も重要です。聴覚障害者の場合、筆記試験であっても、伝達事項などは、板書や手話、ペーパーがなければうまく伝わらないことがあります。もし口述試験、面接試験や実地試験がある場合は、手話、要約筆記は当然、不可欠となりますし、補聴援助システム(注6)へのニーズもあることをふまえて実施されるべきです。 (質問) 1.受験とその結果の概要について 障害者に係る欠格条項見直しが行われ、現在も相対的欠格が残っている各資格免許のうちで、厚生労働省が管轄する各試験の、直近の試験において、「心身の障害」がある人は何名が受験し、結果として何名が合格し、何名が免許交付を受けていますか。別表1に記入して示してください。 ▼別表1「直近の試験における障害者の受験、合格、免許交付の人数」 2.試験の広報について 直近の試験において、試験の広報は、障害がある人の受験を想定して行われましたか。また、その方法、記述内容は、法改正以前と比べて変化がありましたか。具体的な記述内容を示し、お答え下さい。 記述内容の実例 「視覚、聴覚、音声機能若しくは言語機能に障害を有する者で受験を希望する者は、○年○月○日までに厚生労働省○○室に申し出ること。申し出た者については、受験の際にその障害の状態に応じて必要な配慮を講ずることがある。問い合わせ先 住所 ○○室 電話番号」 3.試験時の配慮について ア) 試験を実施する際に、障害者のニーズに対応した配慮を事前に用意していたか、また、実際に実施した配慮はどのようなものだったのかについて、別表に記入して示してください。 ▼別表2「直近の試験における試験時の配慮」 イ) 薬剤師試験で、補聴器装用を一時拒否された例が本人の談話入りで報じられています(注7)。事実関係をどう把握していますか。今後についてはどのような認識、指針をもっていますか。 4.試験合格から免許交付までのプロセスについて ア) 2003年度の医師国家試験を例にとって、障害がある人が受験し、合格し、免許交付を受けるまでのプロセスを、障害がない受験者の場合と対照しながら、時系列で説明してください。 イ) 免許交付を決定する審査において、具体的にどのような基準で判断が行われたかを示してください。 |
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◆文部科学省への意見と質問 (意見) 2001年6月、衆議院は「障害者に係る欠格事由の適正化を図るための医師法等の一部を改正する法律案」の附帯決議として、「大学・専門学校等の教育・養成機関が、受験と教育の両面において必ずしも障害者に開かれてはいない現状にかんがみ、これら教育・養成機関での障害者に配慮した受験制度及び就学環境の改善を進め、障害者の資格取得支援のための条件整備について所要の措置を講ずること。またこの趣旨を各教育機関に周知徹底するよう、関係機関と連携すること」を、法案と併せ採択しました。同月に、「障害者施策推進本部申合せ」として「障害者に係る欠格条項見直しに伴う教育、就業環境等の整備について」でも「入学・入所試験、卒業試験において資格取得試験と同様の配慮を行うとともに、受講に際して手話通訳、移動介助等の便宜の提供や点字教材、障害に適応する教育機器の配置などの支援を行う。校舎等のバリアフリー化を促進する(部分引用)」等を確認しています。 これらが言葉の上だけでなく現実に行われるには、具体的な方策が必要だと考えます。 (質問) 1.高等教育機関の入試について 大学入試センター試験および、各高等教育機関の入学試験における、障害や病気がある人にむけた試験広報、受験上の必要な配慮の実施について、具体的にどのような働きかけをしていますか。 2.高等教育機関の修学環境の整備について 「障害者施策推進本部申合せ」においても、各高等教育機関の、障害や病気がある人の修学環境の整備が課題となっていますが、各自治体・各学校などに対しては、どのような働きかけをしていますか。 |
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以上 |
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注記 |
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注1 「障害者等に係る欠格事由の適性化等を図るための医師法等の一部を改正する法律(平成13年6月29日成立・法律87号 7月16日施行)」 附則第2条 政府は、この法律の施行後5年を目途として、この法律による改正後のそれぞれの法律における障害者に係る欠格事由の在り方について、当該欠格事由に関する規定の施行の状況を勘案して検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。 注2 障害者に係る欠格事由の適正化を図るための医師法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議 平成十三年六月二〇日 衆議院厚生労働委員会 政府は、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。 一、障害者の社会参加と平等、人権の尊重という今次制度改正の根本理念の具現化に向け、政府は終期の迫った「障害者対策に関する新長期計画」及び「障害者プラン〜ノーマライゼーション七か年計画」を完全達成するとともに、引き続き次期計画及び整備目標を策定し遅滞なき総合的な障害者施策の推進に最大限の努力を講ずること。 二、我が国の本格的なIT社会への展開に際し、新たな技術革新が障害者の資格取得や就業における格差を生起することのないよう、デジタル・ディバイドの解消とユーザビリティに基づいた開発、ユニバーサルデザインの普及・普遍化に努めること。また、政府調達等により、その推進に努めること。 三、各種資格試験においては、これが障害者にとって欠格条項に代わる事実上の資格制限や障壁とならないよう、点字受験や拡大文字、口述による試験の実施等、受験する障害者の障害に応じた格別の配慮を講ずること。 四、大学・専門学校等の教育・養成機関が、受験と教育の両面において必ずしも障害者に開かれてはいない現状にかんがみ、これら教育・養成機関での障害者に配慮した受験制度及び就学環境の改善を進め、障害者の資格取得支援のための条件整備について所要の措置を講ずること。またこの趣旨を各教育機関に周知徹底するよう、関係機関と連携すること。 五、本法改正を実効あるものとする観点から、障害及び障害者の機能を補完する機器の開発、職場介助者等の職場における補助的手段の導入に対する事業主への助成など、関係行政機関が一体となって総合的な障害者の就業環境の整備に努めること。 六、現在の厳しい雇用環境にかんがみ、障害者に対する差別・偏見を除去するための啓蒙・啓発を更に進め障害者雇用の促進を図るとともに、障害を理由とする解雇を無くすよう厳しく指導すること。さらに、とりわけ立ち遅れている精神障害者雇用の進展のため、障害者雇用促進法における雇用率の制度の在り方も含め、雇用支援策の充実について早急に検討を進めること。 七、本法改正に伴う省令等の策定に当たっては、障害者団体、関係団体など幅広い分野からの意見聴取等を行い、これを反映するよう努力し、障害者欠格条項の見直しの本来の趣旨に照らし、相対的欠格条項の的確な運用に齟齬の生じないよう努めること。 八、免許を与えないこととするときの不服申し立てについては、まず本人の意見を十分に聴くとともに、専門家の意見を聞くことを含め、適切な措置を講じ、障害者団体、関係団体の意見を聴取しつつ、事例の積み重ねを通じて、判断の在り方を明らかにするよう努めること。 九、障害者に係る欠格条項の見直しの趣旨にかんがみ、その実効性が確保されるよう、個人支援技術の開発普及を急ぎ、できうる限りの補助手段を用い環境を調整してその人の望む姿での社会参加を実現することを、一層推進すること。 十、障害者の自立を促進するため、所得保障及び雇用確保の在り方について速やかに検討を進めること。 右決議する。 注3 平成13年6月12日障害者施策推進本部申合せ 「障害者に係る欠格条項見直しに伴う教育、就業環境等の整備について」 障害者に係る欠格条項については障害者施策推進本部決定(平成11年8月)に沿って見直しが進められているところであるが、当該見直しにより障害者の資格取得等の機会が実質的に確保されるためには、教育や就業環境など必要な条件整備を併せて推進する必要がある。このため、関係省庁においては、それぞれの資格制度の実態に応じて、以下の事項について適切な措置を講じるよう努めるとともに関係団体に対し協力を要請するものとする。 資格取得試験 障害者の持つ知識、技能が適切に判定されるよう障害の態様に応じて点字等の方法により試験を実施するとともに、受験に際しては障害の態様に応じて手話通訳や移動介助等による支援を行う。 実技試験においては、福祉用具等の補助的手段の活用に最大限配慮する。 教育・養成 入学・入所試験、卒業試験において資格取得試験と同様の配慮を行うとともに、受講に際して手話通訳、移動介助等の便宜の提供や点字教材、障害に適応する教育機器の配置などの支援を行う。 校舎等のバリアフリー化を促進する。 障害を補う補助機器の活用に関する指導、コミュニケーション能力や運動・動作の基本的技能の習得に関する指導など障害のある児童生徒への教育の充実を図る。 就業環境 業務遂行・職場定着を援助する者や障害を補う補助機器の配置、職場のバリアフリー化などを促進するための支援を行う。 上記措置等を講じつつ、雇用率制度における除外率制度、除外職員制度について基本的に縮小を前提とした検討を行う。 障害及び障害者の機能を補完する機器の研究開発の促進 ※上記は内閣府ホームページ上 http://www8.cao.go.jp/shougai/honbu/kaigi002/shiryo1.html より転載 注4 省が学校を通じて行った障害者学生調査 「事務連絡 平成13年8月7日 各保健婦、助産婦、看護婦学校国家試験担当者殿」として、厚生労働省医政局医事課試験免許室室長補佐名で文書が出された。内容は、従来の障害者欠格条項に該当する学生が、障害種別ごとに各学年に何名いるかを問うもの。 注5 2002年5月7日「第1回欠格条項改正に伴う医師・歯科医師国家試験に関する検討会議事録」 厚生労働省ホームページ上 http://www.mhlw.go.jp/shingi/2002/05/txt/s0507-1.txt 注6 補聴援助システム 聴覚障害の程度にかかわらず、板書や要約筆記、筆談は共通して重要ですが、同時に、音声情報がコミュニケーション手段の柱になっている人は、補聴器(FM補聴器含む)、磁気ループ、赤外線補聴システムなどの補聴援助システムについて、高いニーズをもっており、これに応える必要があります。 なお、個人が視力を補うメガネについて、試験時に使用許可申請を求めることはなく、同様に、個人が単独で使用する補聴器については、使用許可申請を求める必要はないと考えます。 注7 7月1日 日本聴力障害新聞(全日本聾唖連盟 編集発行) 「受験で不利な扱い 愛媛の柴田さん 薬剤師試験に合格したが…」 (記事より抜粋引用) 2003年度の厚生労働省第88回薬剤師国家試験で、4級の聴覚障害をもつ柴田昌彦さん(神戸学院大卒)が合格しました。柴田さんは現在、愛媛県の調剤薬局で調剤を中心とした業務を行っており、服薬指導も開始したところです。 柴田さんは今回の受験にあたり、重要事項の板書による情報伝達、座席の前列指定、補聴器の使用許可を大学経由で求めたのに対して、試験当日は板書が不十分で座席の配慮もなく、補聴器の着用もいったん断られるという不利な扱いを受けました。 「現場で働く聴覚障害の薬剤師・医師は既に全国に数十人いるが、今後、同じ道を目指す聴覚障害学生が受験する際にこのような不当を受けることがあっては困る。改善策を探したい」と柴田さんは話しています。 |
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