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1月24日(金)「みんなで楽しもう!映画上映文化祭」報告

2020年02月14日 イベント障害者文化芸術

映画祭チラシ

1月24日(金)、東京都新宿区の牛込区民箪笥ホールで「みんなで楽しもう!映画上映文化祭」を開催しました。こちらは2018年度よりDPIが公益財団法人キリン福祉財団助成事業として取り組んでいる「インクルーシブまるごと実現プロジェクト」の一環で、2018年度に引き続きバリアフリー映画上映を行いました。

今回2019年度の本事業スローガンは「『他人に迷惑をかけるな』を問い直します」としました。

イベントの概要―こんなことをやりました―

文化祭はDPIが2019年9月から11月にかけて行ったアンケートの報告がまず下林常任委員からされました。回答件数17件という少なさが、多くの障害者が文化芸術活動、この場合は映画館での作品鑑賞から距離を置いているということの表れかもしれないとのことでした。

アンケートの報告をする下林常任委員

写真:アンケートの報告をする下林常任委員

 

回答件数こそ少ないものの、一つひとつの声は非常に重要かつ切実な内容で、これらの意見をしっかりと今後の運動に取り入れていかなければならないと感じました。

自立生活センターSTEPえどがわの「街のバリアフリーを地味に守るヒーロー」ダンサナクセイバ―たちによる新作のショーでは、映画館などにおける合理的配慮の重要性やイベントの趣旨を、バリバリアンをやっつけるパフォーマンスで痛快に伝えてくれました。

ダンサナクセイバー VS バリバリアンの決闘!!

写真:ダンサナクセイバー VS バリバリアンの決闘!!

午前の部では「猫の恩返し」をバリアフリー上映しました。午後にはこの作品の監督である森田宏幸さん、音声ガイドを務めた佐々木亜希子さん、NPO法人バリアフリー映画研究会理事長の大河内直之さんによるスペシャル鼎談「スペシャル鼎談『みんなで楽しむバリアフリー映画の魅力を語る』~猫の恩返しバリアフリー版制作の現場をご紹介しながら~」を開催しました。

午後の後半には重度知的障害者の地域自立生活のドキュメンタリー映画「道草」の上映を行いました。

会場では脳性まひの当事者であるDPI文化芸術担当である下林常任委員の力作絵画3点の展示と「みてみて!うちのこじまん」(障害当事者らの家族であるペットの写真)紹介など、盛りだくさんの内容でした。

「自分の作品でもう一度遊ぶことができて楽しかった」

これは、鼎談で明かされた「猫の恩返しバリアフリー版」の制作現場での森田監督の言葉です。この発言が大河内さんから紹介されたとき、私は思わず目がしらが熱くなりました。自分の作品をバリアフリー化することに抵抗のある映画監督も少なくない中、森田監督は制作直後に「自分の作品でもう一度遊ぶことができて楽しかった」とおっしゃったそうです。

鼎談に登壇くださったお三方。笑顔あふれるトークセッションでした。

写真:鼎談に登壇くださったお三方。笑顔あふれるトークセッションでした。

制作者やクリエイターの皆さんがこのような意識を持つこと、つまり「バリアフリー化は『いいこと』だから行いましょう」ではなく「もっとたくさんの人に作品を楽しんでもらうために行うバリアフリー化の作業は楽しいから、もっと積極的に行いたい」という、今までにない(少なくとも今のところ「マジョリティ」の常識ではない)考え方を生む、それ自体が創造性に溢れていることなんだなと感じました。

作品がバリアフリー化されて観る人が増えれば、それが作品に更なる魅力を与えることなのだ、という気づきがありました。

「猫の恩返しバリアフリー版」は、監督や音声ガイドさんらとの緊密なコミュニケーションと試行錯誤を重ねて、終電近くまでほとんど休憩も入れずに制作に取り組んだそうです。

中にはテイク10近く撮りなおしたセリフもあるなど、映画のバリアフリー化にはたくさんの工夫とこだわり、そして情熱が込められているのだなと感じました。

「猫の恩返し」は長編アニメーション作品では初のバリアフリー作品とのことで、森田監督や佐々木さんが「今観ると、もっとこうしたいな、ああできるな、と思う部分がたくさんある」と言っていたことも印象的でした。

それだけ、音声ガイドの進歩はめざましいものがあります。だからこそ、「猫の恩返し」は「長編アニメーション初のバリアフリー作品である」というもう一つの価値、魅力を持っているのだろうと私は思います。

佐々木亜希子さんの音声ガイドは主人公・ハルの気持ちや映画の世界観にとても丁寧に寄り添った、素晴らしいものです。その佐々木さんが「バリアフリー版の制作から10年経ちますが、このときの経験を多くの場面で活かすことができていて、本当に感謝しています」と「感謝」というキーワードを何度も用いていたのを聞いて、「ああ、感謝の気持ちでつながれることって素敵だな」と感じました。

鼎談では「ぶっちゃけ話」のような「あの文化祭だから聞けたアレコレ」も聞けて、思わずニコニコしてしまいました。登壇されたお三方皆さんの言葉の一つひとつに率直かつ誠実な熱量があり、そのパワーにとても励まされている自分がいました。

今回のイベントでは、「楽しいことならなんでもありのごちゃまぜの楽しさ」を特長としました。映画鑑賞中に動き回ってもいい、トイレに行くのも自由、好きな場所を選んで観られる、大声で笑ったり泣いたりは大歓迎!といった場にしました。

DPI日本会議にとって初めての試みということもあり、改善すべきところはたくさんあるのですが、参加してくれた方から「参加できてよかったです」といった嬉しいフィードバックもいただいたので、改めて開催してよかったと、イベントにご参加くださった皆さま、協力くださった皆さまに深く感謝の意を伝えたいです。

「創造性」がカギかもしれない

DPIが文化芸術活動をはじめる契機となったのが、2018年6月に「障害者による文化芸術活動の推進に関する法律」の誕生でした。この法律の意義を、私たち障害当事者も、もっと深く受け止めるべきです。文化芸術活動に障害者が能動的に携わる機会が増えることは、インクルーシブ社会実現への大きな一歩に繋がるからです。

もちろん、人々の意識というのは法律や理屈だけでは語れません。「法律にこう書いてあるからこうしなさい」とか「偉い人の論文にはこう書いてあったから推奨します」だけでは、社会は豊かな方向には変わりません。

その間隙を縫うように人間の創造性が社会に沁みわたる、その一助となるような活動を私たちはこれからも続けていきたいのです。なぜなら、人は生きていることそのものが創造性にあふれているからです。

どんな生も尊いのは、いつか必ず誰しもの人生が終わってしまうからという理由だけではなく、「今、ここに生きている」一人ひとりに限りない創造性があり、それを相互に大いに発揮できるのが、豊かな社会、インクルーシブ社会だと考えています。

改めて、文化祭に参加くださった皆さん、ご協力くださった皆さんに感謝します。これからもっとDPIで文化芸術分野の活動が活発になるよう、メンバー一同創造性を発揮していきたいと思います。ありがとうございました。

(事務局員 鷺原由佳)

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