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ネパール障害女性運動家ラマ・ダカルさんとの交流(後編)

2018年08月23日 障害女性

来日中のネパールのラマ・ダカルさん(障害女性協会元会長、現・全国身体障害者協会)にお聞きした話の後半をお届けします。聞き手はDPI女性障害者ネットワーク代表の藤原久美子(写真左端)・副代表の佐々木貞子(写真右端)、両名ともDPI日本会議常任委員です。障害者権利条約(CRPD)パラレルレポ―トの作成とネパールでの障害のある女性や少女への性暴力の現状、性・生殖の健康サービスの向上や医療スタッフに向けた研修等について伺いました。

【ラマさんの話の続き】
私たちの団体では、上級プログラムとして、リーダーシップの向上についての研修も行っています。自分たちの地域で活動できるリーダーになり、障害者権利条約の内容を実現するよう地方自治体で要望し、どう交渉していくかについて取り組んでいます。今はSDGs(持続的な開発目標)ができましたので、ゴールの5が障害女性の課題を話題にするのに使えます。地域ごとの協議会に障害者の権利についての情報を書いたブックレットを送るなどの活動もしています。SDGsを見れば、障害女性のことに関係しているので、障害者権利条約とリンクさせることできますます。

●権利条約の批准、実施、審査
ネパールは障害者権利条約の権利委員会審査を今年2月に行いました。2009年に批准、施行して8年が経っています。40年前にできた障害者法をやっと去年に法改正しました。ここまで来るのに40年もかかりました。前の法律には障害女性についての項目はありませんでしたが、改正法では項目ができました。今国会で議論中の課題のために障害女性の情報提供を国会議員に行っています。ネパールは民主化の過程で、現在は連邦制の国になっているため、州の連邦という形に合わせた改正が必要です。

●障害女性に関するパラレルレポート作成
障害者団体のネットワークによるパラレルレポートとはまた別に障害女性の課題に特化したレポート1本を提出しました。このレポートには13の障害者団体が参画し、そのうつ3団体が障害女性の組織です(ネパール障害女性協会、ネパール先住民族障害女性協会、障害の権利についての女性団体)。他の種別の障害のある人たちと障害のある女性のテーマで一緒に取り組んだのはこれまでないことでした。全部で9回の団体審議を行い、ネパールの障害権利団体を代表する17人の障害権利の活動家と女性の権利の活動家と専門家が議論しました。多くの団体が参画しているため無視できない、説得力のあるレポートになりました。

パラレルレポートには特に以下の4つの課題を盛り込みました:
(1)夫・介助者・教師等による障害女性への性暴力と性的ハラスメント
(2)性と生殖の健康情報・教育の不在と使いにくさ
(3)性と生殖の健康サービスの使いにくさと障害のある女性への不親切な態度
(4)家族法の聴覚障害・視覚障害・知的障害女性への差別

ネパールでは知的障害・精神障害・視覚障害・盲ろうの女性の性的暴力の発生率が高く、加害者が他の人がいない時を見計らって侵入した事件など、性的暴行事件が家庭内や学校や施設で行われることもあります。裁判になったものの、知的障害がある被害者の女性の証言が認められず敗訴したケースもありました。レポート作成にあたっては障害のある女性や家族のフォーカスグループを通じて実態を示す証言を得ました。ただ、実態があることはわかっているのにエビデンスがなくレポートに盛り込めなかった課題があるのは残念です。

●障害のある少女の性と生殖の権利
日本で今、旧・優生保護法下で優生手術の被害にあった人たちへの謝罪・補償を求める動きがあると京都で聞きました。ネパールには優生保護法に相当する法律はありませんが、中絶は合法で、かつては親が障害のある子どもの断種・不妊手術を行うということがありました。今でも本人の了解なく手術するのはいいことだと思っている人がいます。また学校の教師が障害のある少女の子宮を取るよう強く薦めたが、家族は従わなかったという例もあります。かつては障害のある女性の人権という考え方が知られず、何か事件があっても報道はされませんでした。しかし、今ではもし事件があれば、大きく報道されます。少しずつ、人びとの意識も変わってきています。

●性と生殖の健康サービスでのスタッフ研修
他に私たちが特に力を入れていることに、障害のある女性の性と生殖の権利、医療におけるスタッフの認識改善の課題があります。例えば、
障害女性が妊娠した場合、「どうして妊娠したのか?」とか「お母さんになりたいの?」など本人に対してスタッフが否定的な発言をすることがあります。私たちは、医者に対して、さまざまな障害のある人とどのように接するかについて啓発研修を行っています。研修の導入の仕方は、最初に病院長に電話して、各部門の医者を集めてもらって研修を始めました。1年間に2回のプログラムなどを行っています。これを中央レベルでも、地方政府レベルでも行っています。さらに、まもなく予定している法律の改正時に医者への訓練の項目を入れようと運動しています。また、医療従事者養成のカリキュラムについても取り組みたかったので始めています。

ネパールは開発途上国なので、女性一般にとって医療へのアクセスが困難な状態にあります。また地方や山岳地帯に住んでいたり、先住民族や少数派宗教コミュニティに属していたり、低いカーストの出身であったりすることによる不利益の課題もあります。とりわけ障害女性は弱くて何もできない存在だと見なされています。いろいろな機会を通じて、いろいろなカーストや地域の人たちと一緒に、女性であり障害者であることという土壌で課題に取り組んでいます。権利条約審査の総括所見で、法改正や政策の議論において障害のある女性と少女を代表する組織と政府が協議するように勧告も出ましたので、政府とは定期的に話し合いをしています。

※参考資料
Rama Dhakalさんの活動についての英文記事(CMB International)
ネパールの障害のある女性の権利に取り組む(Working for the rights of women with disabilities in Nepal)」

ネパール障害者権利条約の初回報告に関する総括所見(日本語、JD仮訳)

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