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12/2(日)DPI政策論「教育分科会」報告
障害者権利条約の審査~教育分野のパラレルレポートと国内法の課題

2018年12月25日 イベントインクルーシブ教育

12月2日(日)DPI障害者政策討論集会で開催しました「教育分科会報告」を、西尾元秀さん(障害者の自立と完全参加をめざす大阪連絡会議、DPI常任委員)に書いていただきましたので、ご紹介します!


全体の司会は特別常任委員の杉田宏さん。最初に司会から、現在の法制度の下で起こっている就学裁判の報告と、権利条約の審査後の学校教育法や障害者基本法等の改正を見すえるという観点から、パラレルレポートの理解を深めていく場としたいという、分科会主旨の説明がありました。

川崎市就学裁判について

報告者:大谷恭子(弁護士)
簡単に裁判の内容を説明すると、医療的ケア(人工呼吸器使用)が必要な児童とその保護者が、地域の小学校への就学を望んでいたが、川崎市教委がそれを認めず特別支援学校に就学させられた。このような就学先の決定はおかしいということで、裁判を起こしたというものです。

冒頭大谷さんから「障害者権利条約が批准され、パラレルレポートも出そうとするこの時期に、提訴せざるを得ない現実があることを訴えたい」とご発言がありました。
シンポジストのみなさま

障害者権利条約の批准を見すえ、2013年文科省はそれまでの障害程度を基準とした就学先決定の仕組みを改め、本人・保護者の意見聴取も行い、総合的な判断をすると変更しました。

また差別解消法が2016年から施行され「不当な差別的取扱いの禁止」と「合理的配慮の提供義務」(公立小学校)が定められています。

そのような状況で「保護者の意向に反して特別支援学校を就学強制できるか」がこの裁判のポイントとなります。

強制する場合、地域の小学校への入学を断る「正当な理由がある」ことが必要になりますが、「走り回る子がいるから危ないなどの抽象的な想定」も「支援学校の方が専門性がある」も正当な理由になり得ない。

また合理的配慮の提供のためには、まず「提供が考慮される」必要がありますが、今回は基本的に門前払いであり、そのような検討はなされなかったということです。

興味深かったのが、保護者と市教委の話し合いが平行線となった時(入学直前の2月頃)、県教委がその間に入る形での話し合いがもたれたということ。就学先について市教委が本人・保護者と合意形成ができなかった場合、県教委に「指導・助言の一環」として協力を依頼することが考えられる、と文科省の資料にありますが、実際に行われている例は初めて知りました。

他の地域でも同様のことが起こっているのかもしれません。

最後に大谷さんから「障害者制度改革推進会議に出ていた時にも、総合的判断だけでは、親の選択権と専門家の意見が横並びで出された場合、今回のようなことが起こりえると発信していたが、現実に起きてしまった。

だからこれは絶対に負けられない課題。是非とも応援して頂きたい」と話されました。

教育分野のパラレルレポート

シンポジストのみなさま
後半は「教育分野のパラレルレポート」について、パネルディスカッション形式で進めました。コーディネーターは常任委員の山崎恵さん。

「パラレルレポートの日教組取りまとめについて」

報告者:佐伯 安彦(日本教職員組合中央執行委員、教育文化局インクルーシブ教育部長、障害児教育部長)

まず最初は日教組の佐伯安彦さんから。教師は法律の専門家ではないが現場で感じた思いを「日本政府報告へのコメント~意見とその理由」という形式で、法改正が必要なものをあげながら発表して頂きました。

現在行われている特別支援教育はインクルーシブ教育とは違うものであること。

今も学校教育法72条及び81条1項には「障害による学習上又は生活上の困難を克服し自立を図るための必要な知識技能を授けることを目的とする」という、医学モデルの内容が残っており、これが学習指導要領を経て授業内容等様々に影響を及ぼしており、削除すべきということ。

就学の仕組みは変わったものの、周知は不十分なままで、早期からの健康診断等で幼児期から分けることが進められていること。また高校について、入試における合理的配慮に不十分性があり、入学後の単位認定等についても同様であることなど、多岐に渡るご意見を頂きました。

「障害児を普通学校へ・全国連絡会からのパラレルレポート案」

報告者:片岡 次雄(全国連パラレルレポート作成委員会)

続いて「障害児を普通学級へ・全国連絡会」の片岡次雄さんから、公教育学会と共に提出を予定している、パラレルレポートについてお話し頂きました。

まず内容に入る前に、子どもの権利条約では2010年の審査の際に、ある車いすの子が言葉は分からないままに、委員にチラシを渡すなどの積極的なアピールをしたこと。

それが功を奏したのか、障害のある子に関する勧告が以前の時より大幅に増えたこと。

また反対する勢力も、多く傍聴行動等を行っていることなどをあげ「私たちの多くが関心をもち、それぞれができる働きかけを行うことが必要」と述べられました。

パラレルレポートについては教育分野に特化したもので、「義務教育で普通学級への入学が拒否されている」「合理的配慮が提供されず親の付き添いを強制している実態がある」など、現在6項目にまで絞られてきていること、日教組の意見や川崎市の裁判のことも踏まえ、最終的な文章化を急いでいることをご報告頂きました。

「インクルーシブ教育の実現に必要な法改正」

報告者:崔 栄繁(DPI議長補佐)

最後にDPIの崔栄繁さんから。まず障害をもつ児童生徒の置かれている状況が、権利条約に則してどうかということを、多くの障害者団体と共有することが重要であるということが述べられました。

そして具体の法改正としては、障害者基本法(16条教育含む)にある「可能な限り」という文言の削除、また基本法もしくは差別解消法で、権利条約に基づいた形での「差別の定義」を入れること、さらに現在の文科省の対応指針に「合理的配慮は、・・・その能力を最大限度まで発達させるための教育が受けられるため・・・」と、条約の本意を曲げた記述があり、それを早期に変えさせる必要についてなどが話されました。

会場も交えて議論を深めていく充分な時間は取れませんでしたが、現在のインクルーシブ教育の置かれている状況と、厳しい中でも「どうやって進めてくのか」を、全体で考え、行動するきっかけとなる分科会であったと思います。

報告:西尾 元秀(障害者の自立と完全参加をめざす大阪連絡会議)

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