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台湾の障害者権利条約実施法、国内審査の仕組み等について学習会を行いました

2017年10月24日 障害者権利条約の完全実施

10月21日(土)DPI常任委員会内の学習会として、長瀬修氏(立命館大学生存学研究センター衣笠総合研究機構教授)に「中華民国(台湾)の障害者権利条約審査」をテーマにお話しいただきました。

講師の長瀬さん

日本政府は2014年に障害者権利条約を批准し、2016年に国家報告を障害者権利委員会へ提出しました。障害者団体など市民団体は、国家報告に対するカウンターレポートとして、国内の実態報告などをまとめたパラレルレポートを提出することができます。DPI日本会議はJDF(日本障害者フォーラム)が進めているJDFパラレルレポート準備会に参加し、事務局の一部を担うと共に、DPI日本会議の内部でも学習プロジェクトチームを進めています(当DPIプロジェクトの活動紹介ページは近日公開予定です)。

長瀬さんは、台湾の独自国内審査委員会*(以下、委員会)の委員長を担われています。台湾で施行されている障害者権利条約実施法の現状、国際審査委員会の役割、10月末から11月初旬にかけて予定されている独自審査の内容等について特別にお話いただく機会を得ました。

*台湾は1971年国連を脱退した形になっており、中国(中華人民共和国)が台湾は自国の一部だと主張し、国連加盟申請を行っても拒否される状態が続いています。国連に加入していない台湾は、障害者権利条約を批准することができないので、国内で障害者権利条約の施行法を作り、独自の国内審査を行っています。

■台湾で施行されている障害者権利条約実施法、国内審査の委員
台湾政府は2014年8月に、障害者権利条約実施法を立法院(議会)で成立させました。批准から2年以内に報告するという障害者権利条約の規定に基づいて、2016年12月に台湾政府から国内の実施状況をまとめた中国語繁体字版の初回報告が提出され、翌年3月には英語版が委員会へ提出されました。審査を行う委員会は、台湾政府によって設置されており、委員会を構成する委員は台湾政府が依頼した長瀬さんを含む、専門家5名から成ります。

○委員会委員(敬称略)
1.長瀬修(委員長・日本)
2.アドルフ・ラツカ(スウェーデン)
3.ダイアン・キングストン(イギリス)
4.ダイアン・リッチラ―(カナダ)
5.マイケル・スタイン(アメリカ)

■市民団体(障害者団体など)が作成したパラレルレポート

今年4月に障害者団体などの市民団体からパラレルレポートが委員会へ提出され、それに基づいて、委員会は政府、市民団体への事前質問事項の作成を開始しました。
パラレルレポートを提出した障害者団体は、昔から活動を続けている団体や、様々な団体が結集し1つの団体としてまとまった所もありました(①障害者連盟・・・1990年設立、127の加盟組織から構成され、障害者の取り組みを進めている。②条約ウォッチ・・・人権擁護NGOが中心となって、色々な組織が加わる形でレポートをまとめた。先住民の人権擁護の協会、障害者の性的な権利に取り組む団体、性的マイノリティーのグループなど17の組織がこのレポートの為に集まっているなど)。

■委員会が作成した事前質問事項

実際に委員会が作成した事前質問事項(原文は英文、日本語はグーグル翻訳)のデータを頂きました。委員会からどのような質問がされたのか、よくわかりますので是非ご覧ください。

▽委員会からの事前質問事項(ワード)

事前質問事項作成では、誰がどの部分を担当するか分担をしました。障害者権利委員会の審査では委員の18名のうち、1名がその国の審査を担当しますが、台湾の審査は5名でそれぞれ担当するところを分けました。苦労した点としては、5人で分担しているので、5人それぞれの報告を、1つの報告にまとめるのに時間がかかったそうです。

■障害者団体を対象にワークショップを開催

今年6月にパラレルレポートを出している障害者団体を対象に、委員会が最終的な総括所見の形、こういう形で提案をまとめた方が良いなどワークショップを台湾政府支援のもと行いました。7月に委員会は事前質問事項の策定後に、総括所見草案の作成を開始し、9月には事前質問事項への回答が政府、市民団体から届きました。

■審査の最終プロセス:建設的対話、総括初見公表・最終調整

今月10月30日~11月3日には、建設的対話(何を困っているのか、何ができるのか、お互いにしっかりと対話を重ねて、合意形成をはかる)を台湾政府、市民団体と行い、委員会で作成した総括所見を公表します。ここまでが台湾で行う審査の大きな流れになります。

○障害者権利条約施行法成立から総括所見までの日程
・2014年8月 【台湾政府】障害者権利条約施行法成立
・2016年12月 【台湾政府】初回報告(中国語繁体字)
・2017年3月 【台湾政府】初回報告(英語)
・2017年4月 【市民団体(障害者団体等)】パラレルレポート提出、【委員会】事前質問事項作成開始
・2017年6月 【委員会】ワークショップ開催
・2017年7月 【委員会】事前質問事項策定・送付
・2017年9月 【政府・市民団体(障害者団体等)】事前質問事項への回答、【委員会】総括所見再検討
・2017年10月30日-11月3日 【委員会】建設的対話実施・総括所見公表。総括所見最終調整

受講風景

続いて独自審査のメリット、デメリットを教えて頂きました。

■メリット
○建設的対話の時間が3日間あり、市民団体、政府との対話を深められる。
○障害者権利委員会のように複数の審査を短い日程で行うのではなく、台湾の審査のみに集中できる。
○障害者権利委員会の審査はスイスのジュネーブで行われるが、台湾の台北での開催のため、ジュネーブへの渡航費が不要で、障害者を含む多くの市民団体の参加が可能である。
○最初の国家報告提出の後、審査までに3年以上待たされる障害者権利委員会とは異なり、提出後、1年以内に審査が行われる。
○障害者権利委員会は、審査待ちが多いため、2回目の審査は1回目の審査から8年後となる。台湾では2年目以降も4年という障害者権利条約で規定しているサイクルで審査できる可能性が高い。

■デメリット
〇障害者権利委員会の審査では、誰に審査を行ってもらうか審査を受ける政府は決めることはできないが、台湾の独自審査では台湾政府が専門家へ委嘱をしている。また審査事務局は衛星福利部(日本の厚労省)で、批判を浴びる省庁が事務局を務めていて、完全に中立というわけではない。
〇今回の委員のメンバーの内、障害者権利委員会の現役の委員はゼロで、経験者が1名(ダイアン・キングストン(イギリス))のみ。

今回、台湾審査に関する様々なお話だけではなく、障害者権利委員会による審査のお話などを聞くことができて、審査側の大変なご苦労がよくわかりました。また障害者権利条約を批准できないにもかかわらず、国内法を施行し、国内状況を審査し、台湾という国をよくして行こうという意識、取り組みに感銘を受けました。また障害者権利委員会はわずかな期間で複数の国の審査を行い、膨大な資料に目を通さないといけないため、私たち日本の市民団体がまとめるパラレルレポートは、日本国内の実態、それに対する提言など、できるだけ簡潔に、かつ、わかりやすくまとめる必要があると感じました。

10月30日-11月3日に台湾で行われる台湾審査(建設的対話実施・総括所見公表)は、DPI日本会議から平野みどり(議長)、崔栄繁(議長補佐)が傍聴に行きますので、また改めてご報告をします。お楽しみに。

最後に、台湾での審査を1週間後に控えて、大変お忙しいにも関わらず、こうした勉強会を快く引き受けて頂いた長瀬先生に心より感謝、御礼申し上げます。

(DPI日本会議 笠柳)

■おまけ:各部会の会議風景
DPIの常任委員会では、各部会の会議も行われます。今回は12月政策討論集会に向けた検討が中心でした。教育部会は来年2月、雇用労働部会は来年3月に院内集会開催を検討中です。こちらも詳細決まり次第、お知らせしますので、お楽しみに。

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