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4.17衆議院国土交通委員会の傍聴報告

2018年04月18日 バリアフリー

4/17(火)午後、衆議院の国土交通委員会が開催され、バリアフリー法改正案について4名の委員による石井国土交通大臣への質疑が行われました。質疑内容は、DPI日本会議(以下、DPI)が改善を求めてきた本法案「11の課題」のうち6つを取り上げ、修正案や省令等での改善を求める内容となりました。以下、課題ごとに主な質疑の内容をまとめました。

1.建築物関係
(1)小規模店舗のバリアフリー化
・道下委員(立憲)、森山委員(立憲)、伊藤委員(希望)から、12年ぶりの法改正にも関わらず、基準適合義務(バリアフリー化の義務)を現行の床面積2000㎡以上の店舗のみとした理由について質問があった。伊藤住宅局長は、①小規模店舗にとっては、スペース上の制約や経済的負担が過重であること、②都道府県委任条例により地域の実情にあわせ対象規模の引き下げが可能(14都道府県6地区で実績あり)、を主な理由とし本法案での基準引き下げはしないとの認識を示した。道下委員からは、①については新規店舗への基準義務とすれば費用は最小化できること、②の地域まかせでは日本全体のバリアフリー化につながらないとし、捕捉率を踏まえ国が旗振り役を担う重要性を強調した。
(2)公共性の高い地域施設としての学校のバリアフリー化
・森山委員(立憲)、伊藤委員(希望)から、熊本地震等の際に障害者が避難所である学校にアクセスできなかった教訓を踏まえ、本法案により一般の学校もバリアフリー義務化する点について質問があった。伊藤住宅局長は、①避難所指定は建築後にされるため建築時に適合義務を課すことはなじまない、②学校といっても幼稚園~専門学校・大学まで幅広く一律の義務化は困難、③地域の実例に応じ条例で義務化が可能(12都府県6地区で実績あり)、と答弁。森山委員は、②について、せめて一時避難所となる可能性が高い地域の小中学校を優先的にバリアフリー義務化すべきとし、伊藤局長は地域での条例による義務化を促進するとした。
(3)ホテルのユニバ―サルデザイン化
・伊藤委員(希望)から、2020年の東京オリパラに向けバリアフリー対応の客室が圧倒的に不足している現状を踏まえ、基準適合義務を課すべきとの認識が示された。伊藤住宅局長は、検討会の開催やヒアリングを進めており、今年の夏をめどに見直す予定であると述べた。

2.地方のバリアフリー整備が進むのか?基本理念の充実と移動の連続性の明記を
(1)「移動の権利」の明記
・道下委員(立憲)、伊藤委員(希望)から、本法案で「移動の権利」を明記しない理由について質問があった。石井大臣は、「権利として法律に規定する以上、誰にどこまで何を保障するか、保障する責務を誰がどこまで負うか、財源をどう確保するかなどを明らかにする必要があるが現状では困難」と従来通りの認識を示し、バリアフリー法のような実定法の中で「移動の権利」を規定することは時期尚早との見方を示した。
・森山委員(立憲)から、移動権の重要性に関する認識や、今後の検討可能性につき問われ、石井大臣は「移動権の重要性は理解している」「審議会での議論を見守りたい」との答弁があった。
(2)移動の連続性の確保
・道下委員(立憲)、森山委員(立憲)から、本法案で「移動の連続性の確保」を明記しない理由について質問があった。由木総合政策局長は、移動の連続性の確保は本法案の目的のひとつであり、市町村によるマスタープラン策定を促進し、面的改善に努めたいと述べた。

3.交通関係で取り残された課題
(1)空港アクセスバス・長距離バス
・道下委員(立憲)が、リフト付きの空港アクセスバス・長距離バスがわずか4台のみである現状を指摘し、本法案で法の基準適用対象とする予定があるかを質問した。奥田自動車局長は、本法案には直ちに明記されないが、補助金・税制を活用し、ガイドライン等により導入促進を図ることを明言した。
(2)音響式信号
・伊藤委員(希望)が、設置率わずか9%の現状を指摘し、今後の見通しを聞いた。長谷川審議官(警察庁)は、要望に基づき整備を進め、法改正踏まえて都道府県警察を指導していくこと、生活関連経路の見直しなどあれば積極的に対応したい旨答弁した。

4.駅ホームの安全性向上と単独乗降可能な整備
(1)安全性向上
・宮本委員(共産)より、視覚障害者のホーム転落事故防止策の不足について、国交省より鉄道事業者に徹底した指導をすべきとの指摘がなされた。石井大臣は、ハード・ソフト両面による対策を今後も強化すると明言。藤井鉄道局長もホームドア設置の重要性を認め、今後もバリアフリー促進のために必要な支援をするとした。
(2)単独乗降可能な整備
・伊藤委員(希望)より、ホームと車両との段差・隙間解消に向け、単独乗降が可能な数値基準を明確化できないか、との旨の質問があった。藤井鉄道局長は、国土交通省として検討を開始しており、検討結果をできるだけ速やかに反映させていきたい、と明言した。

5.障害者の定義
・森山委員(立憲)、伊藤委員(希望)より、本法案の障害者の定義が「身体の機能上の制限を受けるもの」と医療モデルに基づく書きぶりとなっており、障害者基本法と定義を同一にすべきとの指摘がされた。由木政策局長は、①2006年の法改正で、知的、精神、発達も含めすべての障害者が対象となったとの認識であること、②本法案で障害者の定義は設けていないこと、③本法案の趣旨は「身体を用いる活動に際しての負担を軽減するための措置をはかるもの」であるからと述べ、現行の書きぶりを維持する姿勢を見せた。

6.3年ないし5年毎の見直し
・伊藤委員(希望)より、本法案の確実な見直しを実現する必要性について質問があった。石井大臣は、①本法案の附則で施行後5年を経過したら必要な見直し措置を講ずる規定を設けたこと、②54条の2で評価会議を新設した点に触れ、施行後の状況を注視するとした。

◎評価点:評価会議の新設について(54条2)
・障害当事者を構成員とした定期的な評価会議が新設された点について、伊藤委員(希望)が評価をしつつ、構成員の想定について質問した。由木政策局長は、①障害種別・特性に応じた意見をすくいあげること、②会議運営の方法も含め、当事者の声を聴きながら実効性のあるものにしたい、と述べた。石井大臣も、障害当事者が参画し施策に反映させることの重要性について触れ、評価会議が「評価」だけに終わらず施策への反映までを担う効果的なものにしたいと意欲を見せた。

【感想】
・議員の皆さんによる質疑の内容が、私たちが求めてきたものをほぼカバーする形でなされたことに驚きました。議員の皆さんへの事前説明・ロビーイング活動が、わたしたちの声を国会に確実に届け、政策づくりに影響を与えることを実感した。少しでもいい法案を通し、少しでもよい現実を作り出していくには、当事者として何をすればいいのか。考え続け、動いていきたいなと思いました。

                                                  (特別常任委員 曽田夏記)

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