障害のある人もない人も同じように暮らせる社会へ

バリアフリー法 参議院本会議 傍聴報告(5月11日分)

2018年05月12日 バリアフリー

5月11日(金)10時~12時、参議院本会議にて、バリアフリー法改正法案の代表質問が行われました。まず本会議の冒頭に、石井啓一国土交通大臣より本法律案の概要について下記のように趣旨説明がありました。

1. 基本理念として、本法に基づく措置が社会的障壁の除去及び共生社会の実現に資するよう行われるべき旨の規定を設ける。
2. 公共交通事業者等によるハード対策及びソフト対策の一体的な取り組みを推進するための計画制度を創生する。
3. バリアフリーの街づくりの向けた地域における取り組みを評価するため、市町村が移動等円滑化促進方針を定める新たな仕組みを設ける。
4. さらなる利用しやすさの確保を図るため、一般貸切旅客自動車運送事業者等を本法の適用を受ける事業者に追加する。
5. 駅等に加え、道路や建築物等を含む幅広いバリアフリー情報の提供を推進する。
6. 高齢者、障害者等が参画し施策内容の評価等を行う会議を設けること等を規定する。
7. その他、これらに関連して所要の規定の整備を行う。

質疑内容については、DPI日本会議(以下、DPI)が改善を求めてきた本法案「11の課題」のうち、下記の内容が取り上げられました。

■小規模店舗のバリアフリー化:伊藤孝恵(国民民主党・新緑風会)、川田龍平(立憲民主党・民友会)
新規開店の店舗に限って整備を義務付けるだけでも2020年までにかなりの改善が見込まれるがどうか。また、自治体任せにするのではなく、国として特定建築物も基準適合義務対象とし床面積基準を見直すべきではないか。
□回答(石井国土交通大臣)
スペース上の制約や費用負担の問題を考慮すると新設の場合であっても全国一律にバリアフリー基準への適合を義務付けるのではなく地域の実情に応じて条例により適用することが適当と考える。

■公共性の高い地域施設としての学校のバリアフリー化:高瀬弘美(公明党)、川田龍平(立憲民主党・民友会)、室井邦彦(日本維新の会)
災害時に避難所になる学校等の施設をバリアフリー基準の適合義務の対象とするべきではないか。
□回答(林芳正文部科学大臣)
避難所となる学校施設におけるバリアフリー化の重要性や整備における留意事項、事例集等を取りまとめ通知し学校設置者の取り組みを促している。新築時はもとより既存移設においても現行の助成制度による財政支援を行う等バリアフリー化を推進している。
□回答(石井国土交通大臣)
災害時に避難所となる学校は建築後に避難所として指定されることが一般的であり、また学校には私立や公立、幼稚園から大学、専門学校まで様々なものがあることから全国一律にバリアフリー適合を義務付けるのではなく地域の実情に応じて条例により義務付け対象に追加することが適当と考える。条例を広げるため地方公共団体に働きかけを行う。

■ホテルのユニバーサルデザイン化:基本理念のさらなる充実(1条2基本理念):伊藤孝恵(国民民主党・新緑風会)
ホテルのバリアフリールームが全体の3割という現状を2020年までの残り2年でどう克服していくのか。
□回答(石井国土交通大臣)
既存施設の改修に関するバリアフリー設計のガイドラインの普及や助成措置等によりバリアフリー化を推進する。

■地方のバリアフリー化:高瀬弘美(公明党)、伊藤孝恵(国民民主党・新緑風会)、室井邦彦(日本維新の会)
国の責務として、都市部と地域とのバリアフリー格差の解消に向けてどのような目標を設定し具体的な取り組みをどう進めて行くのか。
□回答(石井国土交通大臣)
出来るだけ多くの市町村でマスタープランを作成してもらえるよう、国がガイドラインを示す、先進的な事例の情報提供、マスタープラン作成経費の助成、広域的な見地による助言等の援助等の取り組みを行う。
利用者数3,000人以上の駅における段差の解消等、2020年度までに原則として全ての駅で実現することを目標としており、まずはこの目標の実現に全力で取り組む。それ以外の駅についても利用の実態等踏まえて取り組んでいる。2021年度以降の目標について検討する際には都市部、地方部それぞれの課題等に適切に対応する。

■基本理念のさらなる充実(1条2基本理念):高瀬弘美(公明党)、伊藤孝恵(国民民主党・新緑風会)、川田龍平(立憲民主党・民友会)
高瀬議員 ― 障害者のみが遠回りのルート、長時間待たされる、隔離された席等、障害者と健常者を分けて整備されたものを例に、障害の有無に関わらず分け隔てない真の共生社会の実現についてどのように考えるか。
□回答(石井国土交通大臣)
今後目指すべき社会の姿として、全ての国民が年齢、障害の有無、その他の事情によって分け隔てられることなく共生する社会を実現することが重要であり、高瀬議員の指摘の通りと考えている。

伊藤議員 ― 障害者基本法と障害者総合支援法にはある「等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのっとり」という文言がまるごと抜け落ちている点を指摘した上で、本改正案第一条2の基本理念、障害者基本法第一条の目的、障害者総合支援法第一条2の基本理念は共有されるべきであり、本改正案にも人権の共有姿態の明記が必要ではないか。
□回答(石井国土交通大臣)
障害者基本法や障害者総合支援法は障害者の権利を守る必要性から障害者そのものを対象として定められたものである。バリアフリー法は障害者のみならず高齢者や健常者についても広く対象としている。同様に対象者をより広く捉えている交通政策基本法では基本的人権について改めて規定していないことから整合性を図るものとしている。

川田議員 ― 障害者差別解消法との連携を明確にすべきではないか。
□回答(石井国土交通大臣)
バリアフリー法は障害者について障害者差別解消法が求める必要な環境の整備を公共交通機関等における移動等の円滑化を図ることにより具現化するものである。バリアフリー法に基本理念の規定を設け社会的障壁の除去に資することを旨として事業者等がバリアフリーの取り組みを進めるべきことを明文化する。これによりバリアフリー法と障害者差別解消法の連携が従来より一層明確になる。

■「移動の権利」の明記:川田龍平(立憲民主党・民友会)、山添拓(日本共産党)、室井邦彦(日本維新の会)
障害者権利条約には移動の自由、IPCガイドラインには移動の権利は基本的人権と明記されていることから、全ての人の移動の権利を保障することは国際基準である。よって本法にも移動の権利を明記すべきではないか。
□回答(石井国土交通大臣)
平成19年の障害者権利条約の署名、平成23年の障害者基本法の改正等と時期を同じくして平成25年に交通施策基本法が制定された際、関係審議会において議論が行われた。この際保障する権利の内容や保障する責務を有する主体、権利を保障する仕組みや財源の確保について権利として規定できるだけの国民のコンセンサスが得られていないとして、移動権を法定化することは時期焦燥とされた。この状況は現在においても尚変わっていない。
□回答(加藤勝信厚生労働大臣)
障害者も含め国民一人一人が行きたいと思うところへ自由に移動できるようにすることはその思いや能力を社会的障壁なく実現する観点からも社会参加を広げている観点からも重要である。障害者総合支援法に基づき、移動に困難がある方に必要な支援を行っている。また、障害者差別解消法においても合理的配慮の規定が設けられており民間事業者も含め社会におけるバリアを取り除くことが求められている。こうした取り組みを通じて障害者が希望に応じて移動できるよう取り組んで行く。

■障害の定義:伊藤孝恵(国民民主党・新緑風会)、川田龍平(立憲民主党・民友会)、室井邦彦(日本維新の会)
本法案では日常生活または社会生活に身体の機能上の制限を受ける者となっているが障害者基本法では心身の、と書かれている。本法案は身体のみで知的障害等は含まれないのか。もし含まれるのであれば障害者基本法、障害者総合支援法、障害者差別解消法の三法と、バリアフリー法とで異なる障害者の定義が存在するのを心身の機能上の制限を受ける者に統一してはどうか。
□回答(石井国土交通大臣)
旧バリアフリー法においては身体障害者と限定していたが、現行法では障害者と改め、知的障害者、発達障害者、精神障害者を含めて対象としている。本法では措置の対象を高齢者、障害者等と規定しているが障害者について新たに定義をおくものではない。
□回答(加藤勝信厚生労働大臣)
障害者基本法では包括的な権利とされているが障害者総合支援法においてはあービス給付法という性質を有していることから制度の対象となる方の範囲が客観的に明確になるよう障害者の定義を定めているところである。全ての国民が障害の有無に関わらず等しく尊重される共生社会の実現に向けて取り組んで行く。

■移動の連続性の確保
□回答(石井国土交通大臣)
マスタープラン制度や現行法に基づく基本構想制度において県境に関わらず市町村が共同して行えることとしている。

■空港アクセスバス・長距離バス:高瀬弘美(公明党)、伊藤孝恵(国民民主党・新緑風会)、川田龍平(立憲民主党・民友会)
伊藤議員 ― 8,000台近く走っている長距離バスのうち、リフト付きバスは東京近郊では4台のみ。これをどう克服していくか。
□回答(石井国土交通大臣)
貸切バスについて本法案でバリアフリー化の対象とする。高速乗合バスは助成措置等により特に利用者ニーズの高い空港と都心部を結ぶ直行路線において新型リフト付きバスの導入を推進している。

川田議員 ― リフト付きバスの導入を進める助成制度を増設すべき。
□回答(石井国土交通大臣)
車両購入費の補助や自動車重量税の軽減措置により支援を行っている。

■車いす用席の予約システム:伊藤孝恵(国民民主党・新緑風会)
□回答(石井国土交通大臣)
実務的な検討を進めており早急に結論を得る。

■新幹線・デッキ付き特急車両のフリースペース:高瀬弘美(公明党)、伊藤孝恵(国民民主党・新緑風会)、川田龍平(立憲民主党・民友会)
新幹線の車椅子席が足りず、デッキに出ている状況がある。また、スーツケースの置き場も足りていない。増やすべきでないか。
□回答(石井国土交通大臣)
新造車両における車椅子スペースの基準を一編成一箇所以上から一編成二箇所以上と改めた。車椅子使用者の利用が多い場合には更なる増設を行うようガイドラインにより促す。大型荷物の収納場所についても順次拡大を図るよう働きかけている。

■駅ホームの安全性向上と単独乗降可能な整備:伊藤孝恵(国民民主党・新緑風会)、川田龍平(立憲民主党・民友会)、山添拓(日本共産党)
実際に転落事故が起きた危ない駅から始めるのではなく乗降客数の多いところから優先的に整備するという方針で本当に良いのか。ホームと車両の間の隙間や段差解消が一向に進まないため車椅子の単独乗降が出来ない状況を把握しているのか。
□回答(石井国土交通大臣)
事故発生件数が多い利用者数10万人以上の駅に加えそれ以外の駅についても必要に応じて整備を行っている。2020年度に約800駅としている整備目標を出来る限りの前倒しを図っていく。ホームと車両の間の隙間や段差解消については今年度実態調査を行い単独乗降と安全確保を両立しうる方策について検討を進める。

■5年毎の見直し:伊藤孝恵(国民民主党・新緑風会)
□回答(石井国土交通大臣)
評価会議を適切に行うことで状況の変化に的確に対応する。

■評価会議について::高瀬弘美(公明党)、伊藤孝恵(国民民主党・新緑風会)、川田龍平(立憲民主党・民友会)

高瀬議員 ― 車椅子使用者にとっては歩道と車道の段差はない方が良いが視覚障害者にとっては段差があることで歩道と車道を区別出来るという点を例に、評価会議において多様な障害種別の参画、継続的な会議が必要ではないか。
□回答(石井国土交通大臣)
様々な障害特性に応じた意見を反映することが重要である。さらに継続的な評価が行えるよう定期的に会議を行うことが重要である点について基本方針に明記すると共に適切な対応を行うよう市町村を指導していく。

伊藤議員 ― 評価会議の構成員について多様な障害特性について配慮した上で、比率についても当事者を過半数とするのが望ましいのではないか。また、評価会議の基準やガイドラインについて具体的な改善提案が出来るのかどうか。
□回答(石井国土交通大臣)
具体的な構成員については法律の成立後に決定する。障害の種別等が多岐に渡るとの指摘を受けつつ様々な障害特性に応じた意見を適切に反映できるよう割合について適切に対応する。

【感想】
DPIがこれまで要望してきた「11の課題」の多くが取り上げられていただけでなく、遠回りのバリアフリールートやなかなか空いていない障害者用トイレ、コンサート会場の車椅子席の位置等、障害当事者でなければわからない日常の不便さまでもが取り上げられており、いかに私たち障害当事者の声が重要視されているかを実感した。バリアフリーに関心が高く、熱意のある議員が多かったことも嬉しく感じた。
しかしながら、取り上げられたものの、あと一歩及ばない案件も多く、施策を進めることの難しさを知った。今後も引き続き当事者としての声を発信し、一歩でも前に進められるように取り組んでいきたい。

(DPI日本会議バリアフリー部会 工藤登志子)

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