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アジア太平洋若手障害者国際セミナー参加報告

2018年09月27日 国際協力/海外活動

2018年9月4日~9月7日の4日間、韓国のソウルにて開催された「Asia-Pacific Youth with disabilities International Seminar(アジア太平洋若手障害者国際セミナー)」に参加してきました。
このセミナーはDPI-Koreaが主催し、韓国、日本、タイ、ネパール、パキスタン、インドネシア、フィリピンから各1~2名ずつ、障害者運動や障害者施策に関わっている20~30代の障害当事者がそれぞれの国を代表してソウルに集まりました。セミナーの主な目的は、「仁川戦略」についての知識を深め、障害者の国際開発戦略に関する進捗状況のモニタリングや進捗率を改善する方法を探るというものでした。

1日目は移動のみでしたが、仁川空港に到着するとボランティアの大学生たちが温かく出迎えてくれ、ホテルまで送迎してくれました。今回のセミナーは事前準備の段階から多くの学生ボランティアが活発に関わっており、日本の障害者団体が開催するセミナーやイベントよりもオープンな雰囲気でした。
学生ボランティアの多くは大学で社会福祉や医療関係、機械工学を学んでいる人たちで、ゼミを通して障害者団体と関わりを持ったのだそうです。また、このようなイベントでボランティア活動をしたり、介助の経験を積むと成績に反映されることもあり、日本に比べて一般の学生たちが障害者コミュニティの活動に参加しやすい環境だと感じました。

2日目は、午前中にPAI CHAI大学のJeong Jiwoong助教授による講義を受け、国連の障害者権利条約と仁川戦略の概要について学びました。午後はセミナーのオープニングセレモニーと各国の代表者によるプレゼンテーションが行われました。
プレゼンテーションのテーマは、「仁川戦略の目標1(障害者の貧困を無くして雇用を増やす)、目標2(政府の意思決定プロセスへの障害者の参画、障害者の政治参加)についてのそれぞれの国での進捗状況と課題」ということで、10分間の発表を行いました。
このプレゼンテーションの一部をご紹介すると、例えばパキスタンでは、車いす等の福祉機器が普及していないために多くの障害者が外に出られず社会参加出来ていないことや、タイでは精神障害者への偏見から雇用後に精神障害が発覚すると解雇されてしまうといった問題等を知ることが出来ました。また、多くの国が共通の課題を抱えており、障害者の権利が軽く捉えられていることや、支援が不十分であること、政策に活かすための政府のデータがない、または信頼性が低い、各国のデータのとり方が統一されていない、等の課題が挙げられていました。

Jeong Jiwoong助教授による講義の様子。

写真:Jeong Jiwoong助教授による講義の様子。

各国の参加者と韓国の障害者団体メンバー、政府機関の方等との集合写真。

写真:各国の参加者と韓国の障害者団体メンバー、政府機関の方等との集合写真。

 

写真:各国の代表者によるプレゼンテーションの様子。

3日目の午前中は、2日目のプレゼンテーションでの内容についてグループごとに意見を出し合い、課題解決に必要なことを話し合いました。それらをまとめて宣言文の草案を作成し、このセミナーの成果としました。宣言文の作成においては、インドネシア代表のAbi Marutama氏がイニシアチブを取り、一つ一つを読み上げながら内容や言い回しで修正が必要なところをそれぞれ指摘しました。

参加者の中からは、
「障害者を表す言葉は権利条約で使われている言葉に合わせた方が良いのでは?」
「自分の国はこういう状況があるから、こういう文章も入れて欲しい」
等の意見が出ていて、国際的な宣言文を作成する上で必要な視点やプロセスを学ぶ事が出来ました。

グループワークの様子。韓国の学識者や障害者団体のメンバーも参加していました。

写真:グループワークの様子。韓国の学識者や障害者団体のメンバーも参加していました。

▽宣言文(英語)はここからPDFデータでお読み頂けます。

▽宣言文(英語)のテキスト版はこちら

3日目の午後からは、ソウルにある発達障害者のための職業訓練センターへ訪問しました。この職業訓練センターは、ソウル教育庁と韓国障害者雇用公団によって運営され、ソウル市内の高校3年生(2学期~卒業までの時期)の生徒を対象としています。
プログラムへの参加は、まず教育庁が特別学校に在学している生徒の中から対象者を選定し、訓練生となると最大6ヶ月の職業訓練を受けながら学生に合った就職先を見つけます。定員は30~40名程度ですが、訓練生が就職する事で空きが出ると、その都度新たに募集がかかります。2016年の開校以降130名を超える生徒が入学し、就職率は9割を超えているそうです。

センター内の施設はバリアフリーになっており、セミナールームの他に実際の職場と同じ設備が整った職場体験室がありました。職場体験室の種類は図書館、カフェ、パン工場、一般事務、衣料品店、郵便局、病院(介護現場)、農作業、飲食店のキッチン等、様々用意されていました。
発達障害を持つ生徒が職業を選択する際、多くの生徒はカフェやパン屋といった「ありきたり」な選択肢しか知らないため、本当に自分に合った職業を見つけづらい特徴があるそうです。そのため、このセンターでは訓練生がより多くの選択肢を得られるように豊富な訓練メニューを用意しているとの事でした。
また職業訓練では、機械の使い方や作業工程等仕事上のスキルだけでなく、制服の着こなし、手の洗い方、清潔な髪型、言葉遣い等の日常的なマナーも訓練しているそうです。センターにある書籍は、発達障害のある人でも理解しやすいよう、通常の書籍の他にイラストや簡単な言葉で説明している「わかりやすい版」の書籍もあり、障害への配慮がされていました。

職業訓練室にあった「わかりやすい版」の本。

写真:職業訓練室にあった「わかりやすい版」の本。

カフェの訓練室。レジにあるタッチパネルは顧客側からも操作できるようになっており、顧客が自らオーダーすることで店員の負担を軽減している。このレジは実際のカフェでも導入されている。

写真:カフェの訓練室。レジにあるタッチパネルは顧客側からも操作できるようになっており、顧客が自らオーダーすることで店員の負担を軽減している。このレジは実際のカフェでも導入されている。

写真:病院(介護現場)の訓練室。韓国には入院患者の世話や身体介護を行う「看護人」という職業があり、発達障害のある人も看護人として活躍している。この訓練室ではベッドやトイレ、車いすを使った身体介護、食事介助等のスキルを学ぶ。

職業訓練センターのセンター長(2列目右から5番目)、スタッフ、参加者、DPI-Koreaの理事の方々との集合写真。

写真:職業訓練センターのセンター長(2列目右から5番目)、スタッフ、参加者、DPI-Koreaの理事の方々。

今回の研修を通して、障害者権利条約や仁川戦略についての知識を深めるだけでなく、日本の障害者政策の現状を見直すきっかけとなりました。また、アジア各国の障害者リーダーたちと交流し、連帯を深めることが出来ました。
障害者を取り巻く環境や課題はどの国にも共通しており、同じ経験を共有できるからこそ、国境を越えて手を取り合っていけるのではないかと感じました。今回のセミナーで出会った人々とのつながりを大切にし、これからも障害者の権利のために取り組んでいきたいと思います。貴重な機会をくださったDPI-Koreaに心より感謝申し上げます。

工藤登志子
(自立生活センターSTEPえどがわ/DPI日本会議バリアフリー部会)

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