障害のある人もない人も同じように暮らせる社会へ

5/17参議院国土交通委員会その①

2018年05月18日 バリアフリー

5月17日(木)10:00~12:00で参議院の国土交通委員にてバリアフリー法の改正案の参考人質疑が行われました。
秋山(中央大学研究開発機構教授)参考人からは今回の法改正における特筆すべき評価項目が挙げられました。障害者権利条約の理念を踏まえている点、ハード面とソフト面の一体整備を盛り込んだ点は評価できるとし、またこれまで基本構想の対象は駅舎及びその周辺や福祉施設等が多数あるエリアの1km範囲内と限定されていたが、マスタープランにおいては都市全域に拡充されることを評価されていました。一方、都市計画の立地適正化や地域公共交通網計画、地域包括ケアなどとの連動性が弱い点を指摘、より一体的な取り組みができるよう市町村との連携の努力が必要とのこと言及がありました。移動の連続性・安心の連続性を確保するため、鉄道駅のバリアフリー化や街の段差解消だけではなく、ICTを活かした案内サインや人的支援などとの融合、それに向けた基本計画が必要とのことでした。
今後の課題としてユニバーサルデザインを進めるためには、障害者参画型の形式的なワークショップではなく、管理者や駅員、設計者、事業者などの多様な立場の人材教育が必要であると指摘されていました。知的障害者のためのカームダウン室を例に挙げ、多様な参加者による検討会やワークショップで生まれた新たな設備もあることなどが報告されました。

國島(岐阜県高山市長)参考人からは、これまでユニバーサルデザインの街づくりに尽力してきた高山市独自の取り組みの紹介がありました。H17年に条例を制定、市民や事業者への参画、ハードとソフトの両輪での取り組みを明記し、事業者の取り組みへの認証制度を設けました。また、バリアフリー法第14条3項に基づき建築基準を強化、従来2000平方メートル以上の建築物のみならず、それを下回る建築物についても種類に応じた上乗せ、横出しを明記し、学校や保育所など規模に関わらず基準適合を求めています。施設内の通路幅の基準についても独自基準を設けていること、民間施設においては改修費の2分の1を市が助成する制度を設けていることなど官民連携のハード整備を進めているとの報告がありました。改正法案に対する意見としては、マスタープランについて重点区域の設定を義務化しないなど自治体の裁量を図れるよう自由度を設けて欲しいという意見がありました。また、歴史的価値や自然の趣の考え方に立った基準の見直しが課題であるとし、歴史的建造物を改築する場合や、観光施設においてスタッフがサポートできる場合は、適合義務を設けないなどの規制緩和を設けて欲しいとの意見がありました。

田中(一般社団法人全日本視覚障害者協議会代表理事)参考人からは、法改正における評価すべき点として社会的障壁の除去を設けたこと、事業者にハード・ソフトの両面の計画の策定を設けたこと、市町村のマスタープランの制度が創設されたことが挙げられました。一方、問題点としては移動が権利として位置付けられていない点、障害の定義が限定的になっており、知的障害者、精神障害者、難病の当事者の移動の課題が改善されるのかが曖昧である点が挙げられました。また、一日の乗降客数が3,000人以下の駅舎のバリアフリー化についても指針が示されていないこと、床面積2,000平米以下の小規模店舗の段差解消についても触れられていない点を指摘されていました。視覚障害者の鉄道利用における課題としては、昨今首都圏でも駅員の無人化が進められており、改札口での情報提供や安全な誘導が必要な視覚障害者にとっては大変不便を強いられていること、駅ホームの転落事故防止のため、ホームドアと可動式ホーム柵の設置を早急に進めてほしいとの意見がありました。

その後の質疑では主に以下のものがありました。
Q.
■山本博司議員(公明党)
市町村がバリアフリー方針を定めることができるマスタープラン制度が具体的に実施されることが重要。これまで基本構想の実施率が2割と低かったことから、地方の法整備の課題やどのように進めていくべきかについて意見を。

A.
■秋山参考人
地方においては、バリアフリーだけではなくモビリティの不十分さが課題となる。駅舎がバリアフリーであったとしてもそこに到達するまでのアクセスの充実などがなされるようマスタープランの創設の意義に期待。
■田中参考人
視覚障害者として期待するのは利用する人たちの参画や多様な立場の意見が反映されること。路線バスの廃線が相次いでいるため、地方のアクセスビリティを守っていく取り組みが必要。

Q.
■伊藤孝恵議員(国民民主党・新緑風会)
名古屋城の木造改築について市民の意見が割れているが、どう考えるべきか。

A.
■國島参考人
伝統的な国の文化財については段差を無くすこと自体に大きな課題があり、構造そのものを変えていく必要がある。文化的価値そのものがなくなる可能性もあるため、物理的な改善ではなく人的な力を加える必要もある。

Q.
■山添拓議員(日本共産党)
移動の権利について法律で明記する以前に憲法で既に掲げられている。国民のコンセンサスが得られていないため、時期尚早という回答が前回の委員会であったが、いつも権利が脅かされるのは少数派の人々である。コンセンサスという多数派も含まれるところでの理解が必要というのは矛盾するように思うが、それについてどう考えるか。

A.
■秋山参考人
交通政策基本法の中に本来は明記されるべき。フランスの移動権の法律と比較すると今回の法案はかなりレベルが高い。モビリティ全体について議論される交通政策全体において考えられるべき。
■田中参考人
障害者差別解消法が施行されているが、盲導犬利用者の6割が各種サービスの利用拒否を経験している。人権として捉える視点が盛り込まれる必要。権利としての物差しがあれば当事者、事業者、自治体としても評価しやすい。

Q.
■室井邦彦議員(日本維新の会)
我が国のバリアフリー化の課題は何か。世界最高水準のユニバーサルデザインの実現とは何か。

A.
■秋山参考人
西欧はバリアフリーの先進国と言われているが、欧米と比較しても日本は遜色ないレベルに来ている。トイレは特に充実している。鉄道駅のエレベーター設置率はロンドンに勝り、アメリカよりは少し落ちる。名古屋城の木造改築については、歴史家と建築家、障害者がきちんと話し合うべき。イギリスはどこをバリアフリーにするかなど徹底して議論している。知恵を使って議論を尽くしていく姿勢がないことが問題。多様な議論をする場が必要。

Q.
■青木愛議員(希望の会)
今回の法改正は東京オリパラを契機としているので大都市圏でのイメージが強いが、地方の駅舎のバリアフリー化を進めていく必要もある。地方は一日の乗降客数が3,000人に至らない駅がたくさんある。3,000人以下の駅舎もバリアフリー化を徹底してするべきであるが、その点をどう考えるか。

A.
■秋山参考人
地方のバリアフリーを進めるにあたっては、駅がそもそも無くなると意味が無い。駅に行くまでのアクセスに問題がある場合も多い。地域のモビリティそのものについても議論が必要。廃線が相次いでいる地域もある。国交省の都市計画に網形成計画があるが、地方は想定されていない。モビリティの救済とバリアフリーの救済、両方を議論していく必要。

【感想】
今回の審議では都市部と地方とのバリアフリー整備の格差やマスタープラン創設への期待、ハード面とソフト面の両輪の重要性が主に意見提起されていました。また、ICTやAIなどの導入によるバリアフリー技術の新たな可能性についても言及されているのが印象的でした。
今、まさしくタイムリーとなっている名古屋城の木造改築問題についても言及がありました。歴史的価値を守りつつ、誰もが排除されないバリアフリー整備の実現にはさまざまな立場の人が議論に参画する必要があるとの意見が出ました。私個人の意見としましては、誰もが歴史的価値を享受でき、アクセスできる建造物にすることそのものが、何百年先にとっての歴史的価値に繋がると考えます。歴史的建造物に限らず、街づくりすべてにおいて既存の価値や目先の効率性などに捉われず、後世に遺し続けられるものとするべきと考えます。今回の法改正がその後押しになればと感じました。

(自立生活センターリアライズ 辻田奈々子)

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