公務員の欠格条項と成年後見制度


吹田市 知的障害者 復職等請求訴訟 弁護団声明
平成31年2月13日
弁護団 弁護士 東(ひがし)俊裕、東(あずま)奈央、荒木晋之介、渋谷有可、
関哉直人、高橋早苗、高橋昌子、民谷渉、辻川圭乃、中井真雄、長岡健太郎

1 (言い渡された判決)
 知的障害及び自閉症の障害を有する原告(大阪府吹田市在住)が、平成18年から吹田市で公務員として働いてきたが、吹田市職員の助言を受けて、成年後見制度を利用して審判を受けたところ、その公務員としての地位を失ったこと等を受けたことについて、吹田市に対し、復職を求める地位の確認、この間の給与の支払い、不法行為に基づく損害賠償請求を求めた事件について、本日、大阪地方裁判所第5民事部(内藤裕之裁判長)は、原告の請求をいずれも棄却するとして、原告敗訴の判決を言い渡した。

2 (判決の要旨)
 本判決は、障害者雇用促進法は職員の任用根拠やその性質・内容を規律するものではないとし、同法に基づく地位確認の請求を棄却した。
 また、被告による任用は「任用と任用との間に1ヵ月の期間を設けた上で、3か月または6か月の期間の任用を14回行っており、…任用の通算期間は4年6か月の長期に及んでいるのであって、必ずしも上記通達に沿った取扱いであるとは言い難い」としつつも、あくまで原告の任用は地公法22条5項の臨時的任用であり、期間の定めのない任用であるとはいえないとした。
 その結果、原告の地位確認請求についてはいずれも棄却された。
 また、平成23年に原告が公務員としての地位を失ったことに関する損害賠償請求については、原告の任用が臨時的任用にすぎず、期間満了に伴い地位が失われたに過ぎないとし、請求を棄却した。
 平成24年に原告が公務員の地位を失ったことに関する損害賠償請求についても、被告が原告に対し、期間満了後も任用が継続されると期待することが無理からぬものと見られる行為をしたとは認められないとし、請求を棄却した。

3(判決の意義と評価)
 本判決は、「被告職員が、原告が地公法上の欠格条項に該当することになったため、公務員として任用することができない旨説明した」という事実を認定しつつも、あくまで平成23年に原告が公務員の地位を失ったのは地公法上の欠格条項に基づくものではなく、任用期間満了を理由とするものであると認定した。これは、欠格条項の問題性に踏み込んで判断することを回避したものであり、紛争の実態を捉えておらず、不当である。
 また、原告の任用が期間の定めがないものとはいえないとした点は、1ヵ月の空白期間を設けた上で臨時的任用を繰り返す被告の脱法的な運用にお墨付きを与えるものであり、昨今、公務員の非正規雇用が社会問題化している中で、不当な判断である。
 更に裁判所は、被告が原告に対して不更新文言の内容を説明したと認定するが、知的障害及び自閉症を有する原告が、被告の説明を理解できたかどうかについても一切言及がない。この点においても、判決は、障害を有する原告に対する合理的配慮の観点を欠くものであり、不当である。

4(原告及び弁護団の主張)
 原告及び弁護団としては、本判決に対し控訴し、改めて大阪高等裁判所の判断を求める所存である。
 また、原告及び弁護団は、被告吹田市に対し、本判決に影響されることなく、障害者のある公務員の採用や合理的配慮の提供を含めた職場環境の整備を進めることを心から願うとともに、国に対し、原告以外にも欠格条項により失職のリスクにさらされる障害のある公務員がいることを踏まえ、速やかに公務員法の欠格条項を撤廃する法改正を行うよう求めるものである。

以上


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